“春のえくぼ”のような華やかさで魅了するカクテル
46デイジー
今回は春にふさわしい味わいのカクテル「ウイスキー・デイジー」と「チェリー・ブロッサム」の2品を紹介したい。春のえくぼのような、やわらかい笑顔が似合うカクテルである。
【46デイジー】
Forty-six Daisy
メーカーズマーク46 45ml
レモンジュース 20ml
グレナデンシロップ 2tsps.
クラッシュドアイスを詰めたジュレップカップに材料を入れ、よく冷えるまでステアする。レモンあるいはオレンジのスライス、ミントの葉を飾り、ストローを添える。少量のソーダ水を加える処方もある。
デイジーとはヒナギク(雛菊)。露地植えのヒナギクの開花期は3月から5月くらいまでだから、試してみるのにふさわしいシーズンである。
文献上、カクテル「デイジー」の最初の登場は1866年とされ、『Fast Men and Grass Widows』(ヘンリー・L・ウィリアムス著)という小説の作中らしいのだが、具体的な文章は不明である。また、おそらくブランデーベースだったのではなかろうか。
ブランデー・デイジー
古典的カクテルであるが、21世紀のいま飲んでも華やかで好感がもてる味わいだ。ファンになるひとは多いと思う。
「ウイスキー・デイジー」はライウイスキーやバーボンウイスキーをベースにすることが多い。シェークやステア、ビルド(グラスに直接つくる処方)といろんなつくり方があるようだ。
ベースとしてわたしが好むのは「メーカーズマーク」。そしてシェークするというものだ。だが、今回ご紹介するのは「メーカーズマーク46」(『メーカーズマーク46のプレミアム感を満喫しよう』記事参照)をベースにステア。とても軽快なタッチの味わいになる。フルーティーさのなかに「46」の香味が心地よくそよぐ。ストローでミントの葉をカップの中に押し込んだりしながら味わいの変化を楽しむのもいい。春の笑顔のような味わいといえよう。
バーでのオーダーの仕方だが、「ウイスキー・デイジーをメーカーズマーク46のビルドでお願いします」とお伝えいただきたい。
尚、「ブランデー・デイジー」のシェークも美味しい。わたしはコニャック「クルボアジェV.S.O.P」をベースに指定する。これもフルーティーで多少のコクがあり、暖かな春の陽だまりのようなニュアンスがある。
もうひとつ余計なことだが、「ジン・デイジー」はおすすめしない。
チェリー・ブロッサム
Cherry Blossom
ヒーリングチェリー 1/2
クルボアジェV.S.O.P 1/2
オレンジキュラソー 2dashes
グレナデンシロップ 2dashes
レモンジュース 2dashes
シェークして、グラスに注ぐ。
Cherry Blossomの日本語訳は桜の花。たしかに桜の花ではあるが、西洋実桜(セイヨウミザクラ)、つまり桜桃、さくらんぼの実がなる樹に咲く花のことである。西洋実桜の花の色は白だけのようで、ソメイヨシノに遅れて咲く。
このカクテルの歴史は古く、19世紀末のフランスで出版されたカクテルブックに掲載されているから西洋実桜のイメージで創作されたものであろう。とはいえ、日本ではソメイヨシノの開花時期になると飲まれる、代表的な季節ものカクテルのひとつといえよう。
「シンガポール・スリング」同様に、「チェリー・ブロッサム」もまたデンマークで1818年に誕生した歴史ある「ヒーリング チェリーリキュール」が使われることが多い。
カクテルの色調は濃紅色で、味わいとしてチェリーリキュールの甘さが強いのではなかろうか、との印象がある。ところが甘みはさほど気にならない。すっきりとした口当たりで爽やかな感覚が口中に広がっていく。華やぎのある味わいで、口に含むと春らしさを感じさせる。お腹が満たされた後の一杯、アフターディナー・カクテル(食後酒)としてふさわしい。
リキュールの濃厚さを、フルーティーでエレガントな味わいのコニャックがしなやかに包み込んで和らげている。またその他の少量の副材料、オレンジキュラソー、グレナデンシロップ、レモンジュースは優しい口当たりを生む役割を果たしている。
春の華やぎを感じさせる素敵な味わいのカクテルである。(カクテル撮影/児玉晴希)
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