世界遺産/アジアの世界遺産

アジア西部の世界遺産(2ページ目)

乾燥した大地からなる西アジア、ステップが広がる中央アジア、緑豊かな南アジアからなるアジア西部。メソポタミア、インダスという大文明をもたらし、世界三大宗教を生んだこの地域の世界遺産を紹介しよう。

長谷川 大

執筆者:長谷川 大

世界遺産ガイド

ペルセポリス

謁見の間アパダナの列柱。各国の王はここでアケメネス朝の王に謁見し、特産品を献上した 牧哲雄

謁見の間アパダナの列柱。各国の王はここでアケメネス朝の王に謁見し、特産品を献上した ©牧哲雄

 
イラン、1979年、文化遺産(i)(iii)(vi)
紀元前6世紀、キュロス2世はメソポタミアを統一してアケメネス朝ペルシアを建て、「諸王の王」を名乗る。ダレイオス1世の時代に全盛を極め、アナトリアを治めてギリシアにまで攻め込んでいく。そのダレイオス1世が建築をはじめ、続くアルタクセルクセス1世が完成させたのがペルセポリスだ。各国の王が特産品を持って集まり、アケメネス朝の大王に謁見する様子がレリーフに描かれている。紀元前331年、マケドニアのアレクサンドロスが破壊して廃墟となった。

紹介記事はこちら>>ペルセポリス/イラン

 

イスファハンのイマーム広場

黄色いドーム、ミナレットのないデザインが独特なシェイク・ロトフォラー・モスク。世界一美しいモスクのひとつといわれる 牧哲雄

黄色いドーム、ミナレットのないデザインが独特なシェイク・ロトフォラー・モスク。世界一美しいモスクのひとつといわれる ©牧哲雄

イラン、1979年、文化遺産(i)(v)(vi)
17世紀、サファーヴィー朝のアッバース1世によって首都に定められたオアシス都市イスファハン。『コーラン』に描かれた天国を再現し、水の少ない砂漠にあって噴水や水路をふんだんに使ってその繁栄を示した。人々はイマーム広場を「世界の半分」と評し、「イランの真珠」とたたえた。南には青いドームのイマーム・モスク、西には王の宮殿アリ・カプ、東には王続専用のシェイク・ロトフォラー・モスクがあり、北には大バザール(市場)が広がっている。

紹介記事はこちら>>イスファハンのイマーム広場/イラン

 

エローラ石窟群

世界最大の彫刻といわれるカイラーサナータ寺院。聖山カイラス(カイラーサ)に住む世界の王(ナータ)=シヴァを祀っている 牧哲雄

世界最大の彫刻といわれるカイラーサナータ寺院。聖山カイラス(カイラーサ)に住む世界の王(ナータ)=シヴァを祀っている ©牧哲雄

インド、1983年、文化遺産(i)(iii)(vi)
創造神ヴィシュヴァカルマが造ったという伝説が残るエローラ石窟群。34ある石窟は、第1~12窟が仏教、第13~29窟がヒンドゥー教、第30~34窟がジャイナ教の窟院で、無数の仏像や神像、レリーフが彫り込まれている。ハイライトは、ヒンドゥー教の最高神シヴァを祀った第16窟、カイラーサナータ寺院。高さ32m、底面85m×50mのこの巨大な石造寺院、実は石を積み上げて建てられたものではなくて、岩山を100年以上かけて掘り抜いて造られている。

紹介記事はこちら>>エローラ石窟群/インド

 

アジャンター石窟群

アジャンター石窟群、第26窟

アジャンター石窟群、第26窟。中央は仏像を伴うストゥーパ。神々の胎内にいるような不思議な空間だ

デカン高原の溶岩台地を切り裂く緑美しいワゴーラ渓谷。その断崖には紀元前2~後7世紀にかけて掘り抜かれた30の石窟が口を開けており、その内部はおびただしい数の仏像やストゥーパ・彫刻・壁画で彩られている。蓮華手菩薩や金剛手菩薩をはじめインド仏教美術の最高峰といわれるそれらの作品は、シルクロードを通って中国・朝鮮半島・日本に伝えられ、東アジアの仏教文化に大きな影響を与えた。アジャンターは美しいだけでなく、仏教が開花して衰退するまでの歴史を刻み込んでおり、日本の寺院の原型といえる姿をいまに伝えている。

紹介記事はこちら>>アジャンター石窟群/インド

 

デリーのフマユーン廟

フマユーン廟

赤砂岩と白大理石による紅白のコントラストが美しいフマユーン廟

インド、1993年、文化遺産(ii)(iv)
タージマハルは王が亡き妻に贈った愛の墓廟。これに対して、王妃が亡き夫のために築いた墓廟がフマユーン廟だ。ムガル帝国第2代皇帝フマユーンの急死後、王妃ハージ・ベグムは夫のためにペルシア美術とインド美術の粋を集めて墓廟を建設し、周囲に「エデンの園」を象った水と緑あふれる庭園を配置した。その後ムガル帝国はインド全土を支配し、イスラム教とムガル美術はインド全土に浸透。約100年後にフマユーン廟をモデルとしてタージマハルが完成する。

紹介記事はこちら>>デリーのフマユーン廟/インド

 

タージマハル

ヤムナ川から見たタージ・マハル。シャー・ジャハーンは川のこちら側に自分の廟を建てて橋でつなぎ、復活の日に橋の上で妻と再会を果たそうと願っていた

ヤムナ川から見たタージ・マハル。シャー・ジャハーンは川のこちら側に自分の廟を建てて橋でつなぎ、復活の日に橋の上で妻と再会を果たそうと願っていた

インド、1983年、文化遺産(i)
ムガル帝国第5代皇帝シャー・ジャハーンが、亡き妻のために約20年の歳月と2万人の労働力を投入し、1653年に完成させた廟。シンメトリーを駆使した白大理石の外観、象嵌で水晶、めのう、サンゴ、コハク、ダイヤモンドといった宝石をはめ込んだ内観、共にとてつもなく美しい。シャー・ジャハーンは晩年、三男アウラングゼーブによってアグラ城(世界遺産)に幽閉されるが、小さく見えるタージマハルを眺め、妻を思いながら息を引き取ったという。

紹介記事はこちら>>タージマハル/インド

 
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