「アーリーマジョリティ」から「レイトマジョリティ」へと熱が伝わった最大の要因とは?
今回の『劇場版「鬼滅の刃」無間列車編』の記録的なヒットは、「レイトマジョリティ」へのアプローチにも成功した結果といえるでしょう。その一番の要因は多大なるメディアへの露出です。『劇場版「鬼滅の刃」無間列車編』は、わずか10日間で異例の興行収入100億円を突破すると、テレビを始め、インターネット、新聞、雑誌、SNSなどありとあらゆるメディアでその偉業が取り上げられ、恐らくほぼ全員の消費者が何らかの形で『鬼滅の刃』の情報に触れることになります。加えて数多くの芸能人や著名人が『鬼滅の刃』のコスプレを行いSNSで拡散していくことも『鬼滅の刃』に対する興味を飛躍的に高めることに一役買っているといっても決して過言ではないでしょう。
この『鬼滅の刃』の偉業は、これまでのアニメ化やコミックスの売り上げなどのベースに加え、新型コロナウイルス感染症の拡大で大型作品の上映がなく、空前絶後の上映スクリーン数を実現できたこと、コロナの影響で外出する機会も少なくなり自粛が緩和されたタイミングで上映できたこと、またテレビアニメの終了(テレビアニメの最終話は劇場版への期待を持たせる形で終了しています)や週刊少年ジャンプの連載終了で多くの“鬼滅の刃ロス”を感じるファンを取り込めたことなど、さまざまな特殊要因も重なって達成できたことだと思います。
ただ、多くのメディアに露出することによって噂が噂を呼び、『鬼滅の刃』熱は「アーリーマジョリティ」から「レイトマジョリティ」に確実に伝わってさらに熱を帯びてきたといえるでしょう。
作品のヒットを後押しするかのように『鬼滅の刃』関連商品が続々と登場している(image:Ned Snowman / Shutterstock.com)
『劇場版「鬼滅の刃」無間列車編』が歴代1位を獲得し、記録をさらに伸ばす鍵となるのは?
『鬼滅の刃』の特徴として、戦闘シーンは子どもたちが遊びで真似をして夢中になる要素もありますし、主人公の炭治郎の家族愛や敵の鬼が人喰い鬼になるまでの悲しいストーリーなど20代以上の男女の共感を得る要素もあります。また、大正時代の世界観は、いわば時代劇ともいえ、高齢者がお孫さんとの会話のきっかけとして見やすい環境も整っています。このように幅広い層にアプローチできる作品だからこそ、ここまでのヒットを記録したということもできます。
今後、興行収入歴代1位を達成し、どこまで記録を伸ばすかは、「イノベーター」や「アーリーアダプター」などのコアなファンのリピート回数を増やし、「アーリーマジョリティ」や「レイトマジョリティ」に的確にアプローチして映画館に足を運んでもらうかにかかっています。もし、『鬼滅の刃』が今後ロングセラーを記録し、日本の伝統的、文化的な作品と認められれば、遂には「ラガード」をも動かして、とてつもない記録を打ち立てることができるといえるのではないでしょうか。