『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』の快進撃が止まりません。映画は2020年10月16日に公開されると、わずか10日後には興行収入が100億円を突破。これまで宮崎駿監督の『千と千尋の神隠し』が持つ25日という興行収入100億円最速突破記録を19年振りに更新しました。

その後も勢いが衰えず、公開から45日後の11月30日には興行収入が275億円を超え、歴代2位の『タイタニック』を抜き去って、第1位の「千と千尋の神隠し」の308億円をも射程距離圏内に捉えています。

『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』は、なぜここまで爆発的なヒットを記録したのでしょうか? マーケティング戦略における「イノベーター理論」の視点から、経営コンサルティング企業の代表を務める安部徹也が分析していきます。
『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』は47都道府県すべての映画館で公開され、都内では1日の上映回数が全国最多の845回(35館)となった(image:image_vulture / Shutterstock.com)

『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』は47都道府県すべての映画館で公開され、都内では1日の上映回数が全国最多の845回(35館)となった(image:image_vulture / Shutterstock.com)

 

新製品の爆発的なヒットの鍵を握る「イノベーター理論」とは?

イノベーター理論とは、アメリカのスタンフォード大学で教鞭をとったエベレット・M・ロジャース教授が提唱した新製品の普及の過程を体系的に整理した理論です。

ロジャース教授によれば、新製品が市場に投入されるとまずは「イノベーター(革新者)」と呼ばれる最先端技術など新しいものに非常に高い関心を示す層が消費を始めます。消費者のおよそ2.5%がこの「イノベーター」層に該当します。

続いて消費を始めるのが「アーリーアダプター(初期採用者)」と呼ばれる層です。「アーリーアダプター」は消費者の13.5%を占め、「イノベーター」ほどではありませんが、新しい商品に対する情報感度の高い消費者層です。実際の消費の場面ではテレビなどのメディアやSNSなどを活用した“オピニオンリーダー”や“インフルエンサー”として、消費の拡大に多大な貢献を果たす消費者層ともいえるでしょう。

それから商品が徐々に流行してくると消費を始める消費者層が「アーリーマジョリティ(前期追随者)」と呼ばれるグループになります。特徴としては、これまでになかった新たな商品に対しては購入に比較的慎重な態度を示しますが、「流行に乗り遅れたくない」という気持ちから平均よりも早く消費を始めます。この「アーリーマジョリティ」は消費者全体の34%を占めるために、このグループにまで新製品が浸透してくると爆発的なヒットの兆しが見られるようになります。

次に消費を始めるのが「レイトマジョリティ(後期追随者)」と呼ばれる層です。この「レイトマジョリティ」の特徴は、新製品に対して懐疑的であり、時間をかけて新製品の評判などを慎重に吟味し、大多数の高評価を確認したうえで自分に必要とあらばようやく購入に踏み切ります。「レイトマジョリティ」は消費者層の34%を占めますが、大多数の消費者につられて消費を始めるために「フォロワーズ」とも呼ばれています。

そして最も遅く消費を始めるのが「ラガード(遅滞者)」と呼ばれる層です。この「ラガード」は最も保守的な消費者層であり、新製品が伝統的、文化的になるまで購入に至らないとされています。中には最後まで新製品を受け入れない頑固な消費者も存在します。この「ラガード」は消費者全体の16%を占めています。

画期的な新製品を爆発的なヒットに導くためには、これら5つの特徴ある消費者層に対して順番に効果的なアプローチを行わなければならないということになります。

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