ウイスキーを裸で一杯
ショットかニートか
ドラムと同じように使われ、我々に馴染みのある言葉はショット(shot/詳細は『ウイスキー用語3/ショット[入門篇]』)。これはアメリカで“一杯の刺激の強い酒”といった意味合いで用いられるようになった。おそらく19世紀のどこかで使われはじめたと思われる。ショットの表現は1930年代にイギリスにも伝わったようだ。
イギリスには古くからニート(neat)という言葉がある。16世紀頃から酒をそのまま飲む場合に使われていた。ラテン語のニテーレ(輝く)が語源で、そこから“濁りのない”“サッパリとした”といった意味に捉えられた。まだ酒に洗練がなく、荒々しい酒質だった時代である。
最初はウイスキーではなかったようだ。とくに輸入されたワインにニートは使われたらしい。薬草や甘味といったさまざまなものをミックスして飲みやすくしていた。その頃に、何も加えないで飲むときに、ニートという言葉が使われた。
現在は、ウイスキーに氷や水などを足すことなく生(き)のまま飲むことをストレート(straight)と言うが、ニートも同じような意味である。ストレートも19世紀のアメリカで使われはじめたといわれている(詳細は『ウイスキー用語4/ストレート[入門篇]』)。現在ではショットもニートも、ストレートで括ってしまえるだろう。でも、なんだか気分的に違うような。
ショットは強いのをガツン、と。ニートは生の味わいをじっくり、といったニュアンスにわたしは捉えている。ライやバーボンのアメリカンウイスキーとスコッチウイスキーの違いともいえる。
さて、スコットランドにはニートと同じ意味合いで使われる別の表現があることをご存知だろうか。ネイキッド(naked)である。本来は“裸の”“ありのままの”“飾らない”といった意味の言葉だ。
スコットランド人は得意気に言う。「スコットランドの男たちが愛するものがふたつある。ウイスキーのネイキッド、そして女性の……….」と言って、ニヤリと笑う。
日本の酒場で「ウイスキー、ネイキッドで」といっても伝わらないだろうが、ストレートで味わいながらの話のネタにはなる。
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