4月16日、5大ウイスキー・ブレンデッド「碧Ao」新発売
ワールドウイスキー碧Ao
予告記事のタイトルで示した通り、ウイスキーの歴史上初、自社保有の5大ウイスキーをブレンドしたものである。しかしながら言葉では単純に括ってしまえるのだが、事は簡単ではない。まず原料が一様ではない。蒸溜法もすべて同じではない。
一般的によく知られ、飲まれているモルトウイスキーとグレーンウイスキーのブレンデッドをつくり上げるのとは感覚的に異なるのである。
福與(ふくよ)伸二サントリーチーフブレンダーのトライ&エラーは我々の想像を絶するものであっただろう。
素人目にも、美味しいものを生もうとする意欲があったとしても、簡単に香味イメージを抱けるものではないだろう、と推察できる。それぞれの個性をどう生かせるのか。ひとつにどうまとめるのか。異なる酒質がどう反応し合うのか。足して、足して、引いて、また引いて。その配合からベストの香味を導き出していくしかない。
ブレンド構成原酒がベールを脱いだ
福與伸二チーフブレンダー
スコッチ●アードモア蒸溜所・グレンギリー蒸溜所
アードモア/軽快、爽やかスモーキーさを抱いた東ハイランドのモルト原酒
グレンギリー/はちみつ、ヘザーの感覚がそよぎ、ほのかなスパイシーさがあるノンピーテッドモルト
この2蒸溜所のモルト原酒は、「碧Ao」にスモーキーさ、スパイシーさを薫らされるだけでなく、香味全体に厚みを湛える(たたえる)役割を担う。
アイリッシュ●クーリー蒸溜所
ピーテッドモルトウイスキー「カネマラ」で知られるクーリー蒸溜所だが、「Ao」にはノンピーテッドモルトを使用。軽やかですっきりとした印象の原酒で、配合比としては少量ながらクーリーモルトが香味全体に複雑味を与える。
福與チーフは「ブレンドの妙味。クーリーを抜くと、香り立ちが弱く、コクや複雑味も出てこない。これは予想外でした」とおっしゃっている。
アメリカン●ジムビーム蒸溜所
人気の高い「ジムビーム」の原酒。バーボンウイスキー特有の華やかな香り、バニラ様の甘みを醸し出す。とくに香りの広がりにおいて大いに貢献している。
カナディアン●アルバータ蒸溜所
北米において高品質なライウイスキー生産で名高いアルバータ蒸溜所のベースウイスキーを使用。カナディアンブレンデッドウイスキーはライ麦を主原料にしたフレーバリングウイスキーと、トウモロコシを主原料としたベースウイスキーをブレンドする。「碧Ao」ではアルバータの軽快なタッチのベースウイスキーがグレーンウイスキーの役割を担い、全体のしなやかな柔らかさ、そして飲み口のよさに付与している。
ジャパニーズ●山崎蒸溜所・白州蒸溜所
山崎/重厚で華やかな味わいの長熟シェリー樽熟成原酒を使用
白州/森の蒸溜所らしい爽やかなスモーキーモルトを使用
サントリーのブレンデッドウイスキーの香味が語っているが、エステリーで華やか、淡麗ながら複雑といった特長は「碧Ao」においても大きな役割を担い、両モルトがブレンドされることで香味全体を巧く、しっとりとまとめる。他の原酒だけではバラツキ感のある香味を優しく抱きとめているのではなかろうか。
全体的な旨味という面でも、山崎、白州は不可欠な存在のはず。
酒齢だが、最も若い原酒が4年熟成。長熟は18年熟成ものらしい。細かな原酒の酒齢については明かされていない。
さて、次ページでは気になる後熟について、そしてテイスティングノートをお伝えしよう。(次ページへつづく)