セクハラの基準は? 誰か一人でもセクハラと感じうる行為はしないこと

行為者にセクハラの認識はなくても、受け手の感じ方を否定することはできない

行為者にセクハラの認識はなくても、受け手が感じていることを否定することはできない

職場のセクハラ問題の判断においては、セクハラを受けた人がどう感じているのかが重視されます。もちろん、セクハラの認定には事実関係の確認と調査が必要になりますが、そのような大きな問題になる前に、他人に誤解を与えるような行為をしないことがまずは重要です。

行為者にセクハラの認識はなくても、受け手がそれをセクハラだと感じている場合、その人がそう感じていることをそもそも否定することはできません。職場が相談を受けた場合、受け手の感情と意見を真摯に取り扱い、対応することが求められるのです。

とはいえ、人の気持ちや感覚は十人十色です。「どこからがセクハラと言われるのか」という疑問は、誰しも持つものだと思います。しかし、まずは一人でもセクハラに感じる人がいる可能性のある行為は最初から行わない、ということを頭に入れおく必要があります。

「対価型セクハラ」と「環境型セクハラ」の違い

男女雇用機会均等法に関連するセクハラ指針によると、職場のセクハラには「対価型」と「環境型」という2種類があります。

■対価型セクハラ
対価型セクハラとは、相手の嫌がるセクハラ行為をして拒否・抵抗されたことの対価として、相手に不利益な解雇・労働契約の更新拒否などを与えることです。たとえば、非正規職員として採用された人が人事権を持つ上司に交際を迫られ、それを断った後に上司の態度が冷たくなり、翌年度の労働契約を更新してもらえなかった、というような場合には対価型セクハラになります。

■環境型セクハラ
環境型セクハラとは、セクハラの言動を受けて就業環境が不快なものになり、働く上で看過できないほどの支障が生じるような行為です。たとえば、体を眺め回されたり触られたりするので、不快で出社することができない。いやらしい話題がいつも飛び交い、仕事に集中できない。こういった場合は環境型セクハラになります。

無意識的にセクハラ行為を行ってしまう人の3つの心理

では、人はなぜこうしたセクハラ行為を行ってしまうのでしょう。行為者の心理を紐解くと、主に次の3つに分けられることが多いと感じます。

1.セクハラの知識不足である

そもそも「今の時代、どのような言動がセクハラになりえるのか」という知識を十分に持っていないと、何気なくセクハラを行ってしまうことがあります。まずは、「セクハラと言われかねない行為の範囲は広い」という認識を持っておくことが重要です。

たとえば、お笑い芸人がテレビでよく言っている下ネタの話題を職場で話す。これは完全にNGです。「昔は冗談としてみんなが笑ってくれた」という理由は通用しません。あるいは、「デブ・ブス」「イケメン・ブサメン」「おばさん」「おねえちゃん」というように見た目や年齢でその人物の魅力を判定するような発言をしたりすることも、広義ではセクハラに入ります。

さらに、そもそも男女雇用機会均等法では職場における男女差別が禁止されていますし、セクハラ指針には、セクハラの防止効果を高めるためには「性別役割分担意識」による言動をなくしていくことが重要であることが記述されています。

すなわち、「そんなことでは嫁のもらい手もない」「女性なのに華がない」「女の腐ったような奴だ」といった発言を、職場では言ってはいけないということです。こうした知識がないと、うっかりセクハラにつながる行為をしてしまうことがあります。

2. 無意識的に自分の優位性を悪用してしまう

セクハラは行為者の優位性を悪用することのできる行為であるため、「パワハラ」であるとも捉えられます。たとえば、職場の中に上司の性的な冗談に合わせて笑わなければならない雰囲気がある場合、上司という立場の優位性を悪用していることになります。

あるいは、行為者が体を眺め回すような視線を向けたり、ボディタッチをしたりすると、受け手には「いつ襲われるかわからない」という恐怖を与えてしまいます。また、「権威のある人だから強く拒否できない」という思いから、受け手がセクハラ的な誘いに応じてしまった場合、行為者の中には「自分はモテている」といった根拠のない自信を増幅させる人もいます。これらの行為も優位性の悪用になりえます。

3. 恋愛感情や関心を抑えられない

人を好きになってしまうと、自分の思いをわかってもらいたい、なんとか相手と近づきたいという恋愛感情から、デートや二人きりでの話し合いなどのアプローチをしつこく繰り返してしまう場合があります。あるいは、魅力的な人を見ると関心を抑えられず、飲み会の席などでセクシャルなアプローチをしてしまう人もいます。

このように、恋愛感情や関心を抑えられずに、人の迷惑を顧みずにしつこくアプローチを繰り返すことも、セクハラにあたります。

職場は公的な場所。性的な含みを感じる行為をしてはいけない

セクハラ行為者の心理とは

その行為に性的な含みがあるかどうか、常に客観的な視点で自らの言動を振り返ることが必要

行為者の多くは、意図的にセクハラをしているわけではありません。上のように、無意識的な心の動きでセクハラを行ってしまうケースが多いのです。

では、どのようにしてセクハラをしないように気をつければいいのでしょう。先ほど、セクハラ行為者にならないためには「一人でもセクハラだと感じる人がいる可能性のある行為は、最初から行わないこと」が重要である、とお伝えしました。しかし、この認識だけでは、具体的に何に気をつけたらいいのか分からない方が多いかもしれません。

そこで、私はよく「学校の教師が生徒に接する際の態度」を参考にすることをお勧めしています。たとえば、教師の次のような行為を見た時に、教師に対してどのような思いを抱くでしょうか?

・ある一部の異性の生徒にだけ、やたらと親しく話しかけている
・あいさつ代わりに、やたらと生徒の体に触る
・「あの子スタイルいいよね」「ブサイクだよね」などと、生徒の見た目を批評している
・「付き合っている人はいる?」「好きなタイプは?」などと、やたらと生徒の異性関係について質問する
・「そんなことじゃ、嫁のもらい手もないよ」「女の腐ったような奴だ」などと生徒に言う

教師のこのような行為を見ると、職業的立場としてふさわしくない性的な含みの感じる行為、性差別的な行為だと受け止め、不快に感じる方は多いのではないでしょうか。職場という公的な場所でも、同様に感じる人は多いものと思います。

職場ではすべての人の人権が尊重される必要があり、また、身の安全が脅かされるような環境、職務を妨害するような環境であってはなりません

繰り返しますが、セクハラは無意識のうちに行われてしまうことの多い行為です。したがって、自分のふるまいに対しては常に客観的な視線を向け、セクハラ行為者とみなされることのないように注意を払って行動する必要があります。
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