「男は女はこうあるべき」―この発想が新たなセクハラを生む

働く男女

さまざまな指向や個性を持つ人が存在するのが「職場」

2016年に改正された男女雇用機会均等法により、セクハラ指針も改正され、2017年1月1日から施行されました。この指針によると、「被害を受ける者の性的指向や性自認にかかわらず、これらの者に対する職場におけるセクシャルハラスメント」も、職場のセクハラの対象になると明記されています。つまり、「LGBT」(レズビアン、ゲイ、バイセクシャル、トランスジェンダー)と呼ばれる性的少数者に対するセクハラ的言動も、男女雇用機会均等法の規制の対象となることが法律的にも明確に示されたのです。

前回の2013年には、同指針の改正によりセクハラの防止には「性別役割分担意識に基づく言動」をなくすことが重要であることも明記されました。2016年改正も、この考え方の流れにあるものと考えてよいでしょう。つまり、「働く男はこうあるべき、働く女はこうあるべき」という意識をなくし、そうした言動で職場環境を悪化させてはいけない、ということです。

LGBTは13人に1人―不用な発言で身近な人を傷つけているかも

では、LGBTの人々に対するセクハラには、どんな言動があるのでしょう? たとえば、「ホモ」「レズ」「おかま」「両刀使い」「ニューハーフ」などの差別的発言は、もちろんセクハラになります。また「男のくせに女みたいなしぐさをするな」「女性なのに男みたいな格好をするのはおかしい」といった発言をすることも、セクハラです。

本人の性的指向や性自認(ジェンダー・アイデンティティ)は、仕事の支障になるものではありません。それなのに上記のような発言を受け、侮辱されることなどあってはならないことなのです。上のような発言は、既にセクハラ指針で規制されている「性別の役割分担意識」に基づくものであり、職場にこの意識を持ち込むことによって、働きにくさや被差別感を感じている人がいることを覚えておかなくてはなりません。

電通ダイバーシティ・ラボの調査(2015年)によると、LGBTは13人に1人存在します。カミングアウトの有無にかかわらず、LGBTの方は身近に存在していることを認識しておく必要があります。

また、テレビのバラエティ番組では、自分自身のセクシャリティを包みなく発言するLGBTの芸能人がたくさん出演していますが、それを見て「LGBTとはこういうもの」と捉えるのは危険なことです。LGBTの方の中には、幼い頃から自分の個性に対する周りの反応に苦しみ、差別的言動に傷ついている人がたくさんいます。自分の個性を知られることへの不安を抱え、他人との必要以上のかかわりを恐れている方も少なくありません。

セクハラのない職場環境が「ダイバーシティ」を推進する

職場でのコミュニケーション

「ダイバーシティ」の進む組織ではコミュニケーションも進み、新しい発想が生まれる

人間は一人ひとり多様な特性を持ち、その特性に基づいた多様な発想や能力を持っています。そうした多様な特性を持つ人材を組織の活動に活かしていくことを「ダイバーシティ」(多様性)と呼び、グローバル社会に対応する日本の労働環境では、このダイバーシティを推進していくことが急務とされています。性別、年齢、人種、障がい、ライフスタイル、そしてさまざまな性的指向やジェンダーアイデンティティを持つ方の特性も、組織のダイバーシティ化を推進するための重要な要素です。職場に各人の特性を認め合う土壌があれば、コミュニケーションが活発になり、組織の戦略に役立つ新しい発想が生まれます。

男女差別やLGBTに対する偏見が強く、「働く男はこうあるべき、働く女はこうあるべき」という固定観念を強要する職場からは、新しい発想は生まれません。無意識に選択している性役割に関する発想が自他の可能性を否定し、仕事の幅を狭めているかもしれません。また、組織の躍進の足かせになっているかもしれません。

まずは一人ひとりが性別による役割分担意識の有無を振り返り、LGBTの方を含むすべての方への偏見とセクハラ的言動を防止することによって、新しい社会に適応できる発想力を養っていくことが大切です。
※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。