「#MeToo」などで広がるセクハラ被害告発

セクハラは人権侵害!加害者にならないための基礎知識

セクハラは誰に対して行ってもダメ。相手の人権を侵害する行為

官僚トップによる女性記者へのセクハラ問題、ハリウッドの大物プロデューサーによる複数女優へのセクハラ行為、有名ブロガーが告白した元大手広告代理店有名広告ディレクターからのセクハラ発言……。ここ最近になって、権威ある立場にある人物による「セクシャルハラスメント」の報道が過熱しています。

この背景には、セクハラ被害の体験を持つ人がTwitterをはじめとするSNSに書き込むキーワード「#MeToo」を通じて、被害を告発する世界的な人権尊重運動の影響があるようです。

セクハラの定義とは……「社外の人」「オフィスの外」も該当

そもそもセクハラの定義とは何でしょうか? セクシャルハラスメントとは、性的な関心や欲求にもとづく言動によって、他人に不快感を感じさせる「性的な嫌がらせ」を意味します。また、男女雇用機会均等法(以下、均等法)第11条では下記の通り、事業主に職場におけるセクハラ対策の措置義務を定めています。

均等法 第11条
事業主は、職場において行われる性的な言動に対するその雇用する労働者の対応により当該労働者がその労働条件につき不利益を受け、又は当該性的な言動により当該労働者の就業環境が害されることのないよう、当該労働者からの相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備その他の雇用管理上必要な措置を講じなければならない。

この条文を見る限り、均等法ではセクシャルハラスメント対策の対象者、つまり被害者は「雇用される労働者」を意味します。では、社外の人にならセクハラをしてもいいのでしょうか? また、この条文には「職場」がどの範囲まで含まれるのかが明記されていません。オフィス外、たとえば飲食店などの場所ならよいのでしょうか?

なかには「取引先の営業担当者や取材者だから、いやらしいことを言ったりやったりしてもセーフ」「飲食店は『職場』ではないから、セーフ」という認識を持っている方もいるのかもしれません。しかし、この認識は重大な間違いのもとです。

取引先の人や取材者の多くは、それぞれの所属先の職場に雇用されている労働者(正規、非正規、派遣職員含む)です。また、職務の一環としてあるいは仕事の延長線として行った場所であれば、その場所が飲食店であっても「職場」に含まれます。したがって、「社外の人が相手だから」「お酒の席はプライベートの場だから」という甘い認識で、うっかりいやらしいことを言ったりやったりしないようにする注意が必要です。

セクハラは法的責任を問われる人権侵害行為

では相手が「労働者」でなければ、セクハラ行為をしてもセーフなのでしょうか? もちろん、そのはずはありません。そもそもセクハラは、法的責任を問われる可能性の高い人権侵害行為です。

セクハラ行為によって他人の人権を傷つければ、日本国憲法11条で定められる基本的人権13条で定められる個人の尊厳の侵害になります。

暴力的・脅迫的に、あるいは相手が抵抗できない状態で胸などに触ったり、キスをしたりすれば、強制わいせつ罪・準強制わいせつ罪に問われます。強制的に性行為に及べば、強姦罪に問われます。公然と相手の名誉を傷つけ、侮辱するようなことを言ったりやったりすれば、名誉棄損罪や侮辱罪に問われます。拒まれているのに何度もつきまとったり、メールやSNSに大量の送信をしたりすれば、ストーカー規制法の対象にもなります。

したがって、誰に対してでも、相手が不快感を覚えるような性的な意味合いを含んだ言動は行わないということは原則です。もちろん、男性から女性に対してだけでなく、女性から男性に対してや、同性間でも行わないのが原則です。

セクハラの原因となる「性別役割分担意識」をなくす必要性

「男女はこうあるべき」という意識がセクハラを生む温床となる

「男女はこうあるべき」という意識がセクハラを生む温床となる

しかし、性的な意味合いなどまったく考えもせずに行った言動でも、受け手がその言動に性的な含みを感じ、セクハラだと感じてしまう場合もあります。セクハラの感じ方には個人差があり、また男女間でも感じ方や受け止め方は微妙に異なるからです。

では、行為者にその意図はなくても、受け手によってはセクハラだと受け止める可能性の高い言動にはどのようなものがあるのでしょう。それを判断する目安として「性別役割分担意識」というキーワードがあります。性別役割分担意識とは、男女の性別によって役割を規定しようとする固定観念のことです。均等法に基づくセクハラ指針では、この性別役割分担意識がセクハラの発生の原因や背景になりうることを労働者に周知・啓発することが明記されています。

たとえば、「女なんだから、多少は色っぽい服装をして仕事をとってこなきゃ」などと個人の性的魅力を仕事に活かすように強要したり、「あの課長はオバサンだから、新人の男を下につけておけば仕事がうまく運ぶだろう」などと性別で人を規定して人格を無視した発言をしたり、「男なんだから、女の尻に敷かれるような仕事はするな」「女が男勝りに働いていると、あっという間に適齢期を過ぎちゃうよ」などと、「男女はこうあるべき」という固定観念にとらわれた発言をすることが該当するでしょう。

上のような発言をした本人は、その言葉がセクハラにあたるとは想像すらしていないかもしれません。あるいは、相手にとってよかれと思って言った言葉ですらあるかもしれません。こうした性別役割分担意識の多くは、長年繰り返し見聞きしてきた周囲の言動や環境の影響、メディアを通じてインプットされた情報が固定観念としてしみついているものだからです。

しかし、多様な価値観を持つ人が働く仕事の場では、性別役割分担意識に基づく発言をセクハラや差別として受け止める人がたくさんいます。特に、国際化やダイバーシティー(多様性)が進む現代においては、こうした固定観念を持ち続けると他者と交流し協働する際の障害となり、うっかり言った一言によって一瞬で信用を失ってしまうリスクがあります。

したがって、ふとした瞬間に「男女はこうあるべき」という発想がよく浮かぶ人は、「自分は性別役割分担意識が強くないだろうか?」「うっかり性別役割分担意識に基づく発言をしていないだろうか?」と自問自答していくことが、自分自身がセクハラ加害者にならないためにも、またセクハラ被害を生まないためにも、非常に重要なことなのです。
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