蒸溜と樽種によるつくり分け
ワイン樽
まず知多蒸溜所ではトウモロコシを主原料にして、現在主に以下のタイプのグレーンウイスキーを生み出している。
クリーンタイプ原酒●ピュアでクリーン、ほのかな甘さ
ミディアムタイプ原酒●マイルドな口当たり、穀物由来の旨味
ヘビータイプ●穀物様の香り立ちが強く、味わい豊か
さらには貯蔵熟成においてホワイトオーク樽だけでなく貯蔵樽も多彩で、新たな香味が生まれている。
スパニッシュオーク樽熟成グレーン●甘くフルーティー、濃厚で複雑
ワイン樽熟成グレーン●イチゴのような甘い香り、なめらかな口当たり
グレーンウイスキーの貯蔵樽に関しては、ブレンデッドウイスキーにおいてモルトウイスキーの脇役として強い個性を抱かせないように、これまで貯蔵樽はあまり重要視されていなかったといえる。モルトウイスキー熟成に何度か使用された古樽をグレーンウイスキーにまわすというのが一般的であった。革新であり、グレーンウイスキーも進化し、さらに深化しようとしている。
これによりブレンデッドウイスキーの世界に新たな香味を創出することにつながるであろうし、さまざまな香味個性を持つシングルグレーンの登場にもつながる。ウイスキーの世界が広がる可能性を示している。
福與チーフは「ボルドーをはじめとしたフレンチオークの赤ワイン樽だけではなく、白ワインの樽ではどうか、とか。まだまだ試すことはたくさんあります」とおっしゃっている。
白州連続蒸溜によって進化、深化するウイスキーの世界
白州連続式蒸溜機
白州蒸溜所内にある連続式蒸溜機は2塔。しかしながらさまざまな穀物原料での蒸溜ができ、トウモロコシだけでなくライ麦、大麦、小麦、はたまた米などの組み合わせも可能だ。たとえばライ麦、トウモロコシ、大麦麦芽を原料に仕込み、連続式蒸溜機で蒸溜する。それをバーボンバレルの新樽に詰めて熟成させ、ライ麦のスパイシーな風味が生きたグレーンを生みだす、といった試みも成されている。
一見、バーボンウイスキーの原料と同じように思えるが、穀類原料の使用比率や蒸溜で抽出するアルコール度数も違うため、バーボンの味わいとは異なるものが生まれる。ライタイプグレーンである。たとえ内側をカリカリに焼き焦がしたバーボン樽で熟成させてもバーボンにはならない。
福與チーフブレンダー
「まだまだこれから。やらなければいけないことがたくさんあります。やがてブレンデッドウイスキーに貢献し、新たな香味が生まれたり、シングルグレーンの香味世界が広がるよう、挑戦していきます」
こう語ってくれた福與チーフだが、とても革新的な局面に立つブレンダーといえる。これまで述べたことはサントリーウイスキーづくりの継承のなかで生まれたものではあるが、実際に進化のまっただ中で陣頭指揮する立場だ。おそらくいまは試験的なつくり込みの断片を語るしかできないだろうが、2年後、3年後に再びじっくりと成果をうかがってみたい。
ウイスキーの歴史に新たなページが加わろうとしている。
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