ゆる糖質制限って何?ダイエット効果が高いって本当?
糖質はダイエットの敵と思い込んでいませんか?
一方で、「続けられずに断念した」、「最初は痩せたけれどあとでリバウンドしてしまった」という声も見受けられ、正しい実行方法や健康への影響についての情報が少ないという声も聞きます。
健康的に痩せられて危険性が少ない、専門家として推奨し得る範囲の正しい糖質制限ダイエットはできるのでしょうか? 一緒に考えていきましょう。
<目次>
糖質制限で体重が落ちるメカニズム
短期間で体重が減った、という意見があるのも事実。その理由は……?
糖質制限をすると、まだ研究段階ではありますが、おおまかに言うと体の中では下記のようなことが起こり、痩せると言われています。
(1)食事からの糖質摂取がストップする
(2)血糖値が上がらなくなり、糖質が不足した状態になる
(3)体の中に溜まっている皮下脂肪やその他の成分を引き出して使う
(4)結果として体脂肪が減り、体重が落ちる
ですから、ストイックな糖質制限ダイエットをすれば、確かに3日ほどでストンと体重が落ちることも珍しくはないでしょう。
意外と知らない!? 糖質制限の種類と違い
ガイドは推奨しませんが、世の中には、糖質制限を活用したダイエットにも、さまざまな種類があるようです。炭水化物抜きダイエット……ご飯やパンといった炭水化物をすべて抜く方法。
アトキンス・ダイエット……1日に摂取する糖質量を20g以内にまで抑える方法。ケトン体ダイエットと言われることもある。
ロカボダイエット……1日に摂取する糖質量を70~130g以内に抑える方法。糖質を完全に抜くのではなく、下限を決めているのが特徴。
バーンスタイン・ダイエット……1日に摂取する糖質量を130g以内に抑える方法。
※すべて編集部調べ
つまり摂ってもいい糖質の分量によってさまざまな名前がついているということがわかります。では、一体どれがオススメなのかと言われると、栄養学の観点では安全性の確保がされていないため、どれも推奨はできません。ダイエットとしては一時的には体重が落ちると考えられますが、長期的におこなうことはオススメできません。
ただ、短期で目に見えるダイエット効果を求める人にとって、魅力的に映るのもわかりますし、ダイエットのモチベーションを高める手段として、短期集中で取り入れるのは一つの手かもしれません。
ストイックな糖質制限は、リバウンドを招く最大の原因!
一時的に体重は減っても、リバウンドしてしまう理由は?
人体の構造を考えれば、ストイックな糖質制限ダイエットが続かないのは当たり前のことです。なぜなら食事からの糖質が得られなくなったとき、体のなかではこんなことが起こっています。
(1)糖質が体内に入って来なくなる
(2)脳が危険を感じる
(3)「このままでは生命維持ができない」と脳が判断する
(4)脳からの指令で、生命維持のためにエネルギーや糖質摂取が積極的になる
(5)食欲が増す
私たちの「脳」にとって唯一の栄養は、糖質(ブドウ糖)です。脳は勉強や仕事をするときだけでなく、臓器を動かすよう指令を出す生命維持の司令塔としての役割も担っています。その結果、食欲を我慢しきれなくなり、体も積極的に体脂肪を増やそうとするので、リバウンドをしてしまうと考えられます。
ゆる糖質制限ダイエットを成功させる方法
ご飯がNGなわけではない!
(1) 1週間~10日までは、一般的な「糖質制限ダイエット」を実行
前述の「糖質制限ダイエットの種類」で紹介したダイエット方法のなかから、あなたが挑戦してみたいものを実行してください。私からは、特にオススメはありませんので、試してみたい方法で良いと思います。3日ほどで体重が落ちると思いますが、長く続けてもそのペースで体重が減り続けることはありません。あとでリバウンドしないためにも、最大10日間行ったら、次の段階へ移ってください。
(2)1日の糖質200g程度の「ゆる糖質制限ダイエット」を実行
この段階になったら、1日に摂る糖質量は200g(※)が目安です。長期で実践する場合は、あなたに最適な糖質量を計算してください。
たとえば、身長160cm/体重55キロ/35歳/女性/事務職のA子さんが、1カ月で1キロ体重を落とすために糖質制限ダイエットをすると想定した場合、「最適な糖質量」は1日231gの糖質を摂れる計算になりました。
※あくまで目安の数値で、年齢や体重、性別、筋肉量、活動量などによって上下します。
糖質制限ダイエット中の間違いがちなポイント
1日におにぎり6個も食べてOK!?
食材それぞれによって含まれる糖質量は異なりますが、糖質量=食べ物の重さではないことを覚えておいてください。白米のご飯で考えると、糖質200g=ご飯600g(コンビニおにぎりが105gなので、6個弱)に相当します。
ただし、「そんなにたくさん食べていいの?」と思った人は、ちょっと気をつけてください。糖質は、おかずや調味料、野菜、果物にもたくさん含まれています。例えば、きんぴらゴボウ(小鉢1杯)で12g、里芋の煮物(小鉢1杯)には24g、肉じゃが(小鉢1杯)には40gの糖質が含まれているんです。この3つで糖質70g!
そうなると白米は和食に多い“甘辛い味付け”は、特に糖質が多めです。
糖質制限ダイエットというと、まずご飯を減らそうとする人が多いのではないでしょうか。でも、ご飯をやめて他のもので代用している人ほど、「食べてないけど痩せられない」と訴える人が多い傾向にあると感じます。
ご飯は少量でも満腹感を感じられる優秀な栄養源。ダイエットには実は有効な食べ物なんです。1膳~半分程度は毎食きちんと食べるのを基本にしてみてください。おかずをたくさん食べたいときや、どうしてもビールを飲みたいときは少しご飯の量を減らすなど、調整していきましょう。
1日あたりに必要な糖質を計算し、「今食べたご飯の糖質が60gだから、あと食べていいのは何g」と計算するのがベストですが、「大変なのでゆるく実践したい」という人は、下記の食材リストを参考に食材選びをしてみましょう。
◆食べていいもの
・ご飯(1食あたりの量を守る)
……白米ご飯の糖質36.8g/100gあたり、玄米ご飯の糖質24g/100gあたり
・大豆や大豆製品
……絹ごし豆腐1.7g/100gあたり(3分の1丁)
・糖質ゼロのドリンク類、お茶類
(アルコールで糖質0なのは焼酎、泡盛0g/1杯58~75mlあたり)
・葉物野菜(たっぷり食べてOK)
・こんにゃく
・アボカド、オリーブ
・アーモンド、くるみ等のナッツ類(くり以外)
・きのこ、海藻類(たっぷり食べてOK)
・魚介、肉(どれも0.1~0.3g/100gあたり)
・卵、乳製品類
・塩、こしょう、しょう油、酢、みそ(白みそ以外)
◆控えめにしたいもの
・パン
……6枚切り食パン26.7g/1枚60gあたり
・麺
……中華麺64.3g/生めん120gあたり、うどん66.7g/生めん120gあたり
・コーンフレーク類
・糖質が多く含まれる芋類や野菜、フルーツ、ドライフルーツ
……じゃがいも16.3g、さつまいも29.2g、さといも10.8g、かぼちゃ7.1g/すべて100gあたり
・ビール、ワイン、シャンパン(超辛口以外)などのアルコール
……ビール15.6g/1杯500mぁたり、ワイン1.7g/1杯110mlあたり、白ワイン2.2g/1杯110mlあたり、シャンパン0.2g/1杯80mlあたり、日本酒8.8g/1合80gあたり、カシスソーダ21.3g/1杯230mlあたり、梅酒60g/1杯60mlあたり
・とろみ付けの片栗粉、揚げ衣、小麦粉
・カレーやシチューのルー(8.2g/1皿分1片あたり)
・甘じょっぱい調味料
……ケチャップの糖質4.6g、ウスターソースの糖質4.7g、砂糖8.9g、白みそ3g、みりん7.8g/すべて大さじ1あたり
◆とくに避けたいもの
・お菓子
・砂糖が入ったドリンク類
◆ざっくりまとめると……
・ご飯、パン、めん類は1食100gくらいの小盛りに抑え、肉・魚・卵・大豆食品と、野菜をたっぷり摂りましょう。
・ただし、かぼちゃやいも類、くりなど糖質が多い食材を使ったおかずは控えめにしましょう。
・ケチャップ、ソース、砂糖、白みそ、みりんなどの甘じょっぱい調味料、フライや天ぷらの衣にも糖質が含まれるので控えめにしましょう。
・糖質の多いお酒は、梅酒、カシスソーダ、サングリアなどの甘いお酒。糖質0のお酒は、焼酎、泡盛などの蒸留酒。辛口のワインやシャンパンは糖質少なめです。ただし、お酒はカロリー以外何の栄養素もない、「エンプティカロリー食品」のため控えることを推奨します。
糖質制限ダイエットを続けるための「最適な糖質量」の算出方法
事務職の30代女性の例から、最適な糖質量を算出してみましょう
◆計算式1: 自分の「基礎代謝」を求める
基礎代謝(kcal) = 体重(kg)×年齢・性別基礎代謝基準値
▼「年齢・性別基礎代謝基準値」には、下記の数字を入れてください。
18~29歳 女性 22.1 男性 24.0
30~49歳 女性 21.7 男性 22.3
50~69歳 女性 20.7 男性 21.5
70歳以上 女性 20.7 男性 21.5
例)A子さんの場合:身長160cm/体重55キロ/35歳/事務職
【基礎代謝】55(kg)×21.7=1194(kcal)
◆計算式2: 基礎代謝に運動量を加味した「1日の総消費カロリー」を算出
1日の総消費カロリー(kcal) = 基礎代謝(kcal)×身体活動レベル値
▼身体活動レベル値には、下記の数字を入れてください。
(1)運動量が少ない人
18~69歳 1.5
70歳以上 1.45
(2)平均的な運動量の人
18~69歳 1.75
70歳以上 1.70
(3)運動量が多い人
18~69歳 2.0
70歳以上 1.95
例:A子さんの場合
1194(kcal)×1.75=2089(kcal) ※小数点以下切り捨て
◆計算式3: 1カ月で減らしたい体重から、「痩せたい分の総カロリー」を算出
厚労省「健康づくりのための運動指針2013」によると、体脂肪1kgにつき、約7000kcal分のカロリーが必要とされているので、7000kcal ×痩せたい体重・脂肪(kcal)で計算できます。
痩せたい分の総カロリー(kcal) = 7000(kcal)×△(kg)
例:A子さんの場合
7000(kcal)×1(kg)=7000(kcal)
◆計算式4: 3を日割りして、1日あたりの減らすカロリーを算出
1日あたりの減らすカロリー(kcal) = 痩せたい分の総カロリー(kcal)÷30(日)
例:A子さんの場合
7000(kcal)÷30(日)=約240(kcal)
◆計算式5: 1日あたりの摂取可能カロリーを算出
計算式2の「活動量の総カロリー」から、4の「1日あたりの減らすカロリー」を引くと計算できます。ただし、この計算結果が、基礎代謝(計算式1の数字)を下回ると、健康を害す可能性が高くなります。その場合は、必ず1カ月で落としたい体重を見直して計算し直しましょう。
活動量の総カロリー(kcal)-1日あたり減らす必要があるカロリー(kcal)=1日あたりの摂取可能カロリー(kcal)
例:A子さんの場合
2089(kcal)-240(kcal)=1849(kcal)
↓
A子さんの基礎代謝1194(kcal)よりも高いので、1か月に1kgは健康的に痩せることができます。1日に1849kcalを上限に食事を摂りましょう。では、次の項目で、そのうちの糖質量はどれくらいか、計算してみましょう。
◆計算式6: 5の50%にあたる「1日あたりの適性糖質カロリー」を算出
管理栄養士の視点では、1日あたり50~65%は炭水化物からカロリーを摂るべきと定められています。今回は、糖質制限ダイエットなので、下限の「50%」=×0.50 を掛けます。
1日あたりの摂取可能カロリー(kcal)×0.50=1日あたりの適性糖質カロリー
例:A子さんの場合
1849(kcal)×0.5=924.5(kcal) ※小数点以下切り捨て
◆計算式7: 6の「1日あたりの適性糖質カロリー」から、「1日あたりの適性糖質量」を算出
糖質1(g)は、4(kcal)なので、計算式6のカロリー数を4で割ると計算できます。
1日あたりの適性糖質カロリー(kcal)÷4(kcal)=1日あたりの適性糖質量(g)
例:A子さんの場合
924(kcal)÷4(kcal)=231(g) ※小数点以下切り捨て
A子さんは、1日231gの糖質を摂ることができます。コンビニおにぎり1個が糖質105gなので、1日に2.2個食べられる計算になります。
◆計算式8: 7を目安に、バランスのよい食事を楽しみましょう
上記の糖質量を目安に、ゆるめの糖質制限ダイエットを目標達成の1か月間続けてみましょう。
体重が減らない場合、摂取する糖質量の計算が間違っていたり、標準的な筋肉量を下回っていたり、便秘やむくみなど脂肪以外のものが溜まっていたりすることが考えられます。体温を上げるバランスのとれた食生活と、1日30分以上の有酸素運動を取り入れて、根気よく続けてみましょう。
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