「骨盤底筋群」を簡単に鍛えられるトレーニング法
骨盤底筋を自宅で簡単に鍛えられるって本当?
<目次>
「骨盤底筋群」とは、そもそも何? ゆるむとどうなる?
骨盤底筋とは、身体の深部に位置するインナーマッスルです。骨盤のなかで内臓を支えているいくつかの筋肉のことで、「骨盤底筋群」と呼ぶこともあります。骨盤底筋の機能の低下は、身体にさまざまな影響を及ぼします。例えば、「尿漏れ」と「膣のゆるみ」、「便秘」などです。
どれも加齢や出産後に多い症状だといわれていますが、最近は、出産経験のない若い女性にも増えていて、30代の女性の約半数が「尿漏れしたことがある」という調査もあります。これはのちほどくわしく、ご説明しますね。また、骨盤底筋を鍛えると、胃下垂によるポッコリおなかや、子宮や直腸が膣から脱出してくる性器脱や子宮脱、膣脱などの「骨盤臓器脱」と呼ばれる疾患などの予防にもなるので、鍛えて損のない筋肉です。また、女性特有のトレーニングと思われがちですが、男性にも効果的です。男性と女性では解剖学的な違いがあるため、男性は女性よりも骨盤底筋が弱くなりにくい傾向がありますが、男性も加齢とともに筋力が弱まることで、様々な症状が出ます。年齢・性別に関係なく取り組みたいエクササイズです。
姿勢が重要!日常姿勢でマスターできる簡単骨盤底筋トレーニング
「インナーマッスル」は姿勢を整える事、呼吸に関わります。骨盤低筋周辺のインナーマッスルを姿勢で整えることにより、効果的に、骨盤底筋に働きかけることができます。
姿勢を整える時にお腹の筋肉(腹横筋)背骨周辺の筋肉(多裂筋)が使われます。(右図参照)
骨盤が正しいポジションにきて骨盤底筋へのアプローチしやすい状態となります。
まずは、骨盤底筋を鍛えるための準備。立つ・座る・寝るの3つの日常姿勢を整える方法をご紹介します。
骨盤底筋を強化するための姿勢レッスン「立つ・座る・寝る」を日常姿勢で鍛える
日常で簡単にできる立つ・座る・寝るの3つの姿勢エクササイズをご紹介します。■立って簡単! 立った姿勢で行う腹横筋トレーニング
壁に手を添えて両足を揃えて正しい姿勢で立ちます。息を吸って吐きながらつま先立ちになり10秒キープ。
この時、ヒップの筋肉を内側に引き寄せるように意識して行います。ゆっくりとかかとを下ろします。これを10回行います。更にできる人は、かかとを床ギリギリまでおろしすぐにアップさせます。こちらの方がより強度が高いので慣れてきたらこちらを行いましょう。
■座ったまま! 座り姿勢で行う内転筋トレーニング
骨盤を立てて座ります。モモの内側にタオルやクッションをはさみ10秒キープします。この時、肛門・膣・尿道をしめることを意識し行いましょう。普段は意識しない筋肉ですが、意識することが大切です。初めは筋肉の動きが分からなくても、回数を重ねると筋肉の動きが分かりコントロールできるようになります。10回繰り返します。一日3セット程度行いましょう。
■寝ながらできる! 寝る姿勢での骨盤トレーニング
仰向けになります。 膝をおり、かかとをヒップへ近づけます。息を吸って吐きながらヒップを引き上げ10秒キープします。この時、肛門・膣を引き締めることを意識して行いましょう。骨盤の高さは左右平行になるように気をつけます。5回行います。慣れてきたら、左右の膝をつけて行います。より強度が高まります。
骨盤底筋をゆるめてしまう「日常のNG姿勢」
いくらトレーニングをしても日常の姿勢がゆるんでいたら、効果が出るのに時間を要してしまいます。日常の姿勢を見直して、骨盤底筋群を「ながら」で使える正しい姿勢を身につけましょう。× 骨盤底筋に悪い立ち姿勢
左の写真のように、体の軸がぶれている立ち姿勢は、インナーマッスルが使われておらず、体の軸が左右に傾いたり外側に流れる姿勢といえます。日常での立ち姿勢が、左の立ち姿勢のように、常に膀胱や尿道を支える骨盤底筋群がゆるんでいる姿勢であれば、折角のエクササイズ効果が期待できません。左の悪い姿勢が習慣化すると筋力不足に拍車がかかりますので要注意です。
◎ 骨盤底筋に良い立ち姿勢
左の写真は、からだの内側を意識した立ち姿勢です。インナーマッスルが使われる姿勢です。正しい姿勢を維持することは全身の筋肉を使う筋トレともいえます。日常生活のの中で実践すると全身の筋力が養われます。「100m先で美しく映える姿勢のコツ」でご紹介していますのでご参考に。
× 骨盤底筋に悪い座り方
立ち姿勢だけではなく、「座り姿勢」も骨盤底筋に影響を及ぼします。左の写真のように、骨盤を傾けた猫背の姿勢をとっていたら、筋肉がゆるむだけではなく、骨盤がゆがみ、骨盤周辺にお肉が付きやすい状態となります。「尿漏れ」は、骨盤底筋群のゆるみだけではなく、膀胱・尿道周辺も圧迫する肥満も原因の一つとなります。骨盤周辺に脂肪がつきやすい骨盤のゆがみを誘発する座り方は避けましょう。
◎ 骨盤底筋に良い座り方
左の写真のように、座った時に、耳・肩・肘・骨盤が一直線。膝の下に踵がくるポジションだと骨盤を立てて座る事が出来ます。骨盤は下半身と上半身をつなぐ大切なパーツ。骨盤を立てるように座ると骨盤周辺の筋肉が使われます。正しい座り方の記事はこちらから。
姿勢をマスターした次はいよいよ骨盤底筋エクササイズをスタート!
骨盤底筋エクササイズのコツは「ゆるめる」こと!
今回は座って行う骨盤筋群トレーニングをご紹介します。コツをつかめば「立つ・寝る・座る」どの姿勢でも実践可能です。骨盤底筋群
まずは、骨盤底筋の位置を図で確認します。いくつもの筋肉が骨盤の中にあることがお分かりいただけましたか? 筋肉の場所をイメージすると行いやすいです。
1. 背筋を伸ばした姿勢で椅子に深く腰掛けます。この時に、おしりの左右の骨に均等に体重がかかるようにします。脚は腰幅に開き、下腹部に軽く両手を添えます。
2. 息を吸って吐きながら肛門を締めます。この時、ガスが出るのを我慢する感じで締めます。
8秒かけて引き締めた肛門の筋肉を背骨を通って頭の先まで引き上げるイメージで引き締めます。
この時の最大のポイントは、腹筋を動かさないところです! 6秒脱力を3回行います。
3.(2)と同様に次は、肛門に加えて尿道を引き締めます。おしっこを我慢する感じです。息を吐きながら8秒かけて背骨を通って頭の上まで肛門と尿道の筋肉を引き上げるイメージで引き締めます。6秒脱力して3回。お腹の筋肉が動かないことを確かめながら行います。
4. 最後は肛門・尿道に加えて膣を引き締めます。3つを一つにするイメージで。
8秒かけて背骨を通り頭の上まで引き上げるイメージで。6秒かけて脱力×3回
(1)~(4)を1日1回行います。多く行うよりも継続して行う事が大切です。
ご紹介したのは、ガイドが実践し、また、講座でも実践しやすかった方法です。おすすめの秒数は専門家によっても異なりますが、最大のポイントは「腹筋を使わない」こと。通常の姿勢を保つとき、「腹筋を使う事」を意識しますが、骨盤底筋トレーニングは「腹筋をゆるめ、肛門・尿道・膣の筋肉を使うこと」です。
慣れるまでは難しいのですが、コツをつかめば寝ながらでも、座ったままでも、立った姿勢でも、どの姿勢でもできます。
筋肉は、年齢を重ねると衰え、また、意識しないと鍛えることはできません。エクササイズと姿勢を併用して日常で筋肉を鍛えましょう!
「骨盤底筋ゆるみ」が原因でで、30代の尿漏れが増えている!?
排尿のトラブルに悩んでいるのは高齢者だけではありません。
「骨盤底筋群」がゆるむリスクの代表例として、「尿漏れ」が挙げられます。内臓を支える筋肉なので、排尿排便のトラブルには関連性が高いようです。
とはいえ、「尿漏れ」の原因は一つではありません。日本泌尿器科学会ホームページによる4つの分類を下記にご紹介します。
- 腹圧性尿失禁
- 切迫性尿失禁
- いつ流性尿失禁
- 機能性尿失禁
くしゃみなど腹圧がかかった時、尿漏れを起こす「腹圧性尿失禁」は30代以上の約半数の女性が経験したことがあるとのデーターもあります。
大きな原因は膀胱や尿道周辺を支える骨盤底筋群の筋力低下にともなう筋肉のゆるみが挙げられます。経膣分娩が原因で骨盤底筋群がゆるむ事がありますが、この場合は、一時的であり、自然に改善する方も多いそうです。
とくに、意識して骨盤底筋群を鍛える必要があるのは、徐々に骨盤底筋群のゆるみが生じている人です。具体的には、
- 姿勢が悪く、日常での筋力低下に伴い骨盤底筋力低下する人。
- 加齢によりホルモンバランスが変化し骨盤底筋群を強化する必要がある人。
- 肥満や便秘で尿道周辺の筋肉を圧迫している人。
当てはまる人はとくに注意してください。
さらには、「自分は大丈夫」と思っていても、すでに尿漏れ予備軍になっているかもしれません。次のチェックリストをご覧ください。
あなたは大丈夫? 「尿漏れ」予備軍チェック
下記の12個のチェックリストいくつあてはまりますか?現時点で「尿漏れ」の症状がなくても、3つ以上あてはまるとリスクが高まりますので骨盤底筋群を強化するトレーニングを日常で行い予防しましょう。- 猫背である
- 出産経験がある
- 40歳以上である
- 冷え症である
- O脚である
- ハイヒールを履いている
- 歩くスピードが遅い
- 運動習慣がない
- 肥満傾向にある
- 便秘がちである
- トイレが近い
- 下腹部にお肉がついている
予防のためにはまず、日常の「姿勢」を改善するのが大切です。姿勢は日常習慣動作ですので、正しい姿勢をとる習慣をつけることで、全身の筋肉を日常的に使えるようになります。
エクササイズをしても尿漏れに改善が見られない場合は、専門医への受診しましょう。検査により原因を究明できますし、治療方法も手術・薬物など選択肢に幅がありますので生活にあわせた治療を選ぶことが可能です。
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