ミュージカル/注目のミュージカルレビュー・開幕レポート

2016年1~2月の注目!ミュージカル

あけましておめでとうございます。今年も数々の大作、新作、意欲作が目白押しのミュージカル界ですが、初芝居には肩の力を抜いて思いっきり「初笑い」というのもいいかもしれません。今回はそんなコメディ・ミュージカル『THE STOMACH』から魂の歌唱劇『ピアフ』までをご紹介。恒例、松島まり乃的「2015年ミュージカル大賞」も発表します!

松島 まり乃

執筆者:松島 まり乃

ミュージカルガイド

新年あけましておめでとうございます。今年も見逃せない注目作を厳選、ご紹介して行きますが、その前に昨年に引き続き、筆者が選ぶ「ミュージカル・アワード」の発表です!2015年はどんな舞台が、私たちを楽しませてくれたでしょうか。このリストを参考に昨年を回顧し、感動を新たにしていただけましたら幸いです。

*松島まり乃が選ぶ! 2015年ミュージカル・アワード*
作品賞=『デス・ノート』『アラジン』、演出家賞=栗山民也(『デス・ノート』)、スタッフ賞=ジェフリー・ページ(『メンフィス』振付)、林アキラ(『夢のつづき』作曲)、松田尚子&木下菜津子(『スコット&ゼルダ』振付)、主演男優賞=市村正親(『スクルージ』)、北村有起哉(『十一ぴきのネコ』)、主演女優賞=涼風真世(『貴婦人の訪問』)、山崎佳美(『夢のつづき』)、助演男優賞=鈴木壮麻(『End Of The Rainbow』、『タイタニック』)、田代万里生(『CHESS』、『エリザベート』)、伊藤俊彦(『WORKING』)、TAKE(『RENT』)、助演女優賞=香寿たつき(『エリザベート』『ラ・カージュ・オ・フォール』『スクルージ』)、アンサンブル賞=『アラジン』、新星賞=瀧山久志(『アラジン』)、来日公演賞=『TOP HAT

*1月開幕の注目!ミュージカル*
『漂流劇 ひょっこりひょうたん島』1月9日~(松本)、1月15日~(大阪)、1月23日~(福岡)、2月3日~(東京)開幕←観劇レポートUP!
『音楽劇 星の王子さま』1月16~17日=兵庫県立芸術文化センター阪急 中ホール←観劇レポートUP!
『THE STOMACH』1月20日開幕←観劇レポートUP!

*2月開幕の注目!ミュージカル
『ピアフ』2月7日開幕←観劇レポートUP!
『Marry Me A Little』2月5日開幕←稽古場レポート、演出家インタビュー、菅家レポートUP!
『ウェストサイド物語』2月14日開幕←稽古場レポート、演出家&出演者会見レポート、観劇レポートUP!

*AllAboutミュージカルで特集した、もしくは特集予定のミュージカル
『花より男子The Musical』1月5日開幕 出演・松下優也さんインタビューを掲載
『泣いた赤鬼』1月8日開幕 子連れで(も)観たいミュージカルにて稽古場レポートを掲載!
『The Love Bugs』1月9日開幕 Star Talkにて出演・城田優さんインタビューを掲載!

【PICK OF THE MONTH JANUARY 1月の注目作】
見上げたボーイズ『THE STOMACH』

1月20~24日=博品館劇場
「見上げたボーイズ」集合!(C)Marino Matsushima

「見上げたボーイズ」集合!(C)Marino Matsushima

【見どころ】
川本昭彦さん、幸村吉也さん、平野亙さん、福永吉洋さん、縄田晋さんの5名が「大真面目に、ばかばかしいことをやろう!」と05年に旗揚げし、今年10周年を迎えた「見上げたボーイズ」。40代となった今もすがすがしい「全力ぶり」で独自のユーモアを追求している彼らですが、今回のテーマはなんと「胃の中での病魔との闘い」。 末期癌に侵された妻を助けるため、最先端医療の力でナノ・レベルにまで小さくなり、妻の胃の中に入った男の奮闘が描かれます。奇想天外にしてとてもわかりやすいストーリーは、大掛かりな装置に頼らず、あくまで舞台経験豊かな彼らの身体を駆使して表現。SING_O_WORLDさんによる表情豊かな音楽に乗って「大真面目に」演じられる捧腹絶倒ファンタジー、今年の「初笑い」にぴったりの舞台となりそうです。
『The Stomach』

『The Stomach』

【稽古場レポート】
この日はまだ稽古序盤。しかし作・演出も兼ねる川本さんの脳内には既に様々な演出プランがあり、メンバーに次々に「こうやって、こんなふうにやってみて」と提案。メンバーたちが最小限の言葉からその意図を汲み、たちどころにシーンの枠組みを作り上げてゆく姿に、年月が醸成したグループの「阿吽の呼吸」ぶりがうかがえます。

続いてメンバーの皆さんにミニ・インタビュー。かつてTSミュージカル・ファウンデーションの出演舞台で知り合い、「日本のミュージカルを変えよう!」と自分たちのオリジナル・ミュージカル一座を立ち上げた彼らですが、作家性を追求していた当初より、最近は「より普遍的な作品」に照準を当ててきている、と川本さん。「特に震災以降は川本の発信するものが変わってきて、僕らもそういう作品で充実感を覚えます。『見上げたボーイズ』らしいバカバカしさは持ちつつ、時代に合ったものをやっていけたらいいですね」(縄田さん)「僕らにしかできなくてお客さんに喜んでもらえることを、体の続く限りやっていきたいです」(福永さん)。
作・演出も兼ねる川本さんは怪しい(?)名医役。(C)Marino Matsushima

作・演出も兼ねる川本さん(上)は怪しい(?)名医役。(C)Marino Matsushima

本作の「胃の中の物語」というアイディアは昨年、打ち合わせ中に平野さんから出たものだとか。「お笑いでよく、洗濯機がぶつぶつしゃべるようなのがあるじゃないですか。単純な思い付きを言ってみたら、意外と川本が食いついてきて(笑)、大笑いするうちここまで膨らんできました」(平野さん)。「内容としては、小学生が寝る前に布団の中で想像するような話だけど、それをキャリアを積んできた僕らが真剣にやるとどうなるか、御覧いただきたいです」(幸村さん)。

「SINGOさんの音楽、いいですよ~」と言いながら楽譜と格闘中の幸村さん、縄田さん。(C)Marino Matsushima

「SINGOさんの音楽、いいですよ~」と言いながら楽譜と格闘中の幸村さん、縄田さん。(C)Marino Matsushima

そのあとの楽曲リハーサルでは、作曲・音楽監督のSINGOさんからの「ここはミュージカル風にファルセットでお願いします。『レ・ミゼラブル』の病床シーンのような感じで」とのリクエストに、幸村さんが「(『レ・ミゼラブル』)観たことないけど…」と、ぼそり。こちらが目を丸くしていると「僕、ミュージカル観ないんですよ、ミュージカルに出ているくせに(笑)」との衝撃発言が飛び出しました。ベテランというだけでなく、かなり個性的(?)な彼らの舞台、きっと予想を遥かに超えた仕上がりとなることでしょう!

【観劇ミニ・レポート】
『THE STOMACH』

『THE STOMACH』

主人公ジョージ(幸村吉也さん)が胃癌患者の妻を唯一救えるスーパードクター・YDK(川本昭彦さん)のもとを訪ねるくだりから物語はスタート。自信たっぷりのYDKは、ジョージ自身が最小化し、胃の中に入ってがん細胞を退治するという治療法を提案、「見込みのあるオペしか俺はやらない」という彼を信じ、ジョージは妻の体内に入ることを決意するが…。(ここまでの、床に寝そべって演じる姿をカメラで後方のモニターに映し出す演出は川本さんが近頃積極的に使う手法で、直後に演出を手掛けた『宛名の無い手紙』でも登場)。

治療の困難さを誰もが知る疾病の克服がテーマであるだけに、奇想天外な発想にもかかわらず一瞬抱きがちな「もしかして重い話?」「大・感動作…?」という予感は、以降のシーンで即座に打ち消されます。全身総タイツ有り、着ぐるみ(?)有りで展開する舞台は、間違いなくコメディ。
『THE STOMACH』

『THE STOMACH』

期待通りの結末へと進んでゆく物語自体はインタビューで幸村さんが語っていた通り、子供が空想するような無邪気なものですが、それがSING_O_WORLDさんによる、“壮大さ”から“泣き”、“躍動感”まで見事にふり幅の広い楽曲に彩られ、40代の俳優たちが心から楽しそうに“全力で”見せるのが「見上げたボーイズ」らしさ。男くさいロックを5人のメンバーが熱く歌うテーマ曲は、ありえない(?)カッコよさです。千秋楽で川本さんは「エジンバラ(演劇祭)にこの作品を持っていきたい!」と野望(予定?)をちらり。なるほど海外進出を睨んでこその「ジョージ」(譲治ではなく)だったか!と、思いがけない発見が出来たカーテンコールでした。

*次頁で『ひょっこりひょうたん島』以降の作品をご紹介します!
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