「伝説の女優」の人生の岐路を誠実に描く音楽劇
『End of the Rainbow』観劇レポート

『End of the Rainbow』

『End of the Rainbow』

高級ホテルのスイートルームを模した舞台。到着したピアニストのアンソニー(鈴木壮麻さん)、ジュディ・ガーランド(彩吹真央さん)と婚約者のミッキー(ダブルキャスト、この日は伊礼彼方さん)の会話からは、彼女が薬物の服用をミッキーに止められていることがうかがえます。ステージ・ママだった母親に少女時代から様々な薬を与えられてきた彼女は薬物依存体質となっており、コンサートを前に不安定な精神状態をもてあます様が、舞台を囲むように設けられた電飾枠を点灯することで一気に華やぐショー・シーンを差し挟みつつ、展開。後半、アンソニーがある申し出をすることで、ジュディの人生には一瞬、希望の光が灯されるのですが…。
『End of the Rainbow』

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『オズの魔法使い』ドロシー役の可憐なイメージからはあまりにかけ離れた、破滅型の人生を送るジュディ・ガーランド。卑猥な台詞、しぐさも頻出し、ともすれば痛々しさばかりが目に付くであろうヒロインではありますが、これを清潔感のある容姿、身のこなしと本質的に温かみのある声の持ち主である彩吹真央さんが誠実に演じることで、ほとんどが“ジュディ・ガーランド世代”ではなく、彼女をよく知っているわけではない今回の観客に“スター”としてのジュディを印象付け、親しみを抱かせます。アンソニーの申し出によって一瞬心が揺らぐも、きっぱりと決断を下すその姿からは、結局はジュディ自身が“自分が何者であるか”を理解し、選んだ人生であることがうかがえ、最後の渾身の歌唱がより味わい深いものに。ジュディの、半ば狂気じみた歌唱で知られる「降っても晴れても(Come Rain or Come Shine)」等の力強いナンバーものびやかに、気持ちよく聞かせてくれます。
『End of the Rainbow』

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後にジュディの5番目の夫としてその死を見届けることになる、若い婚約者ミッキーをこの日演じたのは、伊礼彼方さん。セクシーで“頼れる”オーラが役にぴったりの伊礼さんは、はじめはジュディの健康を慮り、薬物依存からどうにか抜けさせようと努力しますが、持って生まれた野心からある重要な行動に転じ、ジュディの行く末を決定づけてしまう様を好演。
『End of the Rainbow』

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またインタビュアー、ホテルのポーター、舞台監督助手(?)役を演じ分ける小西遼生さんも、それぞれの出番をチャーミングに彩ります。そしてジュディに長年、愛情深く接し、彼女に最後のチャンスを与えようとするアンソニー役の鈴木壮麻さんは、とぼとぼと不格好な歩き方、飄々とした語り口からこの人物の、ゲイとして辛酸をなめてきた半生をうかがわせます。その彼がジュディに優しくメイクを施すシーン、また勇気を振り絞ってある提案をするくだりでは、アンソニーも心を裸にして語り掛けることで、“二つの孤独な魂が触れ合う”瞬間を優しく、深い余韻とともに表現。必見の名場面となっています。
『End of the Rainbow』

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なお、本編の後には彩吹さんの代名詞(?)である美脚も堪能できるショー・シーンに続き、とっておきの「おまけ」も。男性陣の魅力も全開で、観客にとっては嬉しいサプライズとなることでしょう。


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