世界遺産都市ソウル近郊の「華城(かじょう/ファソン)」

水原のランドマーク、華虹門

水原のランドマーク、華虹門。7つのアーチが美しい。流れているのは水原川で、華城を南北に貫いている

ソウルには世界遺産「宗廟」「昌徳宮」と「朝鮮王朝の王墓群」の一部があり、近郊には「南漢山城」「華城」がある。これらは朝鮮王朝(李氏朝鮮)関連の世界遺産で、それぞれ宮殿・霊廟・墓・山城・城郭都市とバリエーションも多彩。世界遺産ファンなら一度の旅で5か所の世界遺産を訪ねるなんていうことも可能だ!

いずれも日本の御所や墓地・城郭などとはかなり異なっており、中国の影響を色濃く残していることがひと目でわかる。ソウルは大陸の文化を肌で感じることができる街なのだ。今回は城郭都市という日本にはあまり見られない都市設計で魅せる韓国の世界遺産「華城」を紹介する。

韓国が誇る城郭都市・華城

北西方面を守る華西門

北西方面を守る華西門。右の入り口付近から半月状に飛び出した城壁を甕城(おうじょう)という。華西門と蒼竜門は一方が開いた半月状で、八達門と長安門は両端が閉じた半円状になっている

世界的に、「城」は町を城壁で囲んだ城郭都市を示すことが多い。日本では城下町の中心に城があるイメージだが、これはかなり特殊な例で、中国でも中東でもヨーロッパでも城郭都市が一般的だ。

華城城壁

華城の城壁。このような城壁で街が囲われている

日本にも江戸城や小田原城、大坂城、姫路城のように城壁で町を取り囲む「総構え」もあるにはあったが、さほど普及・発展することはなかった。これは日本の戦争がほとんど内戦といえるもので、他民族による凄惨な侵略戦争がなかったことが大きい。

韓国の世界遺産「華城」はそんな日本の城とは異なる大陸の城郭都市のひとつ。下のGoogleマップで城壁を確認してみてほしい。マークしているのが南門=八達門で、ここより北(上部)に城下町が展開していた。拡大して八達門の西(左)にある八達山から城壁をたどるとわかりやすいだろう。

華城とその周辺(Googleマップ)

 

城郭都市・華城の構造

華城行宮、洛南軒

華城行宮、洛南軒。正祖が母である恵慶宮洪氏の還暦を祝っている様子が再現されている

蒼竜門

デザイン的に華西門とよく似た蒼竜門。華城の設計を担当したのは実学者・丁若よう(ていじゃくよう/チョン・ヤギョン)だ

華城は全長5.7kmの城壁に囲われた都城で、130ヘクタールの面積を囲い込んでいる。東京ドーム概算で28個分といったところだ。西に八達山を有する平山城でもあり、城内には水原川が流れている。これは風水と実用性を考慮した結果だ。

城壁には東西南北の順番に蒼竜門、華西門、八達門、長安門という4つの門楼があり、5つの暗門(隠し門)と2つの水門が設けられていた。このうち現存しているのは門楼4、暗門4、水門1だ。

 

華城行宮の正殿、奉寿堂

華城行宮の正殿、奉寿堂。中央が王の座具である玉座だ

城壁には48もの軍事施設が備わっていたが、現存するのは41。敵を見張る角楼、その援護を行う舗楼、鉄砲や大砲を撃つ砲楼、連弩で矢を放った弩台、城壁を登る敵を撃退する雉、城門を守る敵台、将校が指揮を行う将台などが一例だ。こうした防御施設によって街を守るだけでなく、首都・ソウルの南の防衛拠点としても機能した。  

また、八達山の麓には華城行宮が建設された。行宮とは、王が行幸する際に一時的に留まる臨時の宮殿のこと。華城を建てた正祖(せいそ/チョンジョ)は各地に数々の行宮を建設したが、その中で最高傑作とされるのが華城行宮なのだ。

西将台

ライトアップされた西将台

華城行宮は往時の姿をとどめた美しい姿からロケ地としても有名で、『宮廷女官チャングムの誓い』『イ・サン』『ファン・ジニ 』『チャン・オクチョン』『ペク・ドンス』『快刀ホン・ギルドン』『風の国』『屋根部屋の皇太子』『太陽を抱く月』『根の深い木』など多くの韓流ドラマがここで撮影された。このためドラマロケ地巡りの一環としてここを訪れるファンも少なくない。