ファストフードに押し寄せる高級化の波

現在、世界的に見てファストフードには高級化の波が押し寄せています。アメリカでは“ファストカジュアル”と呼ばれるファストフードを若干高級化した業態が注目を浴び、外食産業において最も成長著しい分野になっています。

ファストカジュアルを代表するレストランにはウェンディーズなどがあり、2011年に日本に再進出した際には、1,280円の“フォアグラバーガー”が話題となりました。

また最近では、アメリカで熱狂的なファンを多く抱え、行列が絶えないハンバーガー店として有名なシェイク・シャックが11月13日に日本に初出店を果たすなど、日本でもファストカジュアルにビジネスチャンスを見い出す企業が増えてきています。

垣間見えたモスクラシックとシェイク・シャックの戦略の違い

シェイク・シャック

ファストカジュアルでは、アメリカで大人気のシェイク・シャックも時を同じくして1号店をオープン

今回偶然にもほぼ時を同じくして新店舗をオープンしたモスクラシックとシェイク・シャックですが、実際に店舗に足を運ぶと、その戦略の違いが鮮明に浮き彫りになります。

まずシェイク・シャックですが、1号店の店舗は明治神宮外苑内の観光客の往来が絶えない都心の一等地を選びます。多くの海外の企業が初出店に際して、銀座など非常にインパクトのある立地を選ぶのに倣って、シェイク・シャックも最高の立地に1号店を出店したのです。

これは、シェイク・シャックは今回日本初出店ということで、1号店で失敗はすることは許されず、最高の立地を確保して話題を集めてロケットスタートを切る戦略といえるでしょう。

一方、モスクラシックの戦略はシェイク・シャックとあまりに対照的です。実際に訪れてみると立地はお世辞にも最高とはいえない場所にありました。当日は小雨の降りしきる午前中ということを考慮しなければいけませんが、住宅と商業ビルが混在している人通りの少ないJR千駄ヶ谷駅から徒歩3分ほどの場所に1号店を構えたのです。

通常、従来のハンバーガーと比べて高級なメニューを提供することを考えれば、シェイク・シャックのように、価格をあまり気にしない顧客が多く集まるところに出店するのがマーケティング戦略のセオリーといえます。ただ、モスクラシック1号店の立地を商業集積地にしなかったのには、モスバーガーなりの深い意図があるのです。

モスバーガーが狙う戦略は?

もともとモスバーガーは住宅地近隣を中心に出店してきており、地域の住民に愛され何度も利用してもらえる店づくりを進めてきました。同じようにモスクラシックも近隣の住民に愛されるような存在を目指していくがゆえの選択だったのです。しかも、JR千駄ヶ谷駅周辺は新国立競技場が完成すれば大きく人の流れが変わる可能性を秘めた立地ともいえます。

モスバーガーにとって、モスクラシックはブームにのって急拡大を図るビジネスではなく、1号店でじっくりとその効果を検証しながら、しっかりと地に根を張って徐々に規模の拡大を目指していく新たな挑戦なのです。

実際のところ、日本でファストカジュアルのレストランが成功することは難しいといえるでしょう。それは、前述したようにかつて鳴り物入りで日本に再参入したウェンディーズが足踏みしていることからも伺えます。

果たしてモスバーガーの地道な戦略によって日本にファストカジュアルが定着するのか?

その結果を見極めるためには我々もモスクラシックの取り組みを長い目で見守っていく必要があるといえるでしょう。


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