メルセデス・ベンツの日本市場での存在感は益々増している
日本市場での存在感を増すメルセデス・ベンツ
世界の高級車の代名詞といえば『メルセデス・ベンツ』。日本でもメルセデス・ベンツは、ドライバーであれば一度はオーナーになってみたい憧れの車といっても過言ではないでしょう。
今、このメルセデス・ベンツが日本のマーケットで存在感を増しています。
国内の新車の登録台数がここ数年330万台前後で頭打ちとなる中、メルセデス・ベンツは5年で新車の登録台数がおよそ2倍にまで達し、2015年の上半期は前年同期比19.1%増の3万2,680台まで記録を伸ばして、統計が始まった2002年以降、初めてフォルクスワーゲンを抜き去り、輸入車メーカートップの座に輝いたのです。
このメルセデス・ベンツが日本の自動車マーケットで快進撃を続ける背景にはどのようなマーケティングがあるのでしょうか?今回はその背景を掘り下げていくことにしましょう。
“ビッグポンド戦略”でより大きな池を目指す
メルセデス・ベンツが日本でその存在感を増した背景には、これまでメルセデス・ベンツとあまり縁がなかった大多数の消費者層へアプローチする戦略に舵を切ったことが挙げられます。この戦略は、小さな市場からより大きな市場を目指すという意味で“ビッグポンド(大きな池)戦略”と呼ばれています。そもそも、この戦略に舵を切った理由の一つには、市場調査やイベント来場者から「ベンツは1台1000万円くらいするから自分には関係ない」といった声が聞かれ、現実とは大きくかけ離れたイメージを持つ者が数多く存在することが浮き彫りとなったことが挙げられます。実際にはメルセデス・ベンツにはAクラスに300万円以下のモデルあり、そのような事実を多くの消費者に知ってもらうだけでも、潜在顧客の大きな池が創造できることを確信したのです。
ただ、このビッグポンド戦略を推し進めるうえで、従来とはまったく違う顧客アプローチが求められます。それまでは、全国209の販売店や高級ホテルを会場にした展示会で新たなモデルをお披露目していましたが、この方法ではこれまでと違う“大きな池”の顧客層にリーチすることはできません。
そこで、考え出したのが全国のイオンモールでの展示会だったのです。
これまでイオンで買い物をする顧客の多くはメルセデス・ベンツとはあまり縁のなかった人々です。それゆえ、社内ではイオンモールでの展示会にイメージが合わないという反対の声も多くありましたが、当時副社長だった上野金太郎氏(現社長)が「メルセデス・ベンツの敷居を低くし、これまでとは比較にならないくらいの多くの顧客に対してビジネスを展開していくにはうってつけのプレイスだ」と説得し、実施に踏み切ったのです。
もちろん、当初から成功を収めたわけではなく、スーツでの接客で来店客が警戒して寄り付かないなど、効果が予想を大きく下回ることもありました。そこで、その都度スタッフの衣装をポロシャツに変更したり、女性のスタッフを多めに配置したり、子供連れには風船を配ったり、イオンモールに来店する客層に合わせて対応を変えていくことで徐々に来店客が展示会に積極的に参加するようになったのです。この努力の甲斐あって、メルセデス・ベンツの真のイメージを伝えることに成功し、メルセデス・ベンツに興味を持つ人が集まる“池”は徐々に拡大していくことになるのです。
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