元麻布ヒルズ<専有面積250.87m2>リノベーション住戸を内覧
「元麻布ヒルズ」(港区元麻布1丁目)は総戸数222戸、29階建てタワー棟を中心にした2002年竣工の再開発プロジェクトである。樹木をモチーフにした外観が特徴的だ。デザイン監修には内井昭蔵設計建築事務所、コンラン&パートナーズ(一部住宅インテリア)を採用。構造は免震である(「都心に浮かぶ邸宅『元麻布ヒルズ』」参照)。築約13年だが、内装とともに設備や間取りの刷新までを検討する顧客が多いことから管理運営を手掛ける森ビルはリノベーションの施工例としてコンセプトルームを用意。このたび取材に訪れた。当該住戸は25階、専有面積は250.78m2である。従前は3Bedroom(下図)であった。
玄関からリビング中央、バルコニーまで一直線に視界が抜けるあたりは、いかにも高級マンションらしい空間づくりである。しかし、PP(プライベート・パブリック)分離の観点では左右にプライベート空間が分断されてしまうところが課題のひとつになったようだ。ゾーン毎の用途を明確に、またそれぞれの空間の機能性とテイストを引き上げるためのリフォームが施された。
PP(プライベート・パブリック)分離の徹底
港区内において、超高層建築物が圧倒的に少ないことは「麻布」が付く地域の特徴。360度視界が開ける「元麻布ヒルズ」はその利点を享受できる数少ないタワーマンションである。当該住戸は東方向に東京タワー、北方向に六本木ヒルズを望む。それぞれにパブリック空間、プライベート空間を集約させ、「東京を象徴するふたつのランドマークを楽しむ」アイデアだ。<落ち着いた閑静な住環境にある邸宅>を意識して造られた「元麻布ヒルズ」には、ワインセラーや「ヒルズスパ」など充実したライフスタイルを送るための施設が完備されるが、専有部における家事専用空間などもそのひとつ。キッチンのバックヤードには大きなパントリーと部屋自体を乾燥室とするエアコン機能をもたせたユーティリティを設けている。
マスターベッドルームへ通じるバステラスからの動線にも注目。快適なバスタイムにするため梁下を避けたことで生まれた空間をユニークな手法で活かしている。
和とアートを強調した理由
上の画像はリビングダイニングを撮影したものだが、空間の個性をあらわす1枚である。ダイニング横の壁には江戸時代後期の日本画家、中島来章(なかじまらいしょう)の一双の屏風が飾られている。作品を引き立たせるため、両サイドの収納扉には錫(すず)板を。1枚1枚鋳型(いがた)に流し込んで作られたものである。テーブルを照らす一対の灯りは「CHASEN S2」(フロス)。文字通り、茶筅(ちゃせん)がモチーフである。
万事、芸術性を兼ね備えたインテリアで統一。和のテイストを軸にしている。住み手の想定は「日本文化が好きな外国人」。とくにアート作品には徹底的にこだわったという。ゲストルーム(または子ども部屋)にも半双の屏風(長谷川久恵作)を(下画像)。エントランスホール正面には今井俊満1989年の作品で60号サイズの油絵「紅葉賀」が掛けられている(最下画像)。
収納はモルテーニ、キッチン設備はミーレにガゲナウ、水栓はドンブラハ、家具はプロメモリア、アルマーニカーザと世界中の高級ブランドを一堂に会したようなモデルルームである。
前出の収納扉同様、マテリアルもこだわり尽している。浴室壁面はイタリア特注のガラスモザイクタイルを。マスターベッドルームの壁紙は和紙織物のクロスを採用。オープンとクローズに可変するキッチンの間仕切り扉にはファブリックガラスを用いている。ひとつの住戸を隅々まで上質に仕上げた例というのは意外に無いもので、高級リノベーションマンションを検討している人にとっては非常に興味深い空間ではないだろうか。
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