ふるさと納税のお得は確定申告をしないと受けられない!
ふるさと納税とは、これまで「とられる」イメージが強かった税金を「選んで納める」という形にしたもの。「納税」と付いているためわかりにくいのですが、手続きとしては「寄附金額を控除」となり、自治体を選んで税金を納めるのではなく、住所地以外の自治体に寄附した金額を、本来納めるべき税額から引いてもらうことになります。ですから、確定申告をして住所地以外の自治体に支払っていることを税務署や市区町村に申告しなくては、還付を受けることはできません。
そこで今回は、ふるさと納税を利用した際の、確定申告の方法、申告書の書き方、控除額の計算方法や、ワンストップ特例制度などを、それぞれの注意点と併せてご紹介していきます。
【目次】ふるさと納税の確定申告 必要書類の書き方や仕組み
- ふるさと納税の申告だけなら、申告書は10分で書ける
- 期限はいつまで?確定申告書の提出期間
- ふるさと納税の確定申告で用意する必要書類はコレ
- ふるさと納税の確定申告書は第二表から書き始める
- ふるさと納税は所得税より住民税からの控除が大きい
- 5か所以内ならワンストップ特例でより手続きが簡単に
ふるさと納税の申告だけなら、申告書は10分で書ける
ふるさと納税をしたら確定申告を!
会社員で、生命保険料控除や住宅ローン控除は年末調整で済ませ、その後、家族が増えるなどの変更がない人なら、申告書の作成はシンプルで簡単。一度やってみると「こんな簡単なことをしないで税金の還付を受けていなかったなんて!」と悔やむはずです。
基本的なふるさと納税の流れは以下の4ステップです。
【1】ふるさと納税で寄附を行う
【2】お礼の品と「寄附金受領証明書」が届く
【3】「寄附金受領証明書」を添付して確定申告書を提出する
【4】控除額が引かれた住民税が通知される
また、平成27年4月から「ふるさと納税ワンストップ特例制度」がスタート。条件を満たせば、確定申告不要で節税メリットを受けられるようになりました(詳しくは後述)。
期限はいつまで? 令和元年分の確定申告書の提出期間
ふるさと納税を利用した場合、普段は自ら確定申告をする必要のない方でも手続きをする必要があります。まずは、確定申告ができる期間を確認しておきましょう。確定申告の時期は原則2月16日から3月15日。提出期限も原則は3月15日です。令和元(2019)年分の申告は令和2年3月期申告ということになるため、
確定申告の時期:令和2年2月17日(月)~3月16日(月)
申告・納税の期限:令和2年3月16日(月)
となります。
きちんと確定申告を行わなければ、せっかくふるさと納税を利用したにもかかわらず、所得税や住民税からの還付・控除を受けることができません。ふるさと納税をお得に使いこなすためにも、面倒だと思わずに手続きすることが賢明です。
ふるさと納税の申告で用意する必要書類はコレ
確定申告書をスムーズに作成するためには、まず必要なものをすべてそろえることからスタートします。必要なものは次のとおりです。□確定申告書A
→国税庁のウェブサイトのほか、最寄りの税務署でも入手可能(リンク先の記事で書式をダウンロードできます)。
□源泉徴収票
→勤務先から交付されるもの
□ふるさと納税の寄附金受領証明書
→寄附先の自治体が発行したもの
□個人番号カードや通知カードなど、自分と扶養親族のマイナンバーがわかるもの
□本人確認書類
□還付金を受け取る銀行口座がわかるもの
□印鑑
□電卓
平成28年分以降の確定申告書はマイナンバーの記入が必要になりましたから、扶養親族の分も含めて用意しましょう。
以下、手書きで申告書を作成する手順を紹介します。
※国税庁の確定申告書等作成コーナーでは質問に沿って必要事項を入力していけば、e-Taxで提出したり作成したものを印刷することもできます。また、スマホで作成・提出することもできるようになりました。手書は面倒という人は、この記事で基本の手順を確認してから、国税庁のホームページにアクセスしてみてください。
ふるさと納税の確定申告書は第二表から書き始める
必要なものがそろったら、早速、作成を始めましょう。まずは源泉徴収票を見ながら「控」の用紙へ下書きをします。申告書Aには第一表と第二表があります。第一表から書き始めると思いがちですが、第二表は内訳を記載し、第一表で集計という形式になっているので、第二表から書き始めるほうがスムーズです。ここからは、記入例をもとに確定申告書の書き方を解説していきます。
※以下、【1】~【13】は記入例の数字と対応しています。源泉徴収票の赤・青・緑で囲んだ数字は、確定申告書用紙の同じ色で囲んだ数字と対応しています。
【1】源泉徴収票の「支払金額」「給与所得控除後の金額」「所得控除の額の合計額」「源泉徴収税額」を、申告書内の同色の部分へ転記する(第一表、第二表ともに)。
【2】本来は保険料や扶養控除の内容について記す欄だが、年末調整が済んでいる場合は記入不要。
【3】16歳未満の扶養親族は控除対象ではないが、住民税に影響する場合があるので対象者がいる場合は記入する。
【4】自治体が発行した「受領証明書」をみながら、寄附先の名称、所在地、寄附額を記入。
【5】「寄附金税額控除」欄の上段「都道府県、市区町村分」へ(4)の金額を転記する。
【6】所得税からのふるさと納税分の控除額を記入。「ふるさと納税額」と「所得金額の合計(第一表(5)の金額)×40%」の少ない方の金額-2000円。この場合は6万円<426万円×40%=170.4万円だから、6万円-2000円=5万8000円。
【7】(16)と(19)を足して所得から差し引く金額を合計する。
【8】所得金額(5)から所得から差し引く金額(20)を引いて、課税される所得金額を計算する。
【9】所得税額を速算表(下の画像参照)にしたがって計算する。この場合は、243万3000円×10%-9万7500円=14万5800円。
【10】復興特別所得税額=所得税額×2.1%を計算する。この場合は14万5800円×2.1%=3061円。1円未満は切り捨て。
【11】基準所得税額(34)と復興特別所得税(35)を合計し、納付する所得税額を計算する。この場合は14万5800円+3061円=14万8861円。
【12】源泉徴収税額(38)から納付する所得税額(36)を引いた金額が、還付される税金。この場合は15万4700円-14万8861円=5839円。
【13】還付金を振り込んでもらう銀行などの情報を記入する。
記入が終わったら提出用の用紙に清書をし、控えは自分の記録として数年間は保存しておくといいでしょう。
ふるさと納税は所得税より住民税からの控除が大きい
申告書の作成が終わると「5839円しか戻ってこないの?」と、その控除額の小ささが気になる人も多いでしょう。そうなんです。ふるさと納税は地方自治体への寄附で、住民税の一部を移転するというのが基本的な考え方です。所得税の精算を行う確定申告では、大きなメリットがないように見えます。しかし、6月頃の給与に同封される『住民税決定通知書』にある都道府県民税と市区町村民税の税額控除額を見ると、住民税が減額されていることがわかりますよ。
●所得税からの控除
(ふるさと納税額-2000円)×所得税の税率
●住民税からの控除(基本分)
(ふるさと納税額-2000円)×10%
●住民税からの控除(特例分)
(ふるさと納税額-2000円)×(100%-10%-所得税の税率)と(住民税所得割額)×20%の少ない方
ワンストップ特例制度で簡単手続き! 5カ所以内なら確定申告不要
これまで確定申告が面倒で「ふるさと納税」を敬遠していた人に朗報です! 「ワンストップ特例制度」という仕組みが整備され、寄附先が5カ所以内などの条件を満たせば、確定申告不要で控除を受けられるようになりました。これなら、ズボラさんでも確実に税金の還付を受けられますね。ただし、医療費控除や住宅ローン控除など、ふるさと納税以外の申告がある人は利用できません。また、ふるさと納税ワンストップ特例を受ける方は、所得税からの控除は発生せず、ふるさと納税を行った翌年の6月以降に支払う住民税の減額という形で控除されます。
さらに、ワンストップ特例申請書の提出期限は確定申告期間とは別で、ふるさと納税をした翌年の1月10日までなので注意が必要です。ふるさと納税先の自治体からのワンストップ特例申請書が届くのが提出期限に間に合わない場合、総務省のホームページから自分でダウンロードして返送することも可能です。
【参考】ふるさと納税ワンストップ特例申請書の書き方・記入例
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