住宅ローン控除と医療費控除の同時申告はムダ?

医療費控除住宅ローン控除はともに節税に役立つ優遇税制ですが、住宅ローン控除を受けて所得税が全額還付になると、医療費控除を申告しても節税にはならないのでは……と考える人がいるようです。

しかし住宅ローン控除で全額還付になったとしても、さらに医療費控除の申告もしておいたほうがよい場合もあるのです。どういったケースで2つの節税制度を同時に申請してメリットがあるか、解説します。

医療費控除は、所得税と住民税の所得控除

医療費控除は14種類ある所得控除のうちの一つです。所得控除とは、所得から差し引ける控除のことで、これを漏れなく適用すれば、課税所得が少なくなればなるほど、税額が少なくなります(下図参照)。
所得控除が増えれば増えるほど節税になります

所得控除が増えれば増えるほど節税になります


たとえば、医療費控除(※)の節税の仕組みは、医療費控除を活用することにより所得控除額が増大→課税所得額が少なくなる→税額が少なくなる、という仕組みによるものです。たとえば、医療費控除を活用する前の所得税額が20万円で、医療費控除を適用した後の所得税額が17万円と算定されたら、差額3万円が還付されることに。これが典型的な医療費控除のパターンです。

(※ 平成30年3月期から開始されるセルフメディケーション医療費控除でも仕組みは同じ。従来の医療費控除を活用するか、セルフメディケーション医療費控除を活用するかは選択性によります)

しかし、医療費控除と住宅ローン控除の同時申請すると、住宅ローン控除活用前の所得税額が少なくなるため、住民税の軽減額に振り替えられる節税メリットがより増えるということが言えます。
ポイントを追って整理してみましょう。

住宅ローン控除は、まず所得税から還付され、残った分が住民税から差し引かれる

住宅ローン控除は、所得控除ではなく税額控除です。課税所得に税率が課されて税額が算定されますが、その算定された税額からダイレクトに差し引くことができるため、節税効果が高いとされています。

以下は平成33年12月までの住宅ローン控除の概要です。消費税率の税率が8%から10%へアップするのが再延期されたことにともない、住宅ローン控除の制度が伸長されてます。

伸長された住宅ローン控除のイメージ図(出典:国土交通省)

伸長された住宅ローン控除のイメージ図(出典:国土交通省)


たとえば、建物に含まれる消費税率が8%または10%の場合で、平成30年4月に居住を開始し、その年の年末の住宅ローン残高が4000万円だと、4000万円×1%=40万円が住宅ローン控除として差し引けることになります。

しかし、納めている所得税がそもそも40万円もない場合、住宅ローン控除はまず所得税から差し引き、差し引くことのできない住宅ローン控除のうち13万6500円を限度として住民税が軽減できるようになっています。

逆に言えば、所得税から控除できずに、住民税の軽減に振り替えることができる13万6500円をなるべく手つかずで置いておきたいというのがここでのポイントとなります。

医療費控除と住宅ローン控除の同時申告で、住民税が軽減されることも

上記のように住宅ローン控除額が40万円も算定されると、実際には住宅ローン控除だけで所得税が全額還付されてしまう人も多いため、医療費控除の節税メリットがピンと来ない人も多いのは事実です。しかし、医療費控除を確定申告の内容に反映しておくと、住宅ローン控除前の所得税額が低くなり、所得税から控除するローン控除が抑えられます。その分、住民税の軽減につながるからです。

たとえば、住宅ローン控除額が上記のとおり40万円と算定された人で源泉徴収票に記載されている住宅ローン控除前の所得税額が30万円の人(この人をAさんとします)と住宅ローン控除前の所得税額が20万円(この人をBさんとします)の2人の人がいるとします。

住宅ローン控除額が40万円という前提は同じなので

■Aさんの場合
  • 30万円ー40万円=△10万円が住民税から軽減
  • (節税メリットは所得税30万円&住民税10万円の合計40万円)
■Bさんの場合
  • 20万円ー40万円=△20万円が住民税から軽減とはならず13万6500円の限度額のシバリがかかる
  • (節税メリットは所得税20万円&住民税13万6500円の合計33万6500円)
となります。

ここで医療費控除を活用することにより、Aさんの所得税額が30万円から25万円に、Bさんの所得税額が20万円から15万円に軽減されたケースで算定してみましょう。

■Aさんの場合
  • 25万円ー40万円=△15万円が住民税から軽減とはならず13万6500円の下限度額のシバリがかかる
  • (節税メリットは所得税30万円&住民税13万6500円の合計43万6500円)
■Bさんの場合
  • 15万円ー40万円=△25万円が住民税から軽減とはならず13万6500円の限度額のしばりがかかる
  • (節税メリットは所得税20万円&住民税13万6500円の合計33万6500円)

この例のAさんのポイントは医療費控除を活用しない場合の所得税の節税メリット30万円と医療費控除を活用したあとの所得税の節税メリット30万円は同額であるものの、医療費控除を確定申告内容に含めたあとの所得税の節税内訳が医療費控除の5万円&住宅ローン控除の25万円の合計で30万円になっていることがポイントです。

このため住民税の軽減に振り替えることができる金額が13万6500円限度額いっぱいまで活用できるため、医療費控除と住宅ローン控除を同時申告したほうがオトクなのです。

さらに、医療費控除も所得税と住民税の双方に活用できるのでBさんのケースでも医療費控除の確定申告をしておいたほうが所得税の節税には役立たずとも住民税の節税には役立つでしょう。

医療費控除と住宅ローン控除を同時申告したほうがいい理由とは、

・まず、所得控除を最大限活用することにより、そもそもの所得税額を少なくする
・少なくなった所得税額から住宅ローン控除が適用される
・その分、住民税の限度額いっぱい差し引ききれない住宅ローン控除のメリットを振り替えることができるので医療費控除と住宅ローン控除を同時申告しておいたほうが有利


といえるでしょう。

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