小林製薬が顧客に支持され続ける秘密とは?
ブルーレット以外にも実のところ小林製薬にはヒット商品やロングセラー商品は数多い。たとえば、「サワデー」や「消臭元」、「熱さまシート」などは、誰しも一度は聞いたことのある商品名だろう。この数々のヒット商品やロングセラー商品を抱える小林製薬の強みは、“新製品を生み出す力”にある。
小林製薬では、年間売上に対して新製品が占める割合目標を10%に設定している。さすがにこの高い目標をクリアすることは至難の業であるが、それでも実際に年間で7.5%という驚異的な新製品比率を達成している。
この絶え間ない新製品開発を支える背景には、『ブランドスローガン』と『全社員提案制度』がある。
小林製薬では、『“あったらいいな”をカタチにする』をブランドスローガンとして掲げ、このスローガンを掛け声倒れにするのではなく、社員一人一人が心に刻み、常に身の回りの不便を解消したり、ささやかでも生活のクオリティを高めたりするアイデアを『全社員提案制度』を通じて、カタチにし続けているのだ。社員からの年間の提案件数は実に約5万件にも達するそうだ。
製品価値を顧客に伝える努力
わかりやすいパッケージの説明
まず、小林製薬の製品には「コリホグス」や「のどぬ~る」、「トイレその後に」などユニークなネーミングが多い。ネーミングのポイントは製品名を聞いてどのようなベネフィットを得られるかがわかること。この第一のポイントであるネーミングのプロセスでは何度も会議が開かれ、関わる社員は100人以上にのぼり、適切な商品名が決められる。
続いてパッケージも製品の価値を伝える重要な要素となる。顧客が店頭で目にするにはパッケージだからだ。そこで小林製薬では、パッケージを見ればどんな製品でどのような使い方をするのかが一目でわかるように写真や絵、言葉で伝えることを心掛けている。顧客は店頭で商品を手に取ってパッケージを見れば、自分の生活のどのようなシーンに利用でき、どのような問題を解決できるかがありありとイメージできるのだ。
そして、最後は広告。「ブルーレット」や「サラサーティ」など印象深い数々のCMで、小林製薬は多額の資金をつぎ込んでテレビCMを展開しているようなイメージがあるが、実のところ予算的には他社に比べて多いということはない。
ただ、消費者の印象に深く残るのはそのCMスタイルにある。小林製薬では芸能人や著名人を起用したイメージ広告ではなく、消費者が実際の生活の中で感じる問題のシーンをまず提起し、その問題を解決するためにどのような製品を使えばいいかを提案するスタイルのCMを展開している。つまり、小林製薬では『問題提起→解決』パターンのコマーシャルに特化しているのだ。このテレビCMにより、多くの消費者は自身の生活での問題点を強く意識し、その問題を解決するために小林製薬の製品が効果的だという連想につながっていくのだ。
さらなる“あったらいいな”のために
小林製薬は、『“あったらいいな”をカタチにする』というスローガンの下、社員一丸となって顧客目線で生活のクオリティを高める新製品開発や製品の改善に努め、その製品価値を『ネーミング』『パッケージ』『広告』という3つのマーケティング要素でわかりやすく伝えるという仕組みで顧客を増やし続けてきた。ただ、主力製品のブルーレットにしても、6割の消費者は利用していないという事実を踏まえると、まだまだ成長の余地は大きい。もし、これからも小林製薬が人々のライフスタイルの変化に合わせて“あったらいいなをカタチにし続けること”ができれば、いずれは6割のこれまで利用したことのない人たちも小林製薬のお客となり、ますます多くの生活を快適で楽しいものに変えていくに違いない。