ロシア法人の精肉機械をヒントに開発された麺カッターを兼ねた掃除キット(写真右側)
“「革新で何ができるか」ではなく、「革新を通じて世間に貢献できることは何か」”を信条とし、「イノベーションを通して、顧客の生活をいかに豊かにしていくか」という顧客視点に重きを置いているのだ。
そのため、製品開発の際には、購入から使用、廃棄に至るまで顧客行動を事細かに把握し、障害になるものがあれば徹底的にクリアして、利便性を究極まで高めていくことを心掛けている。
たとえば、今回の『ヌードルメーカー』も事前の調査でキャップに詰まった麺の掃除が大変という声がターゲット顧客から上がった。この問題に対して、解決策を見い出すために、フィリップスでは社内だけではなく広く社外までにも意見や知恵を求めた。
つまり、顧客の問題をより広い視野で解決するために、オープンイノベーションの仕組みを取り入れているのである。
実際にキャップの目詰まりした麺を取り除く問題は、フィリップスのロシア法人が生産する精肉機械の抽出部分を掃除するツールを応用したアイデアで解消された。
3.手軽さにこだわる
いかに素晴らしい家庭用製麺機ができても、身近にある材料で手軽に麺を作ることができなければ、数回使っただけで“お蔵入り”になることも十分に考えられる。これでは、真の意味で顧客の生活を変えることにはつながらない。
そこで、佐野氏は製品開発にあたって「身近にある材料でできるか?」「職人並みの熟練が必要な作業をシンプルな構造で手軽にすることができるか?」に心を砕いた。結果として出来上がった製品は、材料を入れてボタンを押すだけで、自動的においしい麺ができるという実にシンプルな構造を持ち、説明書も必要ないくらい簡素化されているものだ。
一方で、ユーザー次第で材料の配分やオリジナルの材料を加えるなど、調理をする者のレベルに合わせて進化させていく奥深い利用法も可能だ。フィリップスでは、調理家電を販売するのではなく、顧客に楽しい調理体験を提供しようという姿勢に立つことによって、どんな顧客にとってもキッチンでの調理をワクワクさせ、それゆえ顧客の支持を得るポイントにもなっているのだ。
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