ますます存在感を増すネット専業小売業
顧客のライフスタイルの変化でネットショッピングの市場が急拡大している。
ネット通販大手の楽天市場の流通総額は年々増加を続け、2013年には年間1兆6千億円を超える見込みです。百貨店業界トップの三越伊勢丹ホールディングスの年間売上が1兆2千億円程度ですから、楽天市場の流通総額は今や百貨店最大手の売上高を大きく上回る規模にまで成長していることになります。
このネット企業の躍進にはいくつかの要因が挙げられます。
まず一つ目は低価格。ネット企業には、たとえばアマゾンのように実際の店舗を持たずにビジネスを展開する企業も多数存在します。小売り店舗を持たなければ店舗の賃料や店員の人件費などのコストを削減することが可能となり、その分思い切った低価格に反映させることができるというわけです。
また、二つ目の要因としては配送の迅速化が挙げられます。かつてインターネットショッピングにとって、配送は大きなボトルネックになっていました。注文しても商品が届くのが数日、遅ければ1週間程度かかるということもありました。ただ、消費者の側からすれば、注文した商品をすぐにでも手にしたいというのが当然の心理です。そこでネットでは情報収集に留め、少しくらい高くてもすぐに購入でき、保証も含めて安心な近くの店舗で購入する顧客も多かったのです。
ところが最近ではネットで注文しても速ければ当日や翌日に届くような配送サービスを提供するショップが多くなりました。結果として、わざわざ実際の店舗に足を運ぶことなくネットショップを利用する顧客の大幅な増加につながったのです。
まさにネットショッピングは、多くの消費者の所得が減り続ける一方で、忙しさは増し続けるといった現代人の生活事情にマッチして成長を続けているといえるでしょう。
ネット専業企業の躍進に苦戦を強いられる大手小売業
このようなネット企業の躍進に対して、実際の店舗を展開する小売業者は苦戦を強いられています。たとえば、家電量販店最大手のヤマダ電機は、アマゾンなどネット企業に対抗するために各店舗の店長に価格設定の裁量権を委ねたところ、行き過ぎた値下げで売上確保に走る店舗が続出して、遂には2013年度の中間決算で営業赤字に転落してしまいました。また、ヤマダ電機ばかりでなく、今や多くの小売業者が、商品の見定めだけに来店し、店舗では何も買わずにネットの最安値で購入する“ショールーミング”と呼ばれる消費者の活動に頭を悩ませています。
それでは、実際に多数の店舗を抱える小売業者はどのようにしてこの“ショールーミング”という問題を解決し、ネット専業企業に対抗していけばいいのでしょうか?
次ページで小売業大手各社の最新の取り組みについて見ていくことにしましょう。