大手小売業者の逆襲の切り札=『オムニチャネル戦略』

オムニチャネル戦略

大手小売業者は『オムニチャネル戦略』で巻き返しを図る。

大手小売業者も、もちろんネット専業企業の攻勢を指をくわえてみているだけではありません。様々な対策を検討しています。その中で今最も注目を浴びているのが『オムニチャネル戦略』と呼ばれる戦略です。

『オムニチャネル戦略』とは、従来の小売店だけでなく、ネットや通販、テレビショッピングやSNSに至るまで様々なチャネルを通して顧客との接触を図り、売上機会を増大していこうという戦略です。様々なチャネルをシームレスにつなぐことができれば、顧客の購買体験が最適化され、スムーズな購入につながっていくことになります。

この『オムニチャネル戦略』に対して、各社は次のような取り組みを行っています。


■ ヤマダ電機の戦略

ヤマダ電機は行き過ぎた値下げを反省し、現在では方針を転換して店舗での値下げで対抗するのではなく、オンラインショップの利便性を向上させて顧客の獲得に力を入れています。ネットにはネットで対抗するという戦略です。

たとえば、昨年12月に刷新されたオンラインショッピングサイトでは、顧客が買いたいと思っている商品を登録しておくと価格が下がったタイミングで登録したメールアドレスに自動的に通知が届く『値下げ通知サービス』の提供を開始しました。また、「もう少し安ければ買いたい」という顧客を取り込むために商品ページに『指し値機能』を追加し、「この値段なら買う」という空欄に顧客が希望の金額を入力すれば、個別の値下げを期待することができるシステムも導入して顧客のつなぎとめに努めています。


■ パルコの戦略

パルコは、ネット専業企業に対抗するのではなく、逆に手を組んでオムニチャネル戦略を推進しています。たとえば、パルコはファッション通販「ZOZOTOWN」と協力して次のような取り組みを行っています。

顧客は、まずZOZOTOWNが提供する『WEAR』と呼ばれるアプリをスマートフォンにインストールします。そして、パルコの店舗で気に入ったものがあれば、商品のバーコードをアプリで読み取るとZOZOTOWNの買い物ページに自動的に飛んで、今パルコの店舗で実際に見て気に入った商品をその場で購入することができるようになっているのです。

この仕組み自体は大手小売業者が懸念する店舗のショールーミング化を促進するものであり、ルミネなどは自社の売上減少につながる可能性を考慮してZOZOTOWNからの提案を拒絶しました。

一方で、パルコは販売時に数%の手数料をZOZOTOWNから徴収できることから、試験的に新たな取り組みを導入し、結果を検証してから次のステップへ移っていくことを検討しているのです。


■ セブン&アイホールディングスの戦略

セブン&アイホールディングスは、今日本で最もオムニチャネル戦略に積極的に取り組んでいる企業の一つといえるでしょう。

リアル店舗ではコンビニエンスストアのセブンイレブンを始め、スーパーのイトーヨーカ堂や百貨店のそごう・西武などを通してビジネスを展開していますが、最近ではバーニーズジャパンへの出資も決定し、事業の幅をさらに拡大させています。

これらのリアル店舗とネットの融合はセブンネットショッピングがその役割を担います。これまでセブン&アイホールディングスでは、業態別にネット戦略を展開していましたが、顧客の利便性を高めるために、一つのサイトで様々な業態のネットショッピングをできるように統合を図っているのです。

加えて昨年12月には、通販大手のニッセンを買収し、子会社化することを発表しました。ニッセンがこれまで培ってきた通販のノウハウを吸収し、ますますオムニチャネル戦略を加速させていくことが買収の狙いといえるでしょう。

“流通戦争”の第一幕では、急激に変化した消費者のライフスタイルにマッチしたビジネスを展開して急成長を遂げてきたネット専業企業ですが、オムニチャネル戦略で巻き返しを図る大手小売業者との戦いはさらに激しさを増していくことが予想されます。

果たして、第二幕ではどちらに軍配が上がるのか? その戦いに注目が集まります。

※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。