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ビール最低シェアからトップ復活のCI戦略

アサヒスーパードライによるビール業界でのシェア復活の成功事例は、経営戦略、事業戦略、マーケティング戦略に大きなヒントを与えてくれる。時代の変化を的確に捉えた、その復活神話の本髄とは。

執筆者:木村 勝己


顧客満足・消費者志向

カスタマー・サティスファクション(顧客満足)が大きく注目されてきたころ、その代表的な成功事例といえるのが、アサヒスーパードライによるビール業界でのシェア復活である。

1990年頭のバブル崩壊までは、大量生産・大量販売の産業構造が主体を占めていた。企業で企画・開発された商品が製造者から消費者へと流れるプロダクトアウトの販売である。省力化やコストダウンが優先され、個々の顧客が望む製品が提供されたとはいえにくい。

衆から個の時代に移り変わった現代、マーケットインの考え方が必要になっている。企業は顧客満足を最優先に考え、製造、販売、サービスの構造を考えるようになった。

新コーポレート・アイデンティティ

東京浅草の「アサヒビールタワー」と「スーパードライホール」屋上の「炎のオブジェ」市場シェアのトップブランドであったアサヒビールは、1984年には年間出荷量で9.9%と史上最低のシェアになってしまった。翌年、当時の村井勉社長は業績回復のために新しいCI(コーポレート・アイデンティティ)を設定した。

その主体になるのが「消費者の求める商品を提供する」という消費者志向である。製造部門のつくったものを営業部門が黙って売るといった形を打破した。この結果生まれたスーパードライは、ビールの流れを大きく変え、アサヒのシェアトップ復活の成功につながったのである。

アサヒビールは新しいCIによる企業理念のもと、1985年に5000人の消費者嗜好調査を行った。この時得られた消費者の好みが「口に含んだ時の味わいと喉越しの快さ」「コクとキレ」である。それまでの「重くて、苦い」といった本格派のビールのイメージとは違ったものであった。

これは次ページのように食生活の変化に起因するようだ。
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