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ビール最低シェアからトップ復活のCI戦略(2ページ目)

アサヒスーパードライによるビール業界でのシェア復活の成功事例は、経営戦略、事業戦略、マーケティング戦略に大きなヒントを与えてくれる。時代の変化を的確に捉えた、その復活神話の本髄とは。

執筆者:木村 勝己


新しいポジショニング

戦後の食生活の変化(肉を使ったコッテリ感のある料理の増加)は、清涼飲料水でもバヤリース、コーク、ポカリスエット、ミネラルへとアッサリ感のあるほうへ嗜好が変化した。また当時、酎ハイブームがあり飲み口の軽い酎ハイになれた若年層の出現も、ビールへの嗜好の変化となっていたようである。

アサヒビールは競合企業と戦うための、新しいポジショニング(特定の市場セグメントにおいて自社製品を差別化し優位にする位置づけ)を見つけたことになり、辛口、キレを目標に新製品の開発がスタートする。

ポジショニングには、お客の立場にたった新しい価値の提供を、競業企業と比較して明示できることが重要である。先に紹介したアサヒビールの5000人の嗜好調査は、お客様の嗜好の変化を敏感に捉えた。そしてこの嗜好を限りなく追及した商品を提供できたことが成功の要因といえる。

これには数百種ある酵母バンクから目標酵母の探索、原材料の探索と調合、仕込みや醸造の方法といった製造工程の組み合わせにより、何度も試飲をくり返しレシピ開発が進められた。お客様の満足を得る商品を生むには、開発・製造における妥協の許さない追求が必要だ。アサヒビールの成功は消費者志向の企業理念が、会社全体にしっかりと行き渡った結果と言えるだろう。

商品コンセプトの表現広告

新キャッチコピー「鮮度でキレが冴える。洗練されたクリアな味・辛口。」写真:アサヒビールそして広告宣伝にも積極策が行われた。キャッチコピーは「飲むほどにDRY、辛口、生」、「辛口、キレ、鮮度」といったキーワードを採用。スーパードライという名前が決まった。

大物タレントを使ったイメージ広告をさけ、現役で活躍するビジネスマンやスポーツマンによる、商品コンセプトの表現に力を注いだ。発売初期は新聞広告を主体に展開し、投入した広告費は従来の2倍になった。

パッケージの開発も、缶の需要が伸びることを予想し缶を基本に発想したという。1960年以降、麒麟麦酒は大量販売において流通の系列化を進め、ビンの回収を加えた宅配に強みをもっていた。ところが単身者の増加、共稼ぎの増加は宅配には合わず、コンビニや小型スーパーといった店頭販売や自動販売機の増加は、缶ビールの普及につながっていった。

そして次ページのような大ヒット商品になった。
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