この先10年は今の住まいで暮らすほうがいい
相談者は、定年延長を選択するのであれば、あと10年間、サラリーマン人生は続きます。部長職ということから、この先転勤辞令が下りるという可能性は、あまりなさそうですね。ということは、今、仕事のために住み替える必要性はない、ということでしょう。むしろ65歳以降からの生き方、たとえばどんな仕事を新たにてがけるか、豊かな時間を過ごすためにどんな趣味を楽しむかなど、第二の人生のための準備に、自分の時間を費やすことのほうが優先されるべきでしょう。そうした暮らしには新宿や東京に乗り換えなしで行ける中央線沿線の東小金井という立地は、決して悪くないのではないでしょうか。
また、同じ広さ・間取りのものでより安い賃料の物件を探してみましたが、本来3LDKの賃貸物件が少なく、東小金井駅では見当たりません。もっと郊外に出ることも考えられますが、通勤、通学を考えると今の段階での住み替えではあまり利点はありません。
妻は、子どもが手のかかる時期を過ぎ、相談者よりひと足先に、自分のために時間を使う暮らしができるようになりつつあります。仕事に復帰するために何かの資格をとる勉強をしたり、やりたかった趣味を始めたり、家庭外の活動の比重が、地元を起点にして高まってくる時期ではないでしょうか。今、住み替えの必要性は感じられません。長男はこれから大学受験のために集中的に勉強することが求められます。長女は公立の中学生で、高校も都立をめざすなら、現段階で住環境を変える必要はないように思います。
東小金井は他路線との接続がなく、バス路線も少ないため中央線の各駅に比べ乗降客数が多くはありません。また、駅近くを幹線道路も走っていないため、大型の商業施設はオフィスが建つ可能性は今のところあまり高くはありません。
一方、近隣には大学が複数あり、落ち着いた住環境が維持されています。東小金井は、学びにふさわしい環境といえるでしょう。 そして子ども2人が大学を卒業して就活を乗り越え、社会人として独立(最近はずっと同居という家庭も増えましたが)するまでに順調にいくと10年かかります。
こうして見ていくと、これからの10年間は相談者の家族ひとりひとりが、それぞれのネクストステージに向けての準備期間と位置付けることができるように思います。したがって、これからの10年間は経済的に許されるなら、今の賃貸マンションに暮らしながらそれぞれの家族が次の人生を模索したほうが、効率が良いと思います。
家族が新たな人生を迎える10年後こそが住み替え時……次のページ