カルシウムの働き
カルシウムは神経や筋肉などの働きに大変重要なミネラルで、血中のカルシウム量は厳しくコントロールされています。体内のカルシウムの1%は血中にあり、残りの99%は骨と歯にあります。骨は常に生成と破壊を繰り返し生まれ変わっています。骨折をしても時間が経てばまた骨がくっつくのは、新しく生成されているからです。何らかの理由で生成される骨と破壊される骨のバランスがくずれると骨密度が低くなります。30才くらいまでは骨の生成量が破壊量を上回りますが、30才頃に生成と破壊の量が同じくらいになります。その後は生成量が破壊量より少なくなっていきます。高齢者や閉経後の女性では特に破壊量が生成量を上回り骨粗鬆症のリスクが高くなります。
カルシウムは注意しないと不足しやすい栄養素です。
カルシウムの体内への吸収
摂取したカルシウムの全てが体内に吸収される訳ではありません。幼児や児童期など骨生成が活発な時期には、摂取カルシウムの60%ほどが体内へ吸収されますが、思春期には25%ほど、そして成人になるとそれが15~20%に減少します。更に加齢に伴い吸収率は下がっていきます。妊娠中にはまた吸収率が上がります。カルシウムの吸収にはいくつか回路があり、ほどんとは十二指腸(胃の次の部分)で吸収されます。カルシウムは一度に吸収できる量に限界があると考えられています。特にサプリメントをとっている場合など、一度の吸収は500mgくらいが限界のようです。カルシウムサプリメントとして、よくみられるものは炭酸カルシウムとクエン酸カルシウムです。炭酸カルシウムは胃酸が吸収率を上げるため、食事と一緒にとる必要があります。クエン酸カルシウムは食事と一緒にとる必要はありません。
カルシウムの吸収と他の栄養素
ビタミンDはカルシウムの吸収を改善するのでビタミンDが不足するとカルシウムの吸収率が下がります。また、食事によるフィチン酸(玄米、小麦ふすま、豆、ナッツ類、種類など)とシュウ酸(ほうれん草、たけのこ、サツマイモなど)の量が多いとカルシウムの吸収を妨げます。しかし、逆に言えばフィチン酸やシュウ酸をカルシウムと一緒にとれば、フィチン酸とシュウ酸の吸収量を減らせるということにもなります。カルシウムが不足すると小腸からのシュウ酸の吸収が増え、シュウ酸カルシウム結石/尿路結石・腎臓結石のリスクを上げるという説もあります。食事は複数の食材を同時に摂取するため、それぞれの相互作用を考えるとカルシウム吸収のためにフィチン酸やシュウ酸を制限するような必要はありませんが、極端な食事をしている人は全体のバランスを考慮する必要があるかもしれません。
カルシウムの体内からの排出
カルシウムは尿、便、汗などより多少失われます。塩分の摂取が多いとカルシウムの尿排出が多くなります。たんぱく質の摂取量が多いとカルシウムの排出が多くなると言われていますが、最近ではたんぱく質は小腸でのカルシウムの吸収を改善するため、トータル的なカルシウム量には影響しないという報告が聞かれるようになりました。カフェインはカルシウムの排出を増やし、吸収を減らすと考えられていますが、一般的な量の場合(朝にコーヒー1杯、午後にお茶1杯など)、骨密度に悪影響を与えないようです。アルコールも飲み過ぎるとビタミンDの代謝異常のためにカルシウムの吸収が減ると言われていますが、どれくらい飲めば骨密度が下がるのかは分かっていません。清涼飲料水を沢山飲むと骨が弱くなるという人もいるようですが、これは清涼飲料水をよく飲む人は、牛乳などその他のカルシウムの摂取量が少なくなりがちであることが理由として考えれています。リン酸などのミネラルはカルシウムの排出にほとんど影響を与えないと考えられています。
カルシウムの欠乏症
カルシウムは数年不足してもすぐには欠乏症状は現れません。不十分なカルシウム摂取でも血中のカルシウムの値は低くなりません。血中カルシウムはとても重要なので食事の内容で左右されるものではありません。血中カルシウム値が下がるのは、摂取カルシウムが不足しているのではなく、腎臓病や薬などの影響によるもので、治療を受ける必要があります。カルシウム不足は骨粗鬆症や尿路結石・腎臓結石の原因の一つになる可能性があります。尿路結石・腎臓結石のある人では、尿からのカルシウム排出が多めだと言われており、食事からのカルシウム摂取が不十分な場合は、骨密度が低くなる可能性が通常より高いという報告もあります。しかし、カルシウムのサプリメントは尿路結石・腎臓結石のリスクを上げるとも考えられており、カルシウムの排出に問題がある人は、食事からのカルシウム摂取に挑んだ方がよさそうです。
カルシウムが豊富な食品の例
乳製品、骨(魚の骨など)、豆腐、納豆、青梗菜、ブロッコリー、オクラ、枝豆、ケール、ごまなど。色々な食品をバランスよく楽しみましょう!