今回はこのアンケート結果に基づき、最近の旅行事情を分析したうえで、今後のトレンドについてマーケティングの観点から予想していくことにしましょう。
ここ2年の旅行トレンドは、引き続き『安・近・短』
生活トレンド研究所が実施したアンケートによれば、2年以内に国内旅行をしたことがある人は全体の76.3%に達したのに対して、海外旅行はわずかに29.2%に留まり、多くの日本人にとって海外旅行はまだまだハードルが高く、気軽には行けない“高嶺の花”であることが浮き彫りになりました。ここ2年間は、デフレや歴史的な“超”円高の影響で旅行代金の低価格が進み、現地でのショッピングも円高でお買い得感が高まるなど、海外旅行をする人々にとっては、またとない好条件が揃いました。
結果として、日本政府観光局の発表によれば2012年の海外旅行者数は推計で1849万人に上り、過去最高を記録しました。
一方で、長引く不況で減り続ける給与や年金制度に対する不信感などから、将来に対する不安を抱く人も多く、極力日頃の贅沢を避け、質素倹約に努めるライフスタイルが定着してきたために、いくらお得とはわかっていても、多額の費用が必要な海外旅行にはなかなか踏み切れないのが、好条件が揃っているにもかかわらず全体的に海外旅行に行く人の比率が伸び悩んだ原因と推測されます。
ここ数年閉塞感が漂っていた日本経済で将来のことを考えれば、海外旅行で散財せずに、手軽に楽しめるレジャーとして国内旅行に出掛けて余暇を満喫したという結果が数字として示されたといえるでしょう。
今年の夏休みの旅行事情は?
今年の夏休みの旅行事情は?
夏休みの消費動向を明らかにするために明治安田生命が実施したアンケートでは、1世帯あたりが夏休みに使うお金は平均で8万3622円と前年に比べて648円多く、3年振りに増加。そして、夏休みの過ごし方では5年ぶりに「国内旅行」が40.4%と「帰省」の34.3%を上回る結果となりました。
これは昨年末に誕生した安倍政権の下で進められるアベノミクスによって、多くの国民が景気浮揚期待を抱いていることに起因すると思われます。
実際に、JTBが発表した今年の夏休みの旅行動向では、国内旅行は昨年比2.2%増えて7624万人と予想されています。
一方で、海外旅行に関してはアベノミクスによって行き過ぎた円高の修正で円安が急速に進み、“お得感”が薄れてきたことから減少に転じる見込みです。
為替レートは、昨年の8月には1ドル=78.48円近辺だった水準が今年は1ドル=97.55円まで円安が進み、円ベースで計算すると、実に1年で24%も海外での物価が上昇した計算になります。
たとえば、昨年は1000ドル=7万8480円で購入できたバッグが今年は1000ドル=9万7550円となり、ドルでは同じ価格のものでも1万9070円も多く支払わなければならなくなったということなのです。
このような円安の進行が、ショッピング目当てに海外を訪れる旅行者の意欲を減退させたとしても不思議なことではないでしょう。
JTBでは、今年の夏休みの海外旅行者数を5.8%減の260万人と予測しています。