マーケティング/マーケティング事例

プレイス戦略から見るAppleの強さの秘密(2ページ目)

Appleの快進撃が止まりません。iPhoneやiPadを武器にスマートデバイス市場を席捲するAppleですが、高度なマーケティング戦略を駆使して売上を伸ばし続けています。一見、派手なプロダクト戦略に目を奪われがちですが、Apple Storeを中心にしたプレイス戦略もアップル躍進の大きな立役者といえます。今回は実際にApple Store銀座店を取材し、多くのファンを虜にするAppleのプレイス戦略に迫っていきます!

安部 徹也

執筆者:安部 徹也

マーケティング戦略を学ぶガイド

プレイス戦略成功の秘訣3:顧客の買いたい時を逃さない

Apple Storeの製品展示フロアは、ただ単にiPhoneやiPadなど新製品を体験できる機能を提供するだけではありません。

実際にApple製品を触って欲しいという気持ちが高まれば、その場で簡単に購入ができるのです。

担当スタッフは、来店者からの依頼があればその場でiPod Touchに取り付けられたら専用のクレジット決済端末で支払いの手続きを済ませます。つまり、来店客はすぐに商品を持ち帰ることもできるのです。

また、アクセサリー類などは自分のiPhoneに専用のアプリをダウンロードしてバーコードを読み取れば、Appleのアカウントに登録している自身のクレジットカードから支払われるセルフ決済の仕組みを提供しています。

通常の支払いはスタッフに任せたり、レジに商品を持って行ったりしなければいけませんが、このiPhoneアプリを利用すれば、自分で支払いを簡単に済ますことができます。

数多くの人が訪れるApple Storeでは、レジの待ち時間が長くなることも予想されますが、待ち時間の長時間化による顧客満足度の低下を避ける意味でも重要な対策を抜かりなく施しているのです。


プレイス戦略成功の秘訣4:売りっぱなしにはしない 

Apple Store

Apple Storeのシアターと呼ばれるスペースでは毎日Apple製品の無料講座が開催され多くのユーザーが参加する

一般的に、製品を売ったらそれで終わりという企業は多いといえるでしょう。

「釣った魚には餌はやらない」という言葉もありますが、多くの企業の関心はいかに購入してもらうかにあり、一旦購入してもらえば関心は次の新規顧客に向かうというわけです。

ただ、市場が成熟して新規顧客を獲得することが難しい時代には一度取り引きいただいたお客様にファンになってもらい、何度も購入してもらえるかが成功の鍵を握ります。

つまり、釣った魚にも餌を与え続け、どんどん関係を深めていく必要があるのです。

この点、Appleのアフターサービスは徹底しています。

Apple Storeでは毎日シアターで初心者向けの使い方講座が無料で開催されているので、自分に興味がある講座あれば、ホームページを通じて予約を行い参加することができます。

また、より深い利用法をマスターしたい場合には、グループワークショップやOne to Oneトレーニングといったカリキュラムも用意されています。One とOneトレーニングは新しいMacをApple Storeやオンラインショップで購入した際に年会費として9800円を支払う必要がありますが、全世界どこのApple Storeでも利用できるという特典もあります。

さらに、技術的な質問があれば、Genius Barでスペシャリストからいろいろなアドバイスを受けることもできます。このGenius Barでは、アドバイスを求めて、なんと1日5万人以上のユーザーが全世界のApple Storeを訪れるそうです。


プレイス戦略成功の秘訣5:ワクワクする空間を提供する 

ストアを繰り返し訪れてもらうためには、ワクワクする空間作りも重要な鍵を握ります。

Apple Storeでは、とてもフレンドリーなスタッフがさりげなく声を掛けてくれるのでどんな初心者でも気兼ねなく最新のApple製品を堪能することができます。

また、Apple Storeのシアターでは、サプライズでAppleこよなく愛する芸能人などが参加して、Apple製品の魅力を語るイベントなどが開催されることがあります。会場のスペースに限りがあり、事前の告知は全く行われないイベントですが、運がよければ普段メディアを通してしか見ることができない著名人に遭遇することもできるでしょう。


このようにApple Storeは、“売り場”という枠を超えて、Apple製品普及の最前線基地として重要な役割を果たしています。Appleは、既成概念にとらわれないプレイス戦略でファンの数を益々拡大しているのです。

誰しもApple Storeに一歩足を踏み入れれば、Apple製品がここまで世界に広まった理由を肌で感じ取ることができるのではないでしょうか。
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