快進撃を続けるアップルのマーケティング
Appleの快進撃の秘訣を探るためにApple Store銀座店を取材してきました
意外と知られていないかもしれませんが、Appleの直営店舗である『Apple Store』は全世界に400店舗以上あり、その売上高は1兆円を優に超すレベルに達しています。販売効率も非常に高く、アメリカでの実績は1平方フィート当たりの年間売上がおよそ6000ドルと、小売業では2位のティファニーの3000ドルを大きく引き離してダントツの販売力を誇っているのです。
Appleが、アメリカのバージニア州マクリーンにあるTysons Corner CenterにApple Store1号店をオープンしたのが、2001年5月19日。誰もがその成功を疑った中での船出でした。
専門家の中には、当時のAppleの市場シェアがわずか2.8%であり、“顧客が限られ過ぎること”、また不景気で低価格パソコンのシェアが高まる中、“Apple製品は価格が高過ぎること”、そして直営店経験のないAppleが“店舗維持コストを甘く見すぎること”などを指摘し、Apple Storeの前途が多難なことを示唆する者まで現れました。
しかし、当時のスティーブ・ジョブズCEOは大方の予想に反して、Apple Storeを成功に導きます。
果たして、その成功要因はどこにあったのでしょうか?
今回は、Appleのプレイス戦略成功の秘訣を分析していくことにしましょう。
プレイス戦略成功の秘訣1:立地には妥協しない
Apple Storeはいずれもその都市の最も注目を浴びる場所に立っています。たとえば、ニューヨークであれば5番街、パリであればルーブル美術館やオペラ座の近隣など大都市の中でも注目を浴びる場所を選んで出店してきました。日本での1号店は銀座のど真ん中。日本でも最高の立地にオープンすることによって、初日から店舗の周りには長蛇の列ができ、多くの来店客が詰めかけました。
銀座は従来から日本の情報発信基地として、古くはマクドナルド、最近ではH&Mが1号店を出店して、ブランドを日本中に浸透させるのに格好の場所とされてきました。
同じようにAppleも銀座に初めて出店することにより大きな反響を得て、ブランドイメージを高めることに成功したのです。
1号店が計画通りの成功を収めたAppleは日本各地にApple Storeを展開していきますが、その数はわずか7店に留まります。
Apple製品への需要は非常に高く、日本国内での売上をさらに上げるためには出店数を加速度的に増やしていくという選択肢もあるのでしょうが、Apple Storeは数を追うよりも立地にこだわり、大きなインパクトのあるプレイスでなければ、敢えて出店する必要はないと考えているのです。
プレイス戦略成功の秘訣2:手にとって実際に体験してもらう
Appleの製品開発は、顧客のニーズを調査することなく、プロダクトアウトで社会を変革していく製品かどうかを基準にして開発され、市場に投入されます。ハイテク製品は、「このようなモノがあったらいいな」というニーズが顕在化されているものではなく、顧客自身が実際に手に取るまで想像もつかない製品こそが、真の意味で求められているからです。
Appleはこの独自のポリシーで、常にこの世にこれまでなかったワクワクするような新製品を常に市場に投入し続けてきました。
ところがこのようなプロダクト戦略では、これまで誰も経験したことのない製品だけに、消費者に対して口や写真で説明しても理解の域を超えているという問題に直面します。
そこで、自社製品を販売するために重要な鍵を握るのが、実際に製品に触れてその便利さや楽しさを実感することができるプレイスなのです。
Apple Storeでは、全世界共通のシンプルなインテリアスペースにできる限りの数多くの製品を並べ、実際に来店客に自由に体験してもらうスペースを設けています。
体験フロアには製品を並べるだけでなく、初心者にも実際に手に取って存分に体験してもらうために、使用法や質問に対応する多くのスタッフが待機し、来店客のサポートを行っています。
まだまだAppleのプレイス戦略の成功の秘訣に迫ります!次のページへお進み下さい!