鉄サプリで体にダメージ?
症状から自己判断していませんか?
不調として表れる症状は同じですが、貧血にもいくつかの種類(鉄欠乏性貧血、巨赤芽球性貧血、溶血性貧血、再生不良性貧血など)があり、最も多いのが鉄分不足による鉄欠乏性貧血です。そのため、「貧血=鉄分補給」というイメージも定着して、貧血を疑った時、一番最初に試したくなるのが鉄分サプリですよね。
ただ、自己判断でサプリで鉄分補給を始めるのはちょっと待ってほしいのです。もし、鉄欠乏性以外の原因で起きている貧血だったら、鉄分だけを摂っても改善につながりません。それに、その鉄サプリが体にダメージを与えることもあるのです。無駄なお金を使って、体を傷つけないためにも、鉄サプリとの付き合い方と、製品選びをもう一度見直してみましょう。
鉄サプリを買ってしまう前に、まずは血液検査を受けることが大切です。
どう読む?血液検査
ヘモグロビンとフェリチンは、現金と貯金のような関係
※似た名前のヘモグロビンA1c(Hb A1c)は糖尿病の診断の目安になる検査値です。
でも、「ヘモグロビンの値が正常だったから、貧血の心配はない」と考えるのはまだ早いのです。ヘモグロビンの検査では、血液の赤血球にある、鉄を含んだたんぱく質(ヘモグロビン)の量がわかります。ヘモグロビンは、酸素を運搬する能力を持った状態の鉄で、家計で考えると「財布の中の現金(すぐ使える状態のお金)」みたいなものです。
これに対して、体の中には「銀行にある貯金」のような存在の鉄があります。それが貯蔵鉄と呼ばれる鉄で、フェリチンというたんぱく質と結合した状態で普段は肝臓の中に貯めてあります。血液中のヘモグロビンが減ってくると、フェリチンが鉄を運んで補給してくれるのです。フェリチンの量は、鉄の貯蔵量を知るバロメーターにもなっています。この貯蔵鉄のおかげで、私たちの血液のなかの鉄分はちょうどいい量を保っていられるのです。
鉄分不足による貧血の心配があるかどうかは、ヘモグロビンとフェリチンの両方を調べて初めて正確にわかります。ヘモグロビンの量は、貯蔵鉄が空っぽに近くならない限り一定に保たれているので、通常の血液検査ではギリギリになるまで発見できないのです。これが隠れ貧血と呼ばれる状態。預金残高を見ずに生活して、財布のお金が少ないことに気付いた時には貯金もないという状態と同じです。
逆に、貯蔵鉄が十分ためてある人(受診した医療機関の基準値を見て判断してください)が鉄分を補給することは、将来使わないお金までせっせと貯金しているようなものです。それだけならいいのですが、貯蔵鉄がたまり過ぎると、銀行口座には入りきらなくなります。すると、余った鉄がそのまま血液にあふれ出し、それが血管の壁や肝臓を傷つける原因になるのです。
フェリチンの検査は、一般の血液検査の項目には含まれていません。調べたい場合、通常受ける血液検査に+1000~3000円程度の費用がかかります。ただ、自己判断で本当は要らないサプリを買うくらいなら、しっかり調べてから必要な時にサプリを買う方が損せずにすみそうです。
鉄分サプリを摂って損しないのは、ヘモグロビンが少なくて貧血気味な人と、ヘモグロビンは正常だけどフェリチンが少ない人だけです。