香水の成分と出来るまでのプロセス
香水の成分とは?
香水は、数十種類の香料をブレンドしてできた芸術品で、香料、エタノール、精製水を混ぜ合わせることによってつくられます。
香水を創り出す中で最も重要になるのが、香りの元となる「香料」です。
天然香料は約200種類、合成香料は約3000種類を超えるくらいあると言われ、それらの香料を使い、数十種類の香料を組み合わせていきます。作り方はとても簡単です。ブレンドした数十種類の香料にエタノールを入れ、ゆっくり混ぜます。次に、精製水を加え更によく混ぜると香水が完成します。
調香のプロセス
私達の日常生活を少し意識的にみてみると、様々な香りに囲まれて暮していることがわかります。それらの香りは、調香師が生み出した芸術品です。
調香をする手順として、まず、自分が創りたいと思う香りのイメージを具体的に描き、そのイメージを出来る限り言葉にし、ストーリーをつくります。
次に使用する香料とその配分を決めます。基本的な処方の目安としては、トップノート15% 、ミドルノート30~70% 、ラストノート15%~55%を使用します。
一般的にトップノートには柑橘系やグリーン系など揮発しやすい香料を使い、ミドルノートは、「香水のハート(核)」となるので、イメージをより表現できるような香料を使います。ラストノートには、動物性香料や樹脂系など持続性のある香料を使います。
香りは1~2週間熟成させると、香料同士がなじみ、香りの印象が変わりますので、時間をおいて香りを確認することも大切です。熟成した香料は、ムエット(賦香紙)に付けて香りをチェックし、イメージ通りの香りになっているかをチェックします。
天然香料と合成香料の違い
天然香料とは、花や果実、樹木や枝、葉や茎など、さまざまな部位から採れるものをさします。また、天然香料は、産地や気候、素材の種類や部位、製造方法や製造条件などによって、それぞれ異なった生成物が出来上がります。私はエジプトで香料を仕入れていますが、例えば同じバラの花でも、花の積む時期や、そのバラの状態や気温や湿度、使用する窯の温度や水の量によっても、香りが少しずつ異なります。
一方、合成香料は、産地や気候などによって、高価な天然香料に比べて大量生産が出来て安価で安定した供給ができるので、現在では数多くの合成香料が一般的な香水に使用されています。
薔薇の香料が高価な理由
薔薇は「精油の女王」と呼ばれ、エレガントでゴージャスな香りがとても印象的です。
更に、1gの精油を採るために、約2000個のバラの花が必要といわれ、大変高価な精油としても有名です。
これは、花びらを育て収穫し抽出するまでの人件費などがかかるのに対し、抽出した時のオイルの量が少ないこと、そしてバラの需要が多いことから、とても高価なのです。
古代エジプトのクレオパトラをはじめ、中世ヨーロッパの貴族たちなどにも愛され、現在でも多くの女性を魅了しています。
天然香料の分類
同じ品種でも、抽出方法によってさまざまな香りが生まれます。大きく分けて、精油、コンクリート、アブソリュート、レジノイド、オレオレジン、チンキ、バルサムと分類されます。1.精油
・圧搾法・・・柑橘系などの精油の採集に使用し、果皮を圧搾して精油を得る方法
・水蒸気蒸留法・・・水蒸気を伴わせ蒸留し、留出させる方法
2.コンクリート
・冷浸法・・・低温で獣脂表面に花を浸して抽出する方法
・温浸法・・・温めた獣脂に花を浸して抽出する方法
・溶剤抽出法・・・ヘキサンや石油エーテルなどを使用し、花香成分を抽出する方法
動物性香料「アンバーグリス」
アンバーグリスは、抹香鯨の胃や腸にできる病的結石で、イカを食べる抹香鯨の体内にイカのくちばしなどが蓄積して結石となり、体外へ排出します。この塊が“灰色の琥珀”と呼ばれる、アンバーグリスです。長い年月海上を浮遊している間に、海水や日光や微生物などにより異臭が除かれ、芳香を放ちます。9世紀ごろアラビアから中国に渡ったアンバーグリスは、中国の神獣である“龍(ドラゴン)”と結び付けられ、龍のよだれが固まったものに違いないとして『龍涎香(りゅうぜんこう)』という名前がつけられました。
以前、テレビの番組で砂浜に打ち上げられたアンバーグリスを鑑定するというシーンがあり、あまりの高値に驚いたことがありました。捕鯨が禁止されている今となっては、この香料はさらに希少価値が高く大変高価な香料となっています。
植物性香料「ベルガモット」
紅茶のアールグレイの香りづけとしても有名なベルガモット。
このベルガモットという名前は、最初に栽培されたイタリアの「ベルガモ」という都市名に由来するそうで、比較的暑さに強く寒さに弱いデリケートな木です。ビターオレンジの木にマンダリンオレンジを接木し栽培するとベルガモットになるそうです。
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