「モラルハラスメント(モラハラ)」とは
何気なくかける言葉が、モラハラになっていることも……
お母さんは夫を怒らせてはいけないと、化粧もそこそこに、あせる気持ちで家中のカギをかけて回ります。しかしお父さんは待ちきれず、大きく2~3回クラクションを鳴らします。せかされたお母さんは、慌てて助手席に乗り込みましたが、運転席のお父さんは、「まったく、 いつものろまだな。グズならグズなりに、なんで昨日のうちから準備しておかないんだ!」とつぶやくのでした――
モラルハラスメント(モラハラ)は、こんな日常の何気ないやりとりのなかでも、しばしば見られるものです。身近な誰かの行動の中に非難できるポイントを見つけ、そこを陰湿に指摘するなどして、相手の価値を貶めるのが加害者の常套手段です。加害者は相手を見下すことで、優越感に浸ることができます。
こうしたモラハラは、家庭の中だけで起こるものではありません。友人や恋人との関係でも起こりますし、職場内の優越性を利用した嫌がらせ(パワハラ)、性的嫌がらせ(セクハラ)も、モラハラの仲間です。
<目次>
モラルハラスメントから逃れられないのはなぜか
家庭や職場、モラルハラスメントはどこでも起こる
こうした操作にはまり、被害者が自己を責めてしまうと、加害者の支配から抜け出すことができなくなります。しかも、加害者は「ダメなあなたを 受け入れてあげられるのは、自分くらいなもの」と、自分が唯一の理解者であるかのように思わせたり、相手が離れようとすると「恩知らず!」などと罪悪感を植えつけたり、急に優しい態度やへりくだった態度に変えたりすることもあります。
こうした被害を受け続けると、抑うつや不安、混乱、緊張が続き、心の病を発症してしまうこともあります。このようなリスクを避けるためにも、モラハラの被害に早めに気づき、加害者から距離を置く必要があります。それには、まず加害者の特徴を知っておくことが必要になります。
どんな人がモラハラをするの?
加害者が自分の行為に気づかないのはなぜか?
- 自分が優位に立ち、賞賛が得られないと気がすまない
- 他人の気持ちに共感することや、心を通わせたいという気持ちがない
- 他人をほめることをしない。欠点をあげ、悪口を言うことが多い
- 自分の考えや意見に異を唱えられることを嫌い、無条件に従うことを要求する
- 自分の利益のために、他人を利用する
- 自分は特別な人間だと思っている
モラハラ的な言動を受けたときには、「解決不可能な問題」と決めつけず、まず「そんなことを言われたら傷つく」という自分の気持ちを伝え、相手とじっくり話し合うことが大切です。
とはいえ、加害者には自分の言動のハラスメント性に無自覚な人が少なくありません。それは、物事を自分に都合よく解釈してしまうためです。そうすることで、人を貶めなければ自尊心を保てないという自分の弱さに直面することを避け、自己を防衛しているのです。したがって、被害者が加害者の心を変えようと努力しても効果は薄く、疲弊してしまうことが少なくないのです。
モラルハラスメント加害者の手法・その行為から逃れる方法
変わらない相手とは、距離を置くことが必要なことも
- 政治的な意見や趣味など、相手の考えを嘲弄し、確信を揺るがせる
- 相手に言葉をかけない
- 人前で笑い者にする
- 他人の前で悪口を言う
- 釈明する機会を奪う
- 相手の欠陥をからかう
- 不愉快なほのめかしをしておいて、それがどういうことか説明しない
- 相手の判断力や決定に疑いをさしはさむ
『モラル・ハラスメント』(マリー=フランス・イルゴイエンヌ著・高野優訳/紀伊国屋書店)より
もちろん、上記のような特徴を多少持ち合わせていても、すべての人がモラハラの加害者になるとはかぎりません。たとえば、精神的にまだ未熟な人や挫折を知らない人は、尊大な態度で他人を傷つけてしまうこともあるでしょう。その人に自己中心的な部分があるとしても、少しでも他人を認めたい、共感したいという気持ちがあれば、いずれは精神的に成長し、思いやりが育っていくと思います。
しかし、何度交渉しても変わらず、自己満足のために他人を利用するような人からは、早めに距離をおいた方が賢明だと思います。どうしてもその関係から抜け出せない場合には、相手との交流を減らすことで、自分を守っていくことも必要なのではないかと思います。
モラハラ経験者へのインタビュー記事「モラハラ夫からの離婚体験談(当事者インタビュー)」や「離婚で変わる?モラハラ夫からの脱出経験者の声」も宜しければご参照ください。
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