京フレンチの新時代「レストラン MOTOI」
「MOTOI」の外観
ちょうど御所の南側あたり、丸太町通と御池通に挟まれた界隈を歩くと、京の町中でありながら観光化され過ぎることなく昔ながらの町家も多く残っていてホッとさせられます。そんな町家の中でも大正時代の呉服屋であった格別な一軒が、今年2012年の初めに京都ならではのフレンチレストランとして変貌を遂げました。その名は「
レストラン MOTOI(モトイ)」。シェフの前田元さんのプレノン(ファーストネーム)から名付けられたレストラン名です。
ワインはもちろん、シェリーも充実しています
三条河原町の老舗古書店に生を受けた前田シェフは、高校を卒業するとすぐに現リーガロイヤルホテル京都に就職。フレンチをやりたかったものの配属先は中華部門。ここで3年間みっちりと中華の基礎を叩き込まれ、さらに東京のホテルの中華部門で7年間腕を揮われた後、念願のフランスに渡られました。フランスではボーヌの一ツ星「ル・ジャルダン・デ・ランパール(Le Jardin desRemparts)」とブルゴーニュのサンスの二ツ星「ラ・マドレーヌ(La Madeleine)」で約1年間、スポンジのように多くを吸収し、帰国後は京都の「ピトレスク」や大阪の「HAJIME」でさらに多くを学んだ後、生まれ育った京都の町中で今年ついに独立を果たされたのです。
ダイニングから見える中庭
さて、南北に走る富小路通に面して掛けられた暖簾をくぐり、奥へと進んで右手の玄関を入った瞬間、100年前の古色のままの世界に足を踏み入れたかのように足が止まります。待合の正面、波打つ大正ガラス越しに見える前庭には、さらに歴史を遡る灯篭がしっとりと佇んでいるのです。
「MOTOI」の内観。ウェルカムプレートは伊賀の土楽窯に特注したもの
その左手に広がる黒土間風の床のメインダイニングは、ハッと息を呑むほどにスペイシャス! それもその筈、元の町家の各部屋間のしきりを取り払っただけでなく、一階の天井を梁だけを残してぶち抜き、階段も取り外して、遥か2階の屋根まで拡がるひとつの大きな空間に仕上げてあるのです。
聴こえるか聴こえないくらいに音を抑えたジャズピアノが流れるメインダイニングのど真ん中には見とれるほどの大フラワーアレンジメントが置かれ、シェフが惚れ込まれた若手作家の手になる壁際の焼き物モニュメントも印象的です。
蔵を改装して作られた個室
突き当たりには、これまた見事な石と灯篭の裏庭。そのまた奥には個室として使える京町家お決まりの「蔵」(個室として利用可能)が鎮座しています。
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