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都心で散在する定借マンション 今は買いか?<後編>(2ページ目)

分譲マンションの特徴として、マンションは一戸建て住宅と異なり敷地の持ち分割合が少なく、その敷地と建物を別々に売却することもできません。つまり、敷地が所有権であることに絶対的な意味(価値)はないのです。そう考えてみると、定借マンションを選択肢から排除することは得策といえません。

平賀 功一

執筆者:平賀 功一

賢いマンション暮らしガイド


定借マンションの分譲価格は平均2455万円 地代は月額1万3809円 

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定借マンションは毎月1万4000円弱の地代負担を強いられる。

しかし半面、メリットがあればデメリットもあるのが世の常。借地権マンションの適正な評価を図るには、内在するリスク要因についても把握しておかなければなりません。このマイナス要因を克服できるかが成否の分かれ目となります。

定借マンションならではの「制約」として、次の6つの懸念材料が挙げられます。

  1. 地代や解体準備金の支払いが、管理費や修繕積立金とは別に毎月、発生する
  2. 経済情勢によって地代が値上げされる心配がある
  3. 借地権マンションの二次市場は未成熟のため、いざ売却しようとした際、所有権マンションに比べて売りにくいことが考えられる
  4. 住宅ローンの利用者にとっては、利用できるローン商品が限定される可能性がある。特に、二次流通(中古の借地権マンションを住宅ローンを借りて購入しようと考えている人)においては懸案事項となる。
  5. 契約期間が満了すると、その後の更新は一切認められず、建物は解体・更地にして地主に返還しなければならない(何の特約もない場合)
  6. その解体費用は全額、マンションの区分所有者全員で負担しなければならない

国土交通省の「全国定期借地権付き住宅の供給実績調査(2009年度)」によると、定期借地権マンションの分譲価格は平均2455万円(専有面積86.6平方メートル)、地代は平均で月額1万3809円となります。借地期間は平均57年1カ月なので、単純計算すると借地権マンションの買い主が負担する地代は総額で約946万円となります。

<定期借地権マンションの平均像>
 ・分譲価格 : 2455万円
 ・専有面積 : 86.6平方メートル
 ・月額地代 : 1万3809円
 ・借地期間 : 57年1カ月

国交省の調査では、解体準備金の有無について全体の85.7%が「あり」と回答しています。イニシャルコストの安さと引き換えに、ランニングコストの高負担が定借マンション購入者に重くのしかかります。購入者にとっては、かなりの重荷となるでしょう。この高負担に耐えられるかどうかが、定借マンションの購入適否を二分する分岐点となります。

契約終了後、更地にせず建物を地主へ譲渡するスタイルに期待が寄せられる 

これまで定期借地権マンションといえば、土地を取得しないことによって住宅を廉価で取得できる点が最大の魅力とされてきました。前述したように、所有権マンションに比べて平均で2割程度安くマイホームを手に入れることができるわけです。

ところが、近年は土地取得を必要としないことによる余裕資金を住宅(建物)と住環境の質の追求に振り向ける傾向が見て取れます。領事館や大使館が多く設置された由緒ある土地「南麻布」に同時期に2つの定借マンションが登場するのは、決して偶然ではありません。「住環境の追求」=「定借マンションの魅力」にほかならないと、私ガイドは考えます。

さらに、新しい傾向として契約期間終了後、更地にせず建物を地主へ譲渡する契約スタイルが目に付くようになりました。国交省の調査では、期間満了時の「無償譲渡特約」に関し、67.5%が「特約あり」と回答しています。本来、建物は取り壊して更地にし、地主へ返還するのが大原則ですが、満了後も建物はそのまま温存するマンションが散見され始めています。「プラウド南麻布」も、その中の1つです。

 最後に、まとめとして本コラムの主題である定借マンションは今、買いか?――

私ガイドは、地代負担や売却・賃貸時の地主への承諾など、内在するリスク要因を十分に理解したうえで購入するのであれば、お値打ち感のある買い物ができると考えています。「安いなりの理由」が分かっていれば、失敗にはつながりません。

大切なことは「聞いていない」「知らなかった」という無知・情報不足に陥らないことです。一戸建て住宅ならまだしも、分譲マンションは敷地の持ち分割合が少なく、その敷地と建物を分離処分(別々に売却)することもできません。敷地が所有権であることに絶対的な意味(価値)はないのです。契約満了後の建物譲渡特約が付加されていれば、その後も賃借人として住み続けることが可能です。所有権に固執しすぎることは得策ではありません。

以上より、居住スタイルの新たな選択肢として、定借マンションは十分に一考に価すると、私ガイドは考えます。


【関連コラム】
あえて「定期借地権マンション」という選択 
都心に散在する定借マンション 今は買いか?<前編>
都心に散在する定借マンション 今は買いか?<後編>(本コラム)

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