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都心で散在する定借マンション 今は買いか?<前編>(2ページ目)

定期借地権が誕生して今年でちょうど20年。今、借地権マンションが都市部を中心に散在するようになっています。どうやら住宅観の変化とも無関係ではなさそうです。ただ、定借マンションは所有権マンションにない「制約」を受けることになります。その点は心配ないのか、それでも「買い」と言えるのか?―― そこで、本コラムでは2部構成で、その魅力と課題を考察してみることにします。

平賀 功一

執筆者:平賀 功一

賢いマンション暮らしガイド


転借地権とは“また貸し”された借地権のこと  三つ巴の関係が出来上がる

イメージ写真

借地権マンションでは「売り主」「買い主」そして「地主」の3者が存在する。

引き続き、借地権マンションの価値評価が正しくできるよう、借地権の仕組みについて勉強していきましょう。ここでは「転借地権」について解説することにします。

マンションを売買するにあたり、土地建物どちらも所有権の分譲マンションでは、取引関係者として登場するのは「売り主」と「買い主」の2者だけです。一方、敷地が借地権のマンションでは「売り主」と「買い主」のほかに「地主」が存在し、この3者によって取引が行なわれます。その結果、下図のような三角関係が出来上がることになります(図表4)。

借地権マンションの相関関係図

 

  • 地主=借地権設定者:マンションの敷地に借地権という権利を設定している者
  • 分譲業者=借地権者:借地権という権利を有している者
  • 購入者=転借地権者:借地権という権利を借地権者から“転貸借”している者

専門的な用語が並び、難しく感じるかもしれませんが、要は地主から借り受けた敷地(借地権)を今度は分譲業者が購入者へ“また貸し”しているのです。そして、また貸しされた借地権のことを転借地権といいます。「転」というのは転貸借の「転」というわけです。

クッション役を介在させることで、三者関係の良好な維持が図られる

一体なぜ、このようなスキーム(枠組み)になるかというと、分業業者が地主と購入者の間に入ることで、両者の利害調整をスムーズにする機能を持たせるためです。たとえば、定借マンション(賃借権)を賃貸に出そうとした場合、地主の承諾が必要になりますが、その際、地主と購入者が直接会って話し合うことはありません。分譲業者が地主の“代理役”となって購入者と直接やり取りするのが一般的です。

前ページで触れた「パークホームズ南麻布」の地主はNTT東日本、「プラウド南麻布」はフランスが地主となっています。そのため、マンションの所有者は自宅を売却しようとした際、NTTあるいはフランスの承諾が必要になるわけですが、実務レベルでは「パークホームズ南麻布」では三井不動産レジデンシャルが仲介役となり、また、「プラウド南麻布」ではSPC(※)が仲介役となり承認手続きを代理します。

 ※「プラウド南麻布」プロジェクトのために特別に設立された目的会社のこと

分譲業者などが借地権の契約期間中、常に「窓口係」として介在することで、事務処理の円滑化やトラブルを低減させるのが狙いです。管理会社がいても、その管理会社が地主と直接、折衝することはありません。
                     ☆  ☆  ☆  ☆  ☆

バブル崩壊から20年、そして資産デフレは10年にも及んでいます。土地神話は過去のものとなり、マイホームには「収益性」と「利便性」が求められるようになっています。その間、われわれ日本人の住宅観も大きく変化し、「資産価値」=「利用価値」という等式が定着している印象を受けます。「あえて賃貸」という選択が一定の市民権を得ているように、所有権絶対主義が薄れつつあることは間違いないでしょう。

ただ、借地権マンションが定着したとは言い難く、流通市場(物件売却)も未成熟です。さらに、借地権マンションに内在するリスク要因を十分に把握できているかどうかも疑問です。「転借地権」の特徴をきちんと理解している人がどれほどいるか?―― 正直、不安が残ります。

それだけに、借地権マンションの検討者は「しまった。こんなはずでは…」とならないよう知識武装しておくことが不可欠です。借地権マンションの長所・短所を正確に認識しておかなければなりません。価格だけに目を奪われては失敗のもとです。

 そこで<後編>では、借地権マンションの魅力と課題を具体的に再考することにします。


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あえて「定期借地権マンション」という選択 
都心で散在する定借マンション 今は買いか?<前編> (本コラム)
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