正式名称は「アークヒルズ仙石山森タワー」
かねてより注目を集める「虎ノ門・六本木プロジェクト」(事業名称「虎ノ門・六本木地区第一種市街地再開発事業」)の正式名称が先々月末、発表になった。「アークヒルズ仙石山森タワー」。森ビルの大型再開発第1号となる「アークヒルズ」を冠したとは少々意外だったが、“タウンからゾーンへ”と聞けば、なるほど頷ける。というのも、2014年には「環状2号プロジェクト」(虎ノ門1丁目)が竣工予定。「アークヒルズ」に隣接する「21・25森ビル建替計画(2013年竣工予定)」を含めると4つの大型プロジェクトがほど近い場所に集まる格好となるからだ。「アークヒルズ仙石山森タワー」の現地は、港区虎ノ門5丁目と六本木1丁目にまたがったロケーション。「ホテルオークラ」を南下し「スウェーデン大使館」の南隣だ。約1.5haの広大な敷地は南に向かって傾斜している。ちょうど、台地の先端にあたる地形である。
そこに、地上47階建ての複合棟と地上8階建ての住宅棟とを建設。複合棟は3~24階が住宅、25~47階がオフィスになる。住宅フロアが「アークヒルズ仙石山レジデンス」と名付けられ、分譲と賃貸を選べる。住宅棟は「アークヒルズ仙石山テラス」といい、従前から所有されていた方々の権利床として充当。竣工は今年8月の予定。
2種類の制振。デザインは「シーザー・ペリ」氏を起用
建物全体の特徴は、大きく3点。まずひとつは構造面での防災対策だ。今回森ビルは、「粘性体制振壁(風揺れと大地震の揺れ対策)」と「ブレーキダンパー(大地震の揺れに効果)」の2種類の制振を採用。さらに、2004年10月新潟県中越地震で起こった「六本木ヒルズ」のエレベーター損傷事故の原因となった「超周期地震動」にも効果を発揮するように設計されている。次に、ガスを燃料とする非常用発電装置を備えたこと。森ビルは東日本大震災の直後、「六本木ヒルズ」の地下発電施設で発電した電力を東京電力に売電したことで話題になった。今回は、非常時の発電量が最大想定負荷の85%程度(オフィスフロア)までまかなえるという(住宅に関する非常用発電の対象は、共用部及び非常用エレベーターと一部の常用エレベーターなど)。防災対策をより強化した建物になる。
最後は、「シーザー・ペリ」デザイン監修の建物形状だ。四隅が曲線で、棟上部に向かってやや縮小していく柔らかな印象のビルディングは、相当に個性的といえよう。半透明な色合いも独特。真四角の建物が密集するビル群の中にあって、ひときわ目の引く存在になるだろう。「環状2号プロジェクト」も負けず劣らずのデザインになる予定だが、近い将来この2棟が「都心の位置」を示す象徴となるに違いない。