「壁式免震」とは?
目白ガーデンヒルズ
マンション名は「目白ガーデンヒルズ」。住友不動産が売主、日建設計が設計、鹿島建設が施工を担当した。柱と梁のない正体は、「壁式免震」構造である。一般的な壁式構造は3階から5階程度が限界とされているが、地面と絶縁して地震力を直接建物に伝えにくくする免震の採用により、建物の構造計算を通常の耐震構造よりも緩和できる特性を用いた。おかげで、11階建てながら、壁式構造ならではの、開口部の大きなすっきりとした外観に仕上がったのだ。
震災以降、免震構造はこれまで以上に注目を集めている。しかし、その効果は地震力の低減だけに関心が集まっているようで、このような中高層における壁式構造の採用や、ラーメン構造であっても柱や梁を細くできる利点を持ち合わせていることは、まださほど知られてはいないようだ。室内において出っ張りがない(あっても抑制している)ため、使いやすく無駄のない空間になる。構造の選択は耐震性だけでなく、居住空間にまで影響を及ぼす端的な事例であろう。
「壁式免震」はまだまだ極少
分譲マンションに免震構造がはじめて採用されたのは1994年。翌年の阪神淡路大震災以後、急速に広まったが、その歴史はまだ20年にも満たない。しかも、壁式免震のマンションとなれば、数えるほどしか例がない。都内でみても、先の「目白ガーデンヒルズ」(2006年)、「パークハウス本郷プレミアフォート」(2008年)、「加賀レジデンス」(2008年)、「桜プレイス」(2012年)と、数も少なくすべてここ6年ほどに出来たものばかりである。特筆すべきは、今年3月に竣工したばかりの「桜プレイス」を除く3物件が、「目白ガーデンヒルズ」と「パークハウス本郷プレミアフォート」は「グッドデザイン賞」を、「加賀レジデンス」に至っては「日本建築学会作品選集」に選ばれていること。いかに建築デザインとしても優れた建物であるかを実証している。
さて、遅かった今年の桜もようやく見頃を迎えた。先月竣工の「桜プレイス」はその名の通り、桜並木の真正面が現地。2.5mのフルハイトサッシから見る満開の桜はいかほどのものか。機能美を追求した真新しい居室の中から撮影した画像を次ページ以降に掲載してみよう。