経営統合による規模の拡大により、競争力の強化や収益機会の最大化を狙う
縮小するマンション市場をにらみ、合従連衡の動きが加速する。
まず、新日鉄都市開発と興和不動産が2012年10月に合併することを3月26日に発表しました。合併後は興和不動産を存続会社とし、「新日鉄興和不動産」となる予定です。都市部のマンション開発や分譲に強みを持つ新日鉄都市開発と、オフィスビルの開発・賃貸事業が中心の興和不動産が経営統合し、総合デベロッパーとして不動産業界での確固たる存在感を示したい考えです。財務基盤の安定やブランド価値の向上を目指すとともに、顧客基盤の拡大による収益機会の拡大も狙います。
また、マンション管理会社同士が業務提携するというニュースも飛び込んできました。日本ハウズイングと合人社ホールディングスが3月28日、業務提携に関する基本合意に達しました。その背景にはマンション管理業界ならではの危機感がありました。今後、ますます競争の激化が予想されるマンション管理業界において、その中で勝ち残り、企業価値を最大化させるためには、新たな顧客ニーズに応えるためのサービスを開発したり、業務の効率化による価格競争力の向上が欠かせません。そこで、両者が長年培ってきた「独立系」の強みや経験を相互利用し、競争力の一層強化に役立てたい考えです。
さらに、3月19日、大和ハウス工業が関西を中心にマンション管理事業を展開するグローバルコミュニティをグループ子会社化しました。マンション管理受託件数の拡大が狙いの1つです。こうした管理会社の買収劇については昨年12月、すでに有楽土地が不動産管理の大成サービスと今年4月に合併することを発表していました。どちらも「フロービジネス(不動産売買)」と「ストックビジネス(賃貸・管理業)」両方の収益基盤を持つことで、経営の安定を図りたい考えです。
マンション市場の本格回復を目指し、業界再編はさらに加速する
こうした業界再編の動きは、これまでにもありました。2010年5月にはライオンズマンションの大京が、経営再建中の穴吹工務店のスポンサーに名乗りを挙げました。それぞれが有する事業ノウハウや情報共有を通じた事業展開の可能性を検討し、また、請負工事業務の紹介なども行うとしています。振り返れば、この大京もオリックスの支援を受けて現在に至っています。バブル期に抱えた含み損を解消すべく、産業再生機構の支援を受けていた大京に対して、オリックスが再建に名乗りを挙げました。こうしてオリックスの支援により再浮上した大京が、今度は逆に支援企業として穴吹のスポンサーへと手を挙げたのです。まさに“もちつもたれつ”といったところでしょう。
その他、オリックス“つながり”では、ジョイント・コーポレーショが総額100億円の第三者割当増資を同社に引き受けてもらい、2008年、資金繰り支援を受けています。これにより、オリックスはジョイントの筆頭株主となりました。
前述したようにマンション市場は震災ダメージを克服し、回復経路には復しています。しかし、とはいえ本格回復には至っていません。あくまで「マイナス」が「ゼロ」に戻っただけです。それを「プラス」へと好転させるには、業界全体の再編が必要となります。