ゴルフとウイスキーの嘘
St. Andrew's
(撮影/川田雅宏)
St. Andrew's
スコッチウイスキー 1/3
ドランブイ 1/3
オレンジジュース 1/3
シェーク
*ウイスキー2/4、ドランブイ1/4、レモンジュース1/4でボニー・スコットというカクテルになる。ボニー(Bonnie)は可愛らしい、といった意味。
Scotch Kilt
スコッチウイスキー 2/3
ドランブイ 1/3
オレンジビターズ 2ダッシュ
ステア/レモンピールを搾りかける
このふたつともスコットランドの酒場でオーダーしても通じないことが多い。とくにセント・アンドリュースはそうだ。おそらくアメリカやイングランドで生まれたカクテルだろう。
あるときドランブイについて書く必要が生じたのだが、このふたつのカクテルをかつてスコットランドのバーテンダーが知らなかったことを思い出し、エディンバラの友人にメールを送って、調べてくれと頼んでみた。
友人はとても熱心にあたってくれたのだが、ゴルフの聖地、セント・アンドリュース・ゴルフクラブのクラブハウスに聞いても、ドランブイが誕生したスカイ島のブロード・フォード・ホテルに聞いても、そんなカクテルは知らないとの返事だったそうだ。
まあこれらも、アメリカかイングランドあたりで生まれたカクテルなのだろう。どちらも甘みのあるカクテルだが、前者はジュースの酸味がいいバランスを保っていて飲みやすく、後者はビターズが味わいを締めている。
セント・アンドリュースといえばスコットランドの守護聖人であり、また同名の地にはゴルフの聖地、セント・アンドリュース・ゴルフクラブがある。このゴルフクラブ、当初は22ホールあったのだが、スタートの4ホールのコースが短くて面白味に欠けるということで、1764年に削って18ホールとなった。それを他のコースが一斉に真似て、18ホールが一般化したのだ。
申し訳ないが、なぜゴルフは18ホールなのかという理由で、18のホールをこなすと調度ウイスキーのスキットルが空になるから、なんて答えは酔っぱらい話にしか過ぎない。これはゴルフの世界ではよく知られていることで、真実は全英オープンのTV実況で、解説の戸張捷氏がしばしば丁寧に教えてくれている。
アメリカのSt.アンドリュース
Scotch Kilt
(撮影/川田雅宏)
よほどのウイスキー飲みでゴルフ好きの奴らの冗談話が、いつのまにか真実のように語られるようになったのだろう。可笑しくて憎めない。
最後にさらに余談。ゴルフではバーディ、イーグル、アルバトロスといった鳥の用語が使われる。これは1888年にアメリカはニューヨーク州ハドソン河畔に設立したその名もセント・アンドリュースGCに端を発している。
なんとそこはリンゴ園をコースにしたのだった。メンバーたちは「アップルツリー・ギャング」と揶揄されたが、リンゴの木が邪魔だからどうしても避けながらのプレーとなる。そこで空中戦が生まれ、鳥にたとえるようになった。
で、当初クラブハウスはリンゴの木の下。木の枝に弁当をつり下げてプレーし、またそこでウイスキーを飲んで交流を深めたのだった。その写真を見たことがあるのだが、なんだかほのぼのとしていて、おっさんたちが可愛らしい。
しかしながらアメリカという国は、ゲーム性を高めることに秀でている。
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