コーチング/人材育成・組織作り

医療現場でも活用!コーチング・マネジメント(2ページ目)

コーチングはビジネスだけではなく、医療現場でも活用することができます。特に、医療チームのパフォーマンスを発揮させる上において有用なコーチング型のアプローチを紹介します。

平野 圭子

執筆者:平野 圭子

コーチングマネジメントガイド


人材育成を目的としたコーチングコミュニケーション

コーチング

医療スタッフと患者とのコーチングの活用に気をつけること

繰り返しになりますが、医療現場においては、指示命令のコミュニケーションが必要な場合があります。人命がかかっているときに「君はどう思う?」と聞くより、知識と経験から命令することが重要な状況は多くあることでしょう。

従って、これからご紹介するのは、スタッフの自発性や能力をより発揮できるようになる「育成を目的としたコミュニケーション」の例です。日々の業務の中で適切なタイミングで取り入れてみてください。

■話しやすい態度や言動をとる
見るからに話しにくい態度や空気をかもし出していませんか? 肩で風を切って歩いたり、大声を上げたりすれば、おのずと話にくくなります。リラックスした態度を見せる、目を合わせる、「最近どう?」などちょっと声をかけるなどして、相手が話しやすい雰囲気を作ることです。

■相手がうけとりやすい表現で承認する
話をしても安心であるという雰囲気を作るには、承認が最も早い方法です。「最近、よく整理してくれているね」「○○さんが君のことを頼りにしていると褒めていたよ」など、相手がやっていることを承認しましょう。「君ってすごいね」「優秀だね」など評価をしないよう注意。承認されると話しやすかったり、次に出きることを考え始めたり取り組んだりします。

■意見を聞く
トップダウンの環境に慣れている人にとって、自分の意見を言うのは難しいものです。そこで、「あなたの意見を聞いていますよ」というサインを送ることが大切です。ミーティングなどで、「君はどう思う?」「他の選択肢としてどんなことが考えられる?」など意見を促す台詞を用意しておき声をかけること。意見は言ってもいいものだ、というメッセージを伝えることです。

■相手によってコミュニケーションの仕方を変える
相手に考えさせたくて質問をする際、相手のタイプによって質問を使い分けていますか?「まず、君に考えを聞かせて」と少ない情報でアイディアを求めた方がいい人と、具体的なデータを渡した上で「君はこれを踏まえた上でどう判断するか聞かせてほしい」と判断を仰いだほうが有効な人がいます。日頃、その人の考え方や話し方の傾向をよく観察することです。そして、相手に合った形で意見を聞いたり、考えさせることです。

■コミュニケーションの時間をとることを心がける
一刻も争うような医療現場においては、当然日々のコミュニケーションはありますが、スタッフ一人ひとりの育成や関心ごとなどについて話す時間はそうあるわけではないでしょう。長く時間を取る必要はありません。ほんのちょっとしたタイミングで「仕事をしていてどう?」とか、「将来はどういうことをしたい?」など、ほんの一言でもいいので日々声をかけておくといいでしょう。これは、スタッフとの信頼関係を築く上でも有益ですし、スタッフ一人ひとりについてのデータベースを蓄積する上でも有効です。

このように日々のコミュニケーションを少し変えることで相手の意見や考えを聞くようになったある医師は、「今まで聞いたことがなかったけど、看護師の話を聞いて、自分よりはるかに細やかで専門的な知識や知恵を持っていることに気づいた」と感想を述べています。医療現場という縦割り構造はすぐに変えることはできないかもしれませんが、日常のコミュニケーションを変えることがお互いの自発性や能力の向上につながることは間違いありません。

医療現場におけるコーチングの注意点

ここまでは、医療スタッフとのコーチングの活用について取り上げてきましたが、対患者さんとのコミュニケーションでもコーチングが使える場面はあります。ただし、気をつけなければならないのは、患者さんとのコミュニケーションは医療行為でもあります。従って、患者さんに対してコーチングを使う際には医療とコーチングの専門的な知識を持っている人と相談しながら行ってください。患者さんへのコーチングは生活指導など、習慣の長期的な取り組み改善などに有用性があるといわれています。詳しいことは、研究発表などを参照してみてください。

<参考記事>
成功するチームが持っているメンバーの「役割」とは
指示待ち部下が自発的になるコーチング

<参考図書>
リハスタッフのためのコーチング活用ガイド(医歯薬出版)

<参考文献(医療研究論文)
Effect of coaching on psychological adjustment in patients with spinocerebellar degeneration: a pilot study

Analysis of subjective evaluations of the functions of tele-coaching intervention in patients with spinocerebellar degeneration


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