ストレートとニート
ストレート
もうひとつ同じ意味で、ニート(neat)という表現がある。イギリス生まれの言葉で、現在はスコッチの関係者やスコッチ・ファンくらいしか使っていないのではなかろうか。
日本でニートという語がよく知られるようになったのは1990年代。バーテンダーをはじめとした多くの日本のウイスキー・ファンがスコットランドの蒸溜所を訪ねるようになってからのことである。
ニートとは煌めく、輝くというラテン語のニテーレが元になっており、これが転じて「濁りのない」「混じりのない」といった形容になったとされている。
16世紀のイギリスではすでに使われていたようで、残念ながらウイスキーではなくワインがはじまりだった。輸入ワインに薬草や甘味料を加えて飲むのが当たり前だった時代、生のまま飲む場合にニートが使われた。
ウイスキーにしてもその昔は生で飲むに耐えられるようなものは少なかったともいえる。文献にもハーブや甘味料を混ぜて飲んでいたことは記されている。結果、悪酔いしたという記録も多い。
ケンタッキーとストレート
ストレートの表現は19世紀半ば以降のアメリカらしい。バーボンの産地ケンタッキー州で使われだしたようだ。ではストレートの表現が生まれた背景はというと、まあその昔はスコッチにしろバーボンにしろ玉石混淆だったのである。その典型がカクテルの「ミントジュレップ」だ。
アーリータイムズ・ベースのミントジュレップがケンタッキー・ダービーの公式飲料となっていることはよく知られているが、昔は暑気払いの清涼ドリンクとして、さらには荒々しい味わいだったバーボンをいかにおいしく飲むか、という意味合いもあったと言われている。
バーボン、シュガー、水またはソーダ、そしてミントの葉の材料がそれを物語っている。
いまストレートだ、ニートだ、と言って飲んでいるわたしたちは幸せだ。ウイスキーの香味は時とともに磨かれ、洗練されてきた。そして香りを愉しむシングルモルトはやはりストレートがふさわしい。氷で冷やされると、香り立ちは弱まる。ただし、無理してストレートで飲むこともない。オン・ザ・ロックでもいい。その人にとって飲みやすいスタイルで愉しめばいいのだ。
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