マーケティング/マーケティング事例

食べるラー油から学ぶPLCに応じたマーケティング戦略(2ページ目)

2011年3月7日、エスビー食品は新たな食べるラー油4種類を投入して、市場のテコ入れを図ってきました。昨年ブームの絶頂を迎えた食べるラー油市場。成熟期を迎えた現在、プロダクトライフサイクル(PLC)の観点から適切なマーケティング戦略を検証していきます。

安部 徹也

執筆者:安部 徹也

マーケティング戦略を学ぶガイド

成熟期は商品を差別化せよ!

プロダクトライフサイクルに応じたマーケティング戦略

成熟期には差別化するマーケティング戦略が重要になる!

2011年に入り、食べるラー油ブームは沈静化の兆しを見せ、今ではスーパーの店頭でも常時食べるラー油が陳列されるようになりました。売上はピークを過ぎてようやく成熟期に突入したことになります。

成熟期でマーケティング成功の鍵を握るのが差別化です。成長期では市場に商品を投入すればするだけ売上が上がる状況でしたが、成熟期では市場のパイが徐々に減少を始め、企業間の競争がピークを迎えます。成長期に参入した数多くの競合企業から似通った商品が市場に投入されるために、このままでは顧客の選択基準は価格のみになってしまいます。そこで、ブームが沈静化した市場では、製品で差別化を行ったり、プロモーションで差別化を行いブランドを高めたりする必要が生じてくるのです。

成熟期に突入した食べるラー油市場において、エスビー食品は次の一手として、著名なシェフが監修した『落合シェフのかけチャオ!イタリアンラー油』を始め、『のせタレ!ラー油ごま』『のせタレ!ラー油おろし』『のせタレ!ラー油ねぎ塩』の新たな食べるラー油4種類を一挙に投入しました。安価なプライベートブランドの参入で競争が激化する成熟市場で差別化を行って、市場での存在感を増すマーケティング戦略に打って出たのです。

衰退期は効率化が命!撤退を含めた検討も

現在成熟期に突入している食べるラー油市場。ブームはいずれ去り、今後食べるラー油が消費者の頭の中から段々と消えていくことが予想されます。すなわち、売上が急速に落ち込んでいく衰退期を迎えることになるのです。

衰退期では市場規模に対して、成長期に参入した数多くの競合企業が存在する状況となり、1社当たりの売上も急激に減少してきます。価格も低下の一途を辿りますので、コスト削減などの効率化を進めなければ、赤字に陥る企業も出てくるでしょう。衰退期には、すでに市場での認知度は十分なためプロモーションは控え、製品の品揃えを売れ筋に絞ったり、流通網もコストの観点から効率化を図ったりする必要があります。

このようなコスト削減を図ることによって、衰退期においてもマーケットシェアの高い主要なプレイヤーは利益を上げることが可能になります。一方で、成熟期までに一定のシェアを獲得できなかった企業は、コスト削減にも限界があり、場合によっては今後成長の見込めない市場と割り切って、赤字を計上する前に撤退の判断を下す必要も出てくるでしょう。

プロダクトライフサイクルを見極めて適切なマーケティング戦略を実施しよう!

今回は食べるラー油を題材に「導入期」「成長期」「成熟期」「衰退期」というプロダクトライフサイクルに応じたマーケティング戦略を検証してきました。

企業が扱うほとんどの商品やサービスには同じようなライフサイクルがありますので、自社の提供する商品やサービスのライフサイクルが今どの時期に差し掛かっているのかを見極め、ライフサイクルに応じた適切なマーケティング戦略を実施することにより、製品の寿命を延ばして自社の業績を極大化させることもできるでしょう。
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