ビジョンメイキングをいかに共有できるかが重要
ノンアルコール・ビールテイスト飲料「キリン フリー」
プロジェクトスタートから商品がリリースされるまでの間、どうやってモチベーションをクリエーターの方に高めていただき、どうやってキープしていましたか?
梶原さん:
1つは、ビジョンメイキングをいかに共有できるかを大切にしていました。今回開発をスタートしたときに、一番最初に自分たちで「こんな商品だったらいいな」ということを色々話しました。本音をさらけ出して、この商品がほんとにいいよねって、お互いに言い合うのはすごく大切なことです。自分たちのディスカッションの中から、ある程度キーになるエッセンスをクリエイターの方にお話します。その時に出てきたのが、すごい青臭い話なんですけど「世界平和」という言葉でした。
例えば、アルコールがないことで飲酒運転がなくなる。「それって平和だよね」とか「アルコールがないことで、もしかしたらアルコール依存症の人がいなくなるかもしれない。それっていいよね」とか「世界平和に繋がる商品だよね」とか。あとは、お酒とお客さまとの関係をもう一度洗い直す商品なんじゃないか、という話があったりだとか。
色々なキーワードをクリエイターさんにお話するのです。そういうことを繰り返していくうちに、「これって本当にすごい商品を開発しているんじゃないか」という気持ちがチームにわいてきます。
もちろん、中味開発の者と話してみても、彼らも想いを込めていて会社の使命に近いような商品だと思っていることがわかる。彼らは使命のような商品作りを、自分が会社の代わりにやらせてもらっているという気持ちでやったと感じています。「やっぱりあきらめるわけにはいかない」と。私も「これは絶対においしくしなきゃ。自分の力が足りないせいで、この社会的使命のある商品を失敗に終わらせるわけにはいかない」と思いました。
クリエイターさんからは「本当にこんなに画期的な商品はないよね」「それを伝える精一杯のお手伝いをしたい」と言っていただけました。そうした自発的なモチベーションが生み出すビジョンメイキングに時間をかけたことの意味は大きかったと思います。
メンバーのモチベーションが下がったときは対話する
ガイド:メンバーのモチベーションが下がった際に、やられたことってありますか?
梶原さん:
やっぱり話し込みですね。直接話に行きましたね。味の開発途中で、技術的に限界にきているっていうことは薄々感じてきていました。でもやっぱり味が満足なのかって言われたときに、「満足」とは言えない。技術者ももちろん持っているんですよ。100%満足じゃない。ただ、早く理想の味を完成させたいという気持ちもあるので、しっかり話し込んで「本当にこの味で大丈夫なのか?」と確認していました。
迷っているときやモチベーションが下がっているとき、もう一度お客さまの側に戻るのも大切なことです。確かに嗜好調査では点はとれているけれども、細かく見て、もうちょっと改善していけそうなところには、1つ1つ歩み寄っていきます。
「もしかしたら酸味はこうしたら低減できるのかな」とかアイデアが出てくる。そうなると、さらに新しい発想も生まれ気持ちも前向きになり、じゃあやってみようと動き始める。その動きの方向づけをしていき、あとは、現場の中味開発者が自らそれぞれ専門の立場で動いてもらうのです。