家の売却に関する契約が決まる前には、購入を申し込んだ相手といろいろな条件交渉が媒介業者を通じて行なわれます。前ページで説明した指し値交渉以外にもさまざまな条件提示がされ、その希望を受け入れるのかあるいは断るのか、あれこれと迷う場面もあるはずです。

それぞれの希望条件と指し値を見比べて総合的に判断をしたり、ときには駆け引きをしたりすることも考えなければなりません。

相手(買主になろうとする人)から出される希望の事例をすべて挙げようとすればキリがありませんので、ここでは比較的多くみられる主なものについて説明をすることにしましょう。


買主が住宅ローン特約を希望する場合は受け入れざるを得ない

数千万円の住宅を現金でポンと買う人は稀で、ほとんどの人は住宅ローンを利用します。もし万一、住宅ローンを借りられなかったときには契約を白紙解除するという「住宅ローン特約(融資利用の特約)」ですが、この特約が不要な買主はかなり限られます。

また、一般の住宅の売買において、この特約を付けることが現代では半ば通例となっていますから、住宅ローン特約を付けたいといわれれば、それに応じざるを得ないのが実情でしょう。


買換え特約を希望する買主への対応方法は?

家を売却するあなた自身が買換えのケースも多いでしょうが、あなたの家を買おうとする人もまた同じように買換えだったときには、少し厄介になることもあります。

買主がこれまで住んでいた家が一定期日までに売れなかったときに、あなたの家に関する契約を白紙解除するという買換え特約を希望されても、なかなか簡単には応じられないでしょう。

もし、この特約によって契約が解除されれば、あなたの新しい家の購入に関する契約のほうにも影響を及ぼしかねません。

住宅ローン特約が一般的なのに対して、買換え特約は(売主が個人の場合には)あまり普及しておらず、これを断ったからといって大きく不利に扱われることもないでしょう。買主側が「ダメもと」で希望を出していることも考えられます。

ただし、買主側が買換え特約を「絶対条件」として考えている場合には、これを断ることで契約が破談になることもありますから、実際に受け入れるのか断るのかはケースバイケースです。売却を依頼した不動産業者に状況やリスクをよく分析してもらったうえで判断をしてください。


耐震基準適合証明書の取得を求められた場合

住宅ローン控除や登録免許税の軽減措置などは、木造住宅の場合に原則として築20年以内であることが要件です。しかし、それより古い住宅でも建築士や指定確認検査機関などによる耐震診断に基づいて「耐震基準適合証明書」の交付を受ければ、税制上の優遇などを受けられます。

そのため、あなたの家が築20年を超えていれば、買主がこの証明書を求めてくるケースは十分に考えられます。耐震基準適合証明書を取得するためには10~15万円程度の費用がかかりますが、それをどちらが負担するのかは話し合って決めれば良いでしょう。

しかし、その申請手続き自体は原則として売主がしなければならないほか、決済日(買主への引き渡し日)までに証明書の交付を受けなければなりません。

詳しい手続き方法などについては、売却を依頼した不動産業者にお尋ねください。

また、耐震診断の結果によっては耐震補強工事が必要になる場合もありますが、このときの工事費用を売主が負担するのか、あるいは売買金額で調整するのか、判断が難しいところです。

ちなみに、2014年度の税制改正により、耐震基準を満たしていない築20年超の木造住宅でも購入後に買主が耐震改修工事を実施すれば、住宅ローン控除の適用が可能となっています。

なお、築25年を超える中古マンションの場合も同様に、耐震基準適合証明書によって税制上の優遇などを受けることもできますが、そのためにはマンションの建物全体での耐震診断などが必要となります。売主が一人で対応することは困難ですから、管理組合などにご相談ください。


耐震診断やアスベスト調査を求められた場合

上記の耐震基準適合証明書を必要としない場合でも買主から耐震診断を求められたり、アスベストの使用に関する調査を求められたりすることがあります。

それぞれ相応の費用がかかる問題であり、売主の義務というわけではありませんから、実際にそれに応じるのかどうかはケースバイケースでしょう。

その費用負担問題(売主が負担するのか、買主に一部負担してもらうように交渉をするのか)を含め、売却を依頼した不動産業者とよく話し合って決めてください。

アスベストについては、その使用が原則として禁止されたのは2004年(平成16年)であり、それ以前の住宅ではどの物件でもどこかにアスベストを含む建材が使用されている可能性が高いため、それを理由として買主が購入を断ってくることはあまり考えられません。

耐震診断については、その結果次第で買主が購入を取りやめたり、新たに売買代金の減額交渉をされたり、あるいは耐震補強工事を求められたりすることにもなりかねません。しかし、当初から「耐震診断はできません」と断れば、すぐに契約が破談となる可能性も高いでしょう。

耐震診断の結果が悪く、売却活動をやり直すことになったときには、「古家付き土地」として売るなど、販売戦略の見直しが必要になってくる場合もあります。


土地の測量を求められた場合

売買契約の条件が「実測売買」(土地の測量結果によって売買代金を精算する方法)の場合であれば、必然的に土地の測量を行なわなければなりません。

その一方で、売買代金の精算を伴わない「登記簿売買」の場合でありながら、土地の測量を実施したうえで隣地の立ち会い承諾印などを得る「確定測量図」の作成が求められるときもあります(過去に作成した測量図面がない場合など)。

測量を実施するためには、土地の面積に応じてかなりの費用を要しますから、その費用負担を含めて買主側とよく話し合ったうえでどうするのかを決めなければなりません。

測量自体に協力をすることは必要ですが、指し値がないなら売主が費用を負担する、指し値をするのなら買主で費用を負担してくれ、といった駆け引きも考えられるでしょう。

なお、公道や水路、公園など公有地との境界確定(官民査定)が必要な場合には、管轄の役所に申請をしてから実施までにかなりの期間を要しますから、早めに手配をすることが大切です。


先行入居や先行内装の希望があった場合

すでに空室となっている家を売る場合、または買主への引き渡し日よりもだいぶ前に引越しをして空室とする場合などにおいて、「残代金を支払う前に入居させて欲しい」(先行入居)、あるいは「引き渡しを受ける前に内装(リフォーム)工事をさせて欲しい」(先行内装)といった要望が出されることもあります。

売買契約を締結して手付金を受け取った後も、残代金の支払いを受けるまではあなたの家ですから、しばらくの間は「あなたの家に買主が住む(買主へ貸す)」「あなたの家で買主が工事をする」という関係になります。

買主側は「無理なお願い」だと認識しているケースも多いでしょうが、あなたにとって新たに費用負担が発生することはなく、またそれによって買主の住み替えがスムーズになるのですから、住宅ローン特約の適用期間が過ぎて契約が確定した後で他に特別な事情がなければ、なるべく応じてあげたいものです。

ただし、その「先行期間中」に万一の事態(火災や地震による損壊など)が起きた場合の責任の所在や、違約による契約解除があった場合における原状回復の費用負担、さらに細かい部分では電気、ガス、水道料金の負担などについて、売買契約書の特約条項のなかで明確に取り決めをしておくことが欠かせません。


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