売買契約が無事に終わっても、それで一安心というわけにはいきません。契約で定めた日に何ら問題なく買主へ家を引き渡すためには、売主として準備をしておくべきことも多いのです。

居住中の家であれば、買主への引き渡しは契約締結から2か月後、3か月後といったケースが少なくないものの、慣れない手続きなどで慌ただしく過ぎていくこともあるでしょう。

今回は買主との売買契約が終わってから家を引き渡すまでの流れや段取り、注意すべきポイントなどについてみていくことにします。


登記内容が異なる場合は変更などの登記申請をする

くつろぐ猫

売買契約が無事に終わってからも、のんびりと過ごす時間はあまりない

売却する不動産の登記記録に記載された内容が実際と異なる場合には、変更や更正などの登記が必要です。

実際の所有者が異なる場合(共有なのに単独名義になっている、またはその逆)、所有者の改名や結婚による改姓があった場合、あるいは相続登記が終わっていない場合などには、実際の権利者と登記名義人が一致するようにします。

本来であれば、これらの登記は家を売り出す前に終わらせておきたいものですが、終わっていなければ売買契約締結後の申請もやむを得ません。

ただし、登記を申請すると一定期間(1週間から10日ほど…法務局により異なります)は第三者が登記内容を確認できず、売買契約締結や決済ができなくなります。

登記の申請を司法書士へ依頼するとき、あるいは自ら申請しようとするときには、自分だけで判断をせず、事前に媒介をする不動産業者に相談をしてください。

なお、登記内容と異なるのが所有者の住所だけであれば、ほとんどの場合は買主への所有権移転登記申請と同時に変更登記の申請をしますので、事前の手続きは不要です。

ただし、登記された住所から現在の住所へ至るまでの間に何度も引越しをしているような場合には、そのつながりを証明するために、住民票の除票戸籍の附票などを取り寄せなければならないときもあります。

このような場合にはなるべく早めに必要書類を揃え、余裕のある日程で司法書士にチェックしてもらうようにしてください。


敷地の測量をする

契約条件が「実測売買」の場合には、必然的に敷地の測量が必要です。売買代金の精算を伴わない「登記簿売買」の場合でも、測量の実施が契約条件になっていればそれを行なわなければなりません。

測量を実施する土地家屋調査士や測量士の手配、境界の立ち会い確認をしてもらう隣人との調整などをしなければなりませんから、早めに準備へ取り掛かるようにしましょう。


敷地境界の確認をする

敷地の測量をしない場合でも、物件の現地において買主に対し敷地境界を明らかにすることが通例です。日時の設定は不動産業者に任せておけばよいほか、すでに空家になっている物件や土地の場合には、売主が立ち会わずに不動産業者が代理で境界指示を行なうこともあります。

なお、境界標識などによって境界の位置、ポイントが明らかであれば問題はないものの、境界が不明確なときには土地家屋調査士などによる現地調査のうえで、境界標の設置が必要になるケースもあります。このときの費用は売主の負担とされることが多いでしょう。


建物の解体工事をする

家が古い場合などで「更地渡し」が契約条件となっているときには建物の解体工事が必要ですから、居住中であれば早めに引越しをしなければなりません。

ただし、契約に「融資利用の特約」が付いている場合には、それが確定して白紙解除の可能性がなくなってから引越しや解体工事を行ないます。

「更地渡し」の場合には、単に建物を解体するだけではなく、引き渡し日までに廃材を撤去したうえで整地をすることが原則ですから、天候により作業が遅れるケースも考えて、ギリギリの日程とならないように余裕を持たせた段取りを考えなければなりません。


その他の「特約」への対応

敷地の測量や建物の解体以外にも、売買契約のときに特約で定められた内容については、当然ながら対応をしなければなりません。実施に期間がかかるもの、調査などを実施してからその報告書を受け取るまでに日数がかかるものなどについては、早めに準備をすることが必要です。

たいていの場合には、媒介をする不動産業者からの指示に従ってそれぞれの準備や段取りをすれば大丈夫ですが……。

ただし、その実施に売主負担の費用がかかるものや、契約したのとは別の買主だったら求められない可能性が高いものについては、買主の住宅ローンが確定してから手配をすることで構わないでしょう。


引越しの段取りをする

買主に対しては、完全に空家の状態にして引き渡すことが原則です。また、次ページで説明をするように引き渡しは午前中に行なわれることが通常ですから、引き渡し当日の引越しというのはNGです。

少なくとも数日前には引越しが完了するように、新居の手配や引越しの段取りを進めるようにしましょう。

売買契約締結のときに買主との間で交わした「付帯設備状況確認書」に従って、取り外す設備は取り外したうえで、残すべき設備を誤って取り外すことがないようにしなければなりません。

ちなみに、建物の新築時に水道加入金を支払ったことから「水道メーターは自分のものだ」という意識で、引越しのときに水道メーターを持ち去った売主の話を聞いたこともありますが、これはいけません。

水道だけでなく、電気、ガスなどの基本設備は、買主が(事業者と契約をすれば)すぐに使える状態にしておくことが原則です。

また、各種の設備の取扱説明書などは引越しの際の荷物に紛れてしまいがちですが、買主へ引き渡す設備の取扱説明書などはなるべく事前にまとめておくようにします。


住民票を異動する前に印鑑証明書を取得する

家を引き渡して買主への所有権移転登記を申請するときには印鑑証明書が必要です。このとき、印鑑証明書に記載された住所と登記されている住所が同じでなければなりません。これが異なる場合には変更の登記(費用は売主負担)が必要です。

売却した家の住所で登記がされていれば変更する必要はないわけですが、新居に引越しをして住民票を異動してから印鑑証明書を取得すると、新たに変更登記をしなければならないことになってしまいます。

印鑑証明書は3か月間有効ですから、新居へ引越しをする前に取得しておくとよいでしょう。


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