一戸建ての売却/一戸建ての売却の基礎知識

家の売却~少しでも有利に売る方法 その1

自分にとって少しでも有利になるような条件で売りたい。誰もがそう願いながら、何ら有効な対策を考えていない売主も少なくありません。家を有利に売るためにはいったいどうすればよいのか考えてみましょう。(2017年改訂版、初出:2010年9月)

執筆者:平野 雅之


家を売る相手が自分の子どもなどであれば話は別ですが、買主に対して「少しでも安く売ってあげたい」「相手の希望は何でも叶えてあげたい」などという人はまずいないでしょう。不動産の売主はほとんど例外なく「自分にとって少しでも有利な条件で売りたい」と願うはずです。

それでは自分の家を少しでも有利に売るためには、いったいどうすればよいのでしょうか。その主なポイントについて、2回に分けて少し詳しくみていくことにしましょう。


「有利に売る」とは?

「有利に売る」と聞けば、多くの人は「高く売る」ことを思い浮かべるでしょう。しかし、よほどのセールスポイントがなければ、一般中古住宅市場の相場よりも高く売ることは困難です。

それよりも、適正相場で「スムーズに買主を見つけること」、媒介業者による情報の囲い込みなど「不当な取り扱いを受けないこと」、購入希望者からの「値引き(指し値)交渉幅をなるべく少なく抑えること」などによって、結果的に高く売れることを目指すべきです。

また、これから本格化する人口減少時代においては空家問題も深刻になってきます。もちろんこれには地域差があるほか、人口の減少と世帯数の減少にはタイムラグもあるため、まだ当分の間は中古住宅の需要が旺盛なエリアも少なくありません。

その一方で、すでに需要の減退が始まり、中古住宅が(もちろん新築住宅も)売りづらくなっているエリアもあるはずです。

国の政策は中古住宅の流通促進にシフトしつつありますが、それでも需要自体が減ってくれば、ほぼ同じ時期にほぼ同じ条件の中古住宅が売りに出されたときに、一方がすぐに売れたのにも関わらず、もう一方はいつまでたっても売れない、という状況も生まれてくるでしょう。

ちょっとしたタイミングの差や条件の違いで、大幅に値引きをしなければ買い手がつかないこともあり得ます。

適正な価格で売りに出せば確実に買い手がつくというような時代ではありませんから、類似した多くの中古物件のなかから「いかに自分の家を選んでもらうか」という視点も、これから次第に重要なものになっていくと考えられます。


購入希望者の第一印象が重要

住宅見学のイラスト

住んだままの中古住宅売却でも、可能な範囲で「すっきり、広く、明るく、きれいに」見せることが大切

購入希望者はあなたの家だけを見るわけではありません。同じような条件の家をいくつも見て、そのなかから自分たちの条件に合った家、希望を叶えられそうな家を選ぶのです。

そのとき、まず初めに重要となるのが玄関に入ったときの第一印象です。家に入った途端に「薄暗い家だな」「湿っぽい感じ」などの印象を持たれれば、家全体のイメージにも影響しかねません。

そのためには換気に気を付けるのと同時に、購入希望者が見に来るときはあらかじめ照明をつけておき、なるべく明るく見せることも大切です。

また、≪購入希望者が見に来たときの対応≫ でも説明したように室内全体で行き届いた清掃や整理整頓を心掛けるとともに、不用品があれば大きなものほど優先して事前に片付けておきたいものです。必要に応じて、専門業者による室内クリーニングや不用品処分も検討しましょう。

購入希望者は、あなたの自慢の家具や調度品を見に来るのではなく、あなたの生活の様子を見に来るのでもありません。

あくまでも住まいとしての間取りや設備、家のつくりなどを見に来るのですから、できるかぎり「すっきり、広く、明るく、きれいに」見せるための方法を考えましょう。

窓をふさいでいる家具などがあれば、事前にこれを移動しておくことも必要です。家具を移動した後の清掃も念入りにやっておくようにします。


事前のリフォームや修繕はどうする?

住まいの設備(引き渡しの対象となるもの)に故障や不具合があれば、事前にできるかぎり修理や補修、場合によっては交換をしておくべきです。

修理費用がかかったぶん高く売れるという保証はありませんが、設備が故障したままで売ろうとすれば、その修理費用の見込み額以上の値引きを要求される可能性のほうが高いでしょう。

売却活動を始める前にリフォームをしたほうがよいのかどうかは、ケースバイケースで判断が難しいところです。

家を購入したらすぐに入居したい買主、あるいは自己資金が少ないためにリフォーム費用込みで住宅ローンを一本化したい買主などに対しては、リフォーム済み物件のほうが有利に売却できるでしょう。リフォーム費用分を売り出し価格に上乗せすることも十分に考えられます。

ところが逆に、「自分たちの好みに合わせた内装や設備でリフォームをしたいので、古家でもいいから少しでも安く買いたい」という買主に対しては、事前のリフォームがすべて無駄になってしまうこともあり得ます。

その物件の築年数や地域のニーズ、あるいは時期的なトレンドによって異なる部分もありますから、事前にリフォームをするべきかどうかは、売却を依頼した不動産業者とよく話し合って決めるようにしましょう。

ただし、それほど古い家ではないのに壁紙の汚れや剥れ、床の傷などが目立つような場合には、これらの張り替えを検討するべきです。「築浅物件なのに汚い」といった印象を持たれれば、購入希望者に気に入ってもらうことは期待できません。


新築時のパンフレットや販売図面を用意しておく

その家が新築分譲されたときのパンフレットや販売図面などがあれば、これらをあらかじめ整理して、いつでも相手に見せられるようにしておきます。とくに比較的近年のマンションなら、かなり分厚いパンフレットが手元にあるケースも多いでしょう。

あなたがその家を買った後で「パンフレットに惑わされた」と感じたかどうかは別として、そのパンフレットなどには家のセールスポイントがいくつも並んでいるはずですから、これは大いに活用するべきです。

ただし、パンフレットなどに書かれている内容と現況で異なる部分があれば、補足して説明をしなければなりません。

また、文書作りなどが苦手でなければ、居住者の目から見た地域情報や生活情報をまとめた「自作パンフレット」を作っておくのも一つの方法です。不動産業者などでは分からない生きた情報こそ、購入希望者が欲しがっているものでしょう。

「Aスーパーの特売日はBスーパーよりもオトク」「肉はCスーパーのほうが安いけど、品質はDスーパーのほうが上」「E医院は評判がいい」「カフェFのランチがおいしい」「美容院はGが上手」など、気のついたことを箇条書きにするだけでも構いません。

さらに、これらの情報を地図に落とし込めれば万全です。あまり難しく考えなくても大丈夫ですから、まずはやってみることが大切です。

あなたの家が「住みにくい家かも」「生活しづらい街かも」「何か不満点があるのでは」と疑念を抱かれるよりも、あなた自身の「想いがこもった家や街である」いう印象を持たれるほうが、ずっと売りやすくなるはずです。


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※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。

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