自分の家を少しでも有利に売るためには、いったいどうすればよいのでしょうか。≪その1≫ では「すっきり、広く、明るく、きれいに」見せることを中心に説明をしましたが、今回は中古住宅流通の制度に関連することなどについて考えてみましょう。


住宅の履歴書を作成する

ノート

新築時から現在までの経緯をまとめてみることで、自分の家について客観的な視点も得られる

2009年6月に長期優良住宅の制度がスタートし、新築一戸建て住宅ではその導入が急速に進んでいますが、そのなかに「住宅履歴書の作成および保存」が規定されています。

新築されたときの各種書類だけではなく、定期点検の結果や補修、修繕、交換などの記録を適切に保管し、中古住宅として売却するときにはこれを開示できるようにするものです。

しかし、この「住宅履歴書」の必要性は長期優良住宅にかぎったものではなく、もともとは中古住宅の流通促進策として民間より提唱されていたものです。

中古住宅の購入希望者からみたとき、いつどのようなメンテナンスをしたのかが明確な住宅と、すべてがあいまいな住宅があれば、前者を選びたくなるのは当然のことでしょう。

中古住宅の「履歴書」について、まだ一般にはあまり認知されていないかもしれませんが、これからは次第に普及が進んでいくだろうと考えられます。時代の流れを先取りして、あなたの家についても過去の記録をしっかりと整理しておいたほうが得策です。

ただし、たとえば築10年超の住宅などで過去に何らメンテナンスをしていないときに、わざわざ「何もやってません」と書面で明示する必要もないでしょうが……。


耐震診断は受けるべき?

宅地建物取引士は買主に対し、耐震診断の有無および(診断を受けた場合は)その内容を重要事項として説明しなければならないことになっています。ただし、これは耐震診断が義務付けられているのではなく、診断を受けていなければ「耐震診断-無」だけで済みます。

しかし、建物の耐震性能についての購入希望者の関心は高く、とくに1981年(昭和56年)の新耐震基準以前の建物(1981年5月31日以前に建築確認を受けたもの)の場合に、「耐震診断は受けていません」という説明だけでは買主になかなか納得してもらえないでしょう。

買主がその建物を取り壊して新築する予定であれば(あるいはそのような買主に限定して売却先を探すのであれば)、耐震診断を受けなくてもあまり問題にはなりませんが、そうでない場合にはなるべく耐震診断を受けるべきです。

耐震性能を疑われる建物が診断を受けていなければ、たとえ本当は耐震性能が十分でも、補強工事費用を想定した値引き交渉がされることになりかねません。

ところが、耐震診断自体は比較的安価に受けられたり自治体による助成があったりするものの、いざ耐震補強工事が必要となったときにはかなりの出費を強いられることになります。「売却のために補強工事をする」というのではその負担感も相当に大きなものでしょう。

本来であれば、まだ当分は自分たちが住み続ける(売却はまだ先のこと)という段階で耐震診断を受け、必要であれば「自分たちのために」補強工事をしておきたいものです。

もし、売却直前に耐震診断を受けてその結果が悪かったときには、補強工事をしたうえで売却をするか、補強工事をせずに売却価格を下げるか、あるいは補強工事をせずにその建物を取り壊す買主に限定して契約相手を探すかといった選択になるでしょう。

実際にどうするのがよいのかは、売却を依頼した不動産業者とよく話し合ってください。

なお、近年の建物で品確法による「住宅性能評価書」(耐震等級の評価があるもの)を新築時に交付されている場合などには、新たに耐震診断を受ける必要はありません。

また、築20年を超える木造住宅の買主は、原則として住宅ローン控除など税金の優遇措置を受けることができません。ところが、耐震診断を受けたうえで「耐震基準適合証明書」の交付を受ければ、これらが適用されるようになります。

この申請手続きは売主が行なうことになっており、築20年を超える木造住宅であらかじめこれを取得しておけば、買主に対するセールスポイントとして活用できる場合もあるでしょう。


アスベスト調査は受けるべき?

耐震診断と同様に、買主に対し「石綿使用調査結果の記録の有無」と(記録がある場合は)その内容を重要事項として説明しなければなりません。石綿(アスベスト)使用の調査が義務付けられているわけではなく、記録がなければ「無」だけで済むのも耐震診断の場合と同じです。

建物の耐震性能の問題に比べれば購入希望者の関心が低いことは否めませんが、アスベストの使用に関して問題のある建物であれば、買主だけでなく現に住んでいる売主世帯、さらに近隣への影響も深刻です。

「買主の安心感」という観点で考えれば、しっかりと調査を受けてアスベストの使用状況を明確にしておくべきでしょう。

身体に悪影響を及ぼすアスベストですが、調査によってアスベストを含む建材が使われていることが分かったとしても、あまり深刻に考える必要はありません。

これが問題になるのは、主に解体やリフォームをするときに建材を撤去したり切断したりして、アスベストの繊維が空中へ飛散する場合です。

通常の使用において「石綿が固定され空中に浮遊しない状態では健康被害を起こすことはない」(1997年:環境庁および厚生省)ものとされています。

ただし、建材の劣化(剥れや亀裂、表面塗装の剥離など)によってアスベストが暴露している場合は十分に注意しなければなりません。その建物を売る、売らないといった話以前に早急な対策が必要です。とくに屋根材の状態には気をつけるべきでしょう。

アスベストを含む建材の用途は広く、一般の木造住宅でも屋根用化粧スレート(石綿スレート、コロニアル、カラーベスト)、外壁の窯業系サイディング、室内の天井や壁の石膏ボード(バルブセメント板、セメントボード、ロックウール吸音天井板)、床のフロアシート(長尺塩ビシート、ビニル系床材)、キッチンの耐火壁下地(珪酸カルシウム板)などで用いられています。

昭和30年代以降にこれらが多く使われるようになったのですが、使用が原則として禁止されたのは2004年(平成16年)で、つい最近のことです。

つまり、それ以前の住宅では何らかの形でアスベスト成形板などが使われているケースがほとんどで、アスベストを含む建材が使われているからといって、その住宅が不利に扱われる可能性は低いでしょう。

問題が大きいのは古いマンションや、鉄骨造・鉄筋コンクリート造の住宅で、吹付けアスベスト(1975年に原則禁止)が使われている場合です。

それ以降も、アスベスト含有吹付けロックウール(1980年まで)、湿式工法によるアスベスト含有吹付けロックウール(1988年まで)、その他の石綿含有吹付け材(1988年まで)など、現在では問題とされている施工がされている場合があります。

吹付けアスベストなどの使用が疑われる住宅を売却するときには、事前にしっかりと調査を受けて、必要があればその除去などの対策をしておくことが欠かせません。問題があるのに対策しないままで売却するのであれば、その費用に相当する値引きを考えることも必要でしょう。


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