Android機の鍵になるマーケティング戦略
顧客が求めているのは端末ではなく、「端末で何ができるか?」というベネフィット
まず、プロダクト戦略から見ていくと、優位なポイントとしてOS自体はオープンソースでインターネットで確固たる地位を築いているグーグルが主体となって開発している点が挙げられます。
端末メーカーはこの最新OSを無償で利用でき、しかも自社仕様にアレンジすることが可能です。そして実際に、このAndroidの機能面とコスト面の優位さから、多くのメーカーがAndroidを採用してバラエティ豊かな機種が作られ市場に投入されています。これは、利用する側にとっては選択のバリエーションが多くなるというメリットにもなります。
ただ、注意しなければいけないのは、顧客は決して端末そのものを求めているわけではないということです。顧客は、その端末を活用して何ができるかという『ベネフィット』を求めているのです。そこで、魅力ある端末と共に、魅力あるソフトを提供することもビジネスを成功させる上で欠かすことができません。
ソフトの提供という意味ではiPadにApp StoreがあるようにAndroid機にもAndroid Marketというソフトの提供システムがあります。利用者はこのオンライン上のストアを通してソフトを購入することになります。
このソフト供給システムに登録されているアプリケーションを比較すると2010年9月末時点でApp Storeの285,000に対して、Android Marketは100,000とおよそ3分の1しかありません。しかも、App Storeがアップルの厳しい審査をクリアした後にようやくソフトの提供ができる仕組みなのに対して、Android Marketの審査基準は甘く、クオリティの低いアプリケーションでも登録が可能な仕組みが問題となる場合があると指摘する専門家もいます。
プログラムのソースコードが公開されているAndoridは、メーカー各社がカスタマイズして搭載することも可能なため、アプリケーションに互換性がないという問題も発生しています。Android機が普及していくためには、これらの製品面での問題をクリアしていくことが必要となるでしょう。
続いて、価格戦略においてはAndroidというOS自体は無償で提供されるために、コスト面で圧倒的に有利に立てます。このコスト優位性をフルに活用して、普及価格帯で端末を供給できれば、一気に普及に加速がつくことも考えられます。
そして最後に、流通戦略面ではアップルが流通チャネルを絞り込むのとは反対に、オープンな流通戦略を展開すれば数多くの企業から特色のあるバラエティ豊かな機種が提供できるだけに、販売機会を増やしてiPadの牙城を崩すことも不可能な話ではないでしょう。
果たしてiPad vs. Android戦争の行方は?
アップルがMacintoshやiPhoneなど自社で提供する他の魅力的なプロダクトとの相乗効果を発揮して、Android陣営をDOA(Dead on Arrival)にしてしまうのか?それともAndroid連合軍が数の論理でバラエティある商品やサービスを展開してiPadのブルーオーシャンに切り込んでいくのか?いずれにしろ、『タブレット市場』というiPadが切り開いたブルーオーシャンが、今後赤く染まって激しい競争が繰り広げられるレッドオーシャンに変貌を遂げることは間違いありません。
果たして激しい競争の末に勝者として勝ち名乗りを上げるのはiPadを擁するアップルか?それともグーグルと端末メーカーが強力タッグを組むAndroid陣営か?
勝利の鍵を握る両陣営のマーケティング戦略に注目が集まります。